【第二章】第四十部分
「これはチャンスだわ!」
吉宗はこそっと、生徒会長室を退出し、制服姿に戻って教室へ足を向けた。
【第三章】
生徒会棟の一つ手前の棟。他の校舎の外壁は城らしく白一色だが、この校舎だけは黄金に輝いている。この校舎に入る生徒たちの制服も同色である。五番目の生徒会棟と三番目の三年生棟とも渡り廊下で繋がってはいるので、幕附高校舎であることは間違いない。
この校舎こそ、特進クラス棟である。特進クラスは一年から三年まであるが、ここは吉宗たち生徒会の治外法権になっている。
この棟の一番上の階には特別室がある。
生徒会長室とほぼ同等の広さで、打ち合わせ台や、応接セットがある。しかし、奥には座敷があり、御簾で中がよく見えないようになっている。
そこにひとりの緑髪ツインテールの女子が座っているのが確認できる。
女子は、ツインテを四つ葉のクローバー型のリボンで留めて、さらに頭の上にも四つ葉クローバー型リボンを乗せている。眉毛は細く、目を閉じたままではあるが、かなりの美貌であることを隠すことはできないし、隠すつもりもなさげなオーラを振り撒いている。
四つ葉クローバー女子の名前は『尾張宗春』である。
宗春は御簾に対しては背中を向けており、正面には文机のような台があり、そこには布地の台座があり、水晶が置かれている。
御簾の外には綱吉がヘッドホンをつけて、畳の上に座っている。
『死に体の綱吉さんを還俗させて、ネコアレルギー将軍にバトルさせて、勝利し失脚させるという作戦でしたが、ものの見事に失敗しましたわ。まったく躾のなってないネコですわ。』
「ゴメンナサイにゃ。」
『こうなったら、次の手を打ちます。渡心御台さんを担いで盛大な祭典を開催して差し上げますわ。ホーホホホッ。』
「ツナはこれからどうすればいいにゃ?」
『勝負には負けましたが、思わぬ形で、将軍に重祚できたのはラッキーでした。しかも生徒会室の使用を許されたのは拾い物でしたわ。そのまま、四つ葉クローバーの尾張徳川家のイヌ、いやネコとして仕えなさい。要は尾張徳川家のスパイですわ。ホーホホホッ。』
綱吉はそのまま、生徒会棟へ向かった。
「悔しいにゃ。どうして徳川宗家のツナが、分家の尾張徳川ごときに使われるにゃ。そもそもツナを将軍の座から引きずりおろしたのに、還俗させるとか、あり得ないにゃ。このままでは済ませないにゃ。」
『などと綱吉さんは考えてるに違いありませんわ。それを逆手に取ってやるのですわ。ホーホホホッ。』




