【第一章】第四部分
どれぐらい時間が経過したのかよくわからない。ほんの一瞬ではないような気がするが、そうでもないかもしれないという奇妙な感覚にとらわれていた吉宗。
吉宗が目覚めた場所は、彼女が知らない世界であった。
「あれ?ここはどこ?真っ暗だけど、床の間の下とはスケールが全然違うわ。ものすごく広い場所で、カラダが浮いてる感じだわ。」
そこに、スーッと人影が現れた。腰のやや曲がったシルエットは老人であるとすぐにわかる。危険を周囲に察知させる、数少ない老人メリットのひとつである。
「あなた、いったい誰?」
老人は白髪で、頭巾をかぶっており、口髭が見える程度で、顔はわからない。
「ワシは、徳川家康じゃ。」
「家康?もしかしたら、アタシのひいおじいちゃんってこと?」
「そうじゃ。時間がない。手身近に話すぞ。」
「そなた、徳川吉宗には将軍の器がある。しかしこの世界では力が発揮できない。別の世界で思う存分暴れるがよい。」
「えっ?何、いったい、何のこと。」
「おっと、大事なことを言い忘れておった。その世界にワシのお宝がある。それを見つけるように。それがないと・・。」
家康の言葉は途切れた。その姿も消えてしまった。
「えっ?ひいおじいちゃん、よくわからないわ。お宝?いったい、何のことかわからないわ。第一、アタシはどうなるのよ~!?」
吉宗の意識とカラダは、ほんのひと時瞬いて、暗い空間から忽然と消え去った