【第二章】第三十九部分
「次は合わせて、背中ギーにゃ!」
「なにそれ?背中を撫でてるの?」
「十二単の上からでは効果ないにゃ。ならば、魔道具を使うにゃ!キラーン☆」
「魔法ですって?そんな無用の長物を持ってるの?まさにネコに拒んだわ。」
「拒まないでにゃ。ツナの魔道具はこれにゃ!」
「眩しいわ、ほんのちょっとだけ。」
綱吉は凶悪な光り物、すなわちカッターを取り出した。
「やめなさいよ!危ないじゃないの。アタシがほしい光り物は、宝石貴金属の類いだけなのよ。将軍に貢ぐならそれぐらいの配慮をしなさい。」
「節約を標榜しながら、賄賂要求するとは、欲望の権化にゃ。ますますカッターの餌食にしてくれるにゃ!」
カッターを振り上げた綱吉。刃の先端部分が妙に鋭角に見える。
「おたすけえ、この捨てネコを止めてよ。」
「着物を斬られたら、上様の『ユリ吹雪イレズミ』を見れるよ~。」
「イレズミなんかあるわけないでしょ!」
「上様にイレズミがないなら、壁に描いてやる~。」
H前はマジックで壁に落書きを始めた。画力はハイレベルで、デッサン力は抜群である。ユリ吹雪と言うだけあって、二人の女子がキスをはるかに超越した行為をしているに見える。二人とは無論、吉宗とH前である。
「ちょ、ちょっと、いったい何なのよ、この放送禁止な描写はっ!」
「上様、これは芸術、いや美術の課題だよ~。」
「う、美しいにゃ。エロスの境地にゃ。」
「何、感銘してるのよ。こんなの、タダの薄い本イラストじゃない!」
「実にウマいにゃ。だったら、こんな絵を描いて欲しいにゃ。ヒソヒソ。」
綱吉は妖しげな表情でH前に何やら耳打ちをした。
H前はニンマリして、手慣れた手付きで、二人の男女を描いた。無論、薄い本でしか見られないような態勢である。あまり説明したくはないが、綱吉と御台の全身でひらがなのくの字を構成していた。
「これは何にゃ!御台君はこ、こんな態勢はしないにゃ、今はまだ。」
「ネコ将軍が描けって言ったから描いたまでだよ~。」
「ち、違うにゃ!御台君は清廉潔白にゃ!」
「いやいや、年頃の男子はこれぐらいはフツーだよ~。」
H前と綱吉は取っ組み合いのケンカとなった。




