【第二章】第三十七部分
ネコ将軍室には、個人机が二組に、4人掛け打ち合わせ台が設置されている。
今は打ち合わせ台に制服姿の4人が座っている。H前と御台が隣合わせで、吉音としての吉宗と綱世としての綱吉が並んでいる。
(アタシが布切れ王子の隣に座るんだから。)
(御台君を変な呼び方している新将軍はコワそうだにゃ。で、でも御台君はツナの副将軍だにゃ。副将軍が将軍の横に来るのがいちばん座りがいいにゃ。)
何としても机をゲットして、御台の隣というプラチナチケットを手にしようとするふたり。今は御台がいるため、脳波を使って激しくバトルをしている状態。
さらにもうひとりの居住者であるH前にも、吉宗と打ち合わせ台で『相合い机』したいとの野望がある。
『プルルル~。』
スマホが御台を呼び出した。画面の発信者を見て、御台の顔色が変わった。
「ちょっと、電話に出てくるから。」
御台はひとこと言い残して、疾風のごとく退出した。あまりにも唐突で吉宗は呼び止める言葉を発する余裕すらなかった。
「布切れ王子、慌ててどうしたのかしら。」
その疑問文で吉宗に一瞬のスキができたのを綱吉は見逃さなかった。
「チャンスにゃ!変身!」
綱吉の体が光って、ぐにゃりと曲がったように見えた。
「にゃにゃあ~!ネコ将軍復活にゃ!さあイジメまくるにゃ、チョー気持ちよくなるにゃ!ギヒヒにゃ~!」
漆黒和服姿の綱吉がドSを全面に出していた。色こそ違え、こちらも十二単だった。単一色のため、一枚の着物に見える。
ネコミミと尻尾アクセ、さらには八本のヒゲ、肉球も付けている。
「クロネコ大和だわ。縁起悪いわよ。まさに悪の権化だわ!でもアタシも負けてられないわ。変身!」
吉宗はいつもの十二単になった。颯爽とした顔と目つきである。
「よし、これで机をゲットするわよ!椅子盗りゲームの幕開けよ!盗ったわ!」
吉宗は全力で机に走り、そこに正座した。別に正座は不要であるが、制覇したという勝利気分を噛みしめるためである。
「さあ、この机を奪いに来なさいよ。どんな武器でかかってくるのか、楽しみだわ。」
それから一分経過した。隣の机は空いたままである。
吉宗の机の前で、土下座している人物がいる。H前がモミモミしたいとお願いしてるわけではない。綱吉が頭を下げているのである。
「どうか、おそばに置いてくださいにゃ。ネコ将軍として、なんでもやるにゃ。」
御台が帰ってくる前に、平和裡に打ち合わせ台に4人座りで決定した。無論、吉宗の隣を空席としていることで、吉宗ファーストになっている。




