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【第二章】第三十四部分

綱吉はネコ将軍であることをずっと隠しており、クラスでは『徳本綱世』という名前で一般生徒に混じっていたが、ネコ将軍の転校と同時に休学扱いとなっていた。そしてこのたび復学したワケであるが、誰も関心を持たなかった。

クラスメイトの認識はおおむねこんな感じだった。

「あら、徳本綱世さん、いつの間に復学したのかしら。最近戻ってきたみたいだけど、全然わからなかったわ。誰とも会話しないしね。元からいてもいなくても関係ないっていうか、気づかない存在だったからね。そこにいるというのを感じさせないというより感知することができないのよね。」 

つまり日常の綱世はステルスボッチだったのである。だから綱吉はネコ将軍としての正体を隠す必要性は皆無であった。


教室に戻った吉宗は、マスクを着用して、クラスメイト・徳川綱世のところにトコトコと歩いていった。視線はあえて合わせない。

「ゴホン、ゴホン、あ~ツラいわ。アタシ、ヒドいネコアレルギーなのよね。なぜか急に教室で発症するようになったのよね。」

「・・・ご、ご、ごめんなさいにゃ。」

消え入るような声をやっとのことで絞り出した綱吉。

「はあ?よく聞こえないんだけど。」

吉宗は口の端を吊り上げて、自分の耳を極端に綱吉に接近させている。ほとんどヤクザの因縁付け状態である。

綱吉は無論吉宗の正体を知っているが、互いに秘密をバラさないことは将軍としてのキマリである。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいにゃ。ううう。」

机に突っ伏したまま、泣きながらひたすら謝る綱吉。わざとらしさは微塵も感じられない。

「アタシさあ、これから中間テストがあるし、転校してきたばかりなのに、勉強が遅れて困るってるのよね。ネコアレルギーだけじゃなくて、ネコを見ると、コワくて仕方ないのよね。例えばこんなヤツ。」

吉宗はスマホ動画を綱吉の額に強引に押し付けた。額に四角く赤い跡がついて消えた。

『化け猫、血みどろなリベンジ怨み節』というタイトルの古い映画だった。人間にイジメられて死んだ黒い野良猫の物語である。

「うう、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいにゃ。」

綱吉は謝るが、綱吉が出た映画でもなく、何の非もないのであるが、やたら泣きじゃくっている。

「あんたねえ、泣いたって、何も出ないわよ。」

吉宗は攻撃の手を緩めない。自然に自分の体を揺すっているところに本気度が表れている。


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