【第二章】第二十九部分
『グルル~!』
「こ、これはナポレオンにゃ!?見たところ、吉宗に似てるにゃ。いや変身したみたいにゃ!」
吉宗の変わりように驚いて口を開けたままのネコ将軍。ネコジャラシ攻撃はすでに解かれていた。
「く、くそ~。ツナも将軍だった者にゃ。壁があれば全力で登るにゃ。そのためにこの爪があるにゃ。ネコジャンプニャー!」
ネコ将軍はかがむようにして、反動をつけて一気に飛び上がった。しかし、白馬に乗った吉宗には届かず、あえなく落下した。
「いてて。おかしいにゃ。これぐらいの高さなら問題なくジャンプできるはずにゃのに。もう一度トライするにゃ!」
まったく同じ結果で落下によるキズが増えただけだった。
「これって、まさか結界を張ってるにゃ?」
めげずにネコジャンプして飛びかかるが、弾き飛ばされて爪で壁にひっかきキズをつけただけ。
「これでもダメにゃ。ならば、結界に直接攻撃するにゃ!」
ネコ将軍は白馬の下から腕を伸ばして、吉宗の周りの、何もないところをひたすらひっかいた。しかし全然手応えがなかった。
「なんか変だにゃ。肉球の感触がおかしいにゃ。」
ネコ将軍の爪がなくなっていた。
「あれ?体の力が抜けていくにゃ。それに妙に涼しいにゃ。」
ネコ将軍の体からは、爪どころか、毛のないネコのスフィンクスのようになっていた。
『グウウ。』
白馬の吉宗は唸るだけであったが、だんだんと体がブルブルと震えてきた。
『グオオオ~!』
目を剥いて、両腕を上げて、吠え出した吉宗。その勢いで馬から降りて、ネコ将軍を睨みつけている。
「な、なんだにゃ。やるというのかにゃ。」
『ガアアア!』
吉宗はいきなりネコ将軍に飛びかかって、腕を大きく振り上げて殴り掛かった。
『ドカン!』
強烈な破壊音が辺りの空気を激しく揺らした。しかしネコ将軍は無事だった。毛がなかったため、つるりと滑ってかろうじて助かったのである。
『ガタガタガタ。』
壁の一部が崩れ落ちる音がした。夥しい量の瓦礫が転がっていた。
吉宗の拳は校舎の壁を粉々にしていたのである。
「や、ヤバいにゃ。こ、殺されるにゃ。や、やめてにゃ~!」
吉宗は振り返って、背中の三つ葉のクローバーをネコ将軍に見せてから何か呟いた。
『セイヴァイ!』という風に聞こえた。吉宗は正拳のポーズで、怯えるネコ将軍を突いた。
「うぎゃあ~!」




