【第二章】第四十四部分
校内では、勝利のシュプレヒコールが止まなかった。それから数週間経過した頃。
「そのネイルヤバ~い。」「エクステ、激カワ~。」
茶色顔、白いルージュ、長い著しく睫毛の長い女子生徒が闊歩するのが、目立ってきた。刀狩り廃止は『ヤマンバ大発生』を招いたのである。
「おい、あのエロ本貸せよ。」「代わりにその薄い本を貸してくれ。」
学内にエロ本、薄い本が多数持ち込みされるようになった。吉宗が転入する前には無かった現象である。さらにエロ本を巡る盗難やレアな薄い本の高額なレンタル、ニセモノの
エロ本の氾濫など、犯罪行為が発生した。一度規制をかけた結果、そのタガが緩んだ時、堅固なダムが一気に崩壊したのである。加えて、ネコファーストがなくなったことで、動物虐待があちこちで見られるようになった。
このように再びパニックになった学校。メガホンを持ってクレームの声を上げる生徒が多くなってきた。
「こんなことになったのは、今の将軍が悪いのよ!」「将軍が倹約令を出したから、その反動が起こってるのよ!」
将軍の失政を言い出す生徒たち。吉宗の政策は実質的に撤回され、元の状態に戻っただけなのだが、混乱の原因を吉宗にあると騒いでいるのである。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「将軍吉宗はやめろ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
学校のあちこちで、将軍罷免を要求する運動が勃発した。
御簾の間で、宗春は階下の生徒たちを蔑むように、ほくそ笑んでいた。
「計算通りですわ。群集は昭和のおもちゃですわ。電気も無しに、右に左にわずかに押すだけで、どこまでも走ってくれますわ。」
「将軍を引きずり降ろすことができるのは副将軍の御台様だけよ!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「御台、御台、御台!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「ボクは副将軍として、将軍綱吉を手伝っているだけだし。吉宗将軍はすでに過度な倹約令を取り下げしてるんだから、もはや一揆を続ける必要はないし。」
御台に生徒たちの期待を受け入れる意思は無かった。しかし、御台に対する大衆生徒の期待は日に日に高まっていった。
「「「「「「「「「「「「御台様、将軍を辞任させてくれるよね?ねっ?」」」」」」」」」」」
教室でも御台の周りには生徒たちが集まり、あからさまに、吉宗に辞任を迫るよう、要求してくる。
「ボクはいったいどうしたらいいのだろう。」




