【第二章】第二十四部分
綱吉は無類のネコ好きで、いつもネコミミカチューシャと尻尾を付けていた。ある時、複数生徒がネコを猫じゃらしの付いた釣り竿を使って遊んでいた。
たまたまそれを目の当たりにした綱吉は、生徒たちがネコをイジメていると誤解し、激怒して、その生徒たちを留置城という地下室に送り込んで、大いに折檻した。鞭打ちやろうそくでヤケドさせる、水責めを行うなど、刑罰は過酷を極めた。綱吉は折檻で、ドSに覚醒したのであった。
綱吉は、生徒たちにドS折檻をやりたい一心で、学校全体でネコを始めとした動物を愛護するよう、『生類ファーストの令』を発布した。これはあくまで名目で、動物の頭を撫でただけでも即違法になるというとんでもない校則だった。さらに女子生徒たちにはネコミミと尻尾着用を強制した。
生徒にはネコを『おネコ様』と呼ばせた。ネコが通ればすぐによけて土下座。トイレはネコが優先。結果、ネコがトイレを占拠してしまい、生徒たちはもよおすと、ペットボトルを抱えて叢にかけることになり、カメラ小僧の餌食となった。それは生徒がトイレでない場所で不法に用足しをすることから、盗撮とは見做されず、あられもない姿をSNS投稿された女子は泣き寝入りするしかなかった。ネコ将軍は泣く女子を見ては嗜虐心を満足させるという、悪のスパイラルであった。
さらにこんなお触れが発布された。
『おネコ様たちが恋の季節に入ったにゃ。恋に敗れたオスネコ様を見かけた女子生徒は一緒に理科準備室に入って、お慰めするようににゃ。』
このため、本来ひと部屋の理科準備室は校舎のあちこちに設けられた。
実際どんな行為が行われたのかは、密室だけに定かではないが、体毛がなく肌色の子猫が見つかったとのウワサが、まことしやかに流れた。
「あんな時代に戻りたくないよ~!ブルブル。」
H前はしゃがみこんで、耳を塞ぎ、見るからに震えている。
『ニャー!』
「その鳴き声、まさにけものだわ。な、何よ、やる気?」
『ニャー、シャー!』
「前の将軍、いやネコ将軍、動物的に唸ってるよ~。きっと、トラップに騙されたことに怒ってるんだよ~。」
「シャー!ネコパンチ!」
ネコ将軍は飛び上がって、吉宗のそばをかすって地面に降り立った。たらりと一筋の赤い糸が吉宗の頬を伝わった。




