【第二章】第四十七部分
(徳田さんが泣いてる。これは何か大きな壁にぶっかっているらしい。今はそっとしておくのが正しい選択だな。でも、どうしてもなんとかしてあげたいという衝動に駆られるのはどうしてだろう。)
吉宗の泣き顔を見て、いたたまれなくなり、御台は早退してしまった。
吉宗は生徒会長室で綱吉から話を聞いていた。
「今日の布切れ王子、なんだか様子が変だったけど、おたすけえは何か知ってる?」
「さあ、全然、まったく微塵も知らないよ~♪」
笑顔で答えるH前はライバルが変になってるのは嬉しい。
吉宗は隣のスペースにいる綱吉をチラ見する。
綱吉は一度目が合うが、首の筋肉がイヤそうに動いてぷいと無視する。
「ねえ、おたすけえ。ネコ将軍のあの感じ、きっと腹の下に逸物を隠してるわ。あっ、逸物と言ってもエロいモノじゃないからねっ?」
「上様、エロ自爆しないでよ~。」
「よし、アタシの超絶理論的な直感を確かめてくるわ。」
「上様、そのフレーズは矛盾してるよ~。」
マスクを装着した吉宗は席を離れて、足音を立てぬよう、忍者のように綱吉に近づいていく。
綱吉のすぐそばに到達すると、マスクしたままでこれ見よがしに、ゴホンとやる。あからさまに怪しい。
あまりの露骨さに綱吉は怪訝な顔で反応した。
「マスクがあるのにゴホンはおかしいにゃ。」
「あらゴメンナサイ。ポロリ。」
エサを撒いた吉宗。ネコの鼻は人間より優れている。
「クンクン。こ、これは御台君の手拭いにゃ!」
「そうよ。アタシと布切れ王子の出逢いの印なのよ。」
「これ、実にいい香りにゃ、欲しいにゃ!」
「あげないけど、貸してあげるわ。代わりに布切れ王子について、教えて欲しいことがあるの。」
綱吉は御台の妹・市香のことを諦念を帯びた表情で語り始めた。
「御台君は、妹の特進クラスへの進学させる代わりに、吉宗を、いや徳田吉音を退学させることに合意したにゃ。御台君は鬼畜にゃ。だから最近、吉宗によそよそしくなってるハズにゃ。」
必ずしもウソとは言い切れない表現である。
「そ、そんな・・・。」
吉宗は開かれてたアジの目をして、しばし絶句した。




