【第二章】第二十八部分
「すでに言葉で鬱になってるにゃ。だったら少し抉るにゃ。オスの名前は、と」
「きゃああ、止めて~!」
「その甲高く湿り切った空気を切り裂く音が心地よいにゃ。オスの名前は、ところ」
「やめて~!!」
「所沢にゃ。」
「えっ?・・・、知らないの?よ、良かったわ。」
「なんて、ウソだにゃ。名字は渡心だにゃ。そんな名前のヒトはめったにいないにゃ。」
「え~っ、ウソツキは泥田坊の始まりよ!」
「ウソツキは妖怪を生み出すにゃ?それは恐ろしいにゃ。って、違うにゃ!その名前は渡心み、み、みだらなことは言えないにゃ。じゃなくて、思い出したにゃ。あの時、あんなことがあったから、将軍の座を譲位せざるを得なくなったにゃ。超ムカついてきたにゃ。もう言葉じゃなく、カラダで制裁を加えるにゃ、魔法ネコマタタビドロップにゃ!」
ネコ将軍は毛に覆われた腕をグルグル回すと、それは大きなネコジャラシになった。
「さっきのお返しにゃ。」
ネコジャラシを振り回すと、毛があちこちに飛散して、周囲は真っ暗になってきた。
「ちょっと、魔法を使うなんて聞いてないわよ。何にも見えないじゃない!あははは~。」
視界を失った吉宗は、ネコジャラシによるくすぐりで笑い出した。
「笑うのは今のうちにゃ。次の方がお楽しみにゃ。」
「うっ、く、く、苦と楽は共にしない、片方だけだわ~。」
奇妙かつ意味深な発言をする吉宗。
ネコジャラシは蠕動運動をしながら吉宗の全身を辿っていく。
「もうエクスタシーゾーンに足を踏み入れたにゃ。」
「それって、とってもHな領域じゃないの?あはん。」
「自分で劣情を公開してるにゃ。じゅるり。」
ネコ将軍の口元から唾液が滴り落ちる。一方、吉宗の方も顔をしかめて、苦しんでいる、もしくは楽しんでいる。どちらなのか、外見上はわからない。
「いやあ~!」
「別に女子に興味はないけど、いたぶるにはこれがいちばんにゃ。」
「おたすけえ、助けて~!って、倒れたままだし。このまま凌辱され続けるのかしら~!」
H前の体はチラッと動いたがそのまま停止した。何かを期待している微風が流れている。
「よ~し。無抵抗なら、もっとやってやるにゃ。こうして胸を少し開いて、ぎいいい。」
「痛~い!」
ネコ将軍は研ぎ澄まされた爪で、吉宗の首の下に真っ直ぐな赤い線を引いた。
「やめて~!」
「いい音色だにゃ。もっと違う音を出してオーケストラにするにゃ。現時点では痛みと快楽に支配されているにゃ。苦楽を共にするとはこれがホントにゃ。」
「気持ちいいと苦しいが同時に来るなんて、最悪だわ。ぐぐぐ!」
吉宗は体を激しく捩り、一瞬姿が点滅したかのように見えた。
すると、再び白馬に乗った赤い二角帽子に白いシャツ、ミニスカ女子が現れた。




