【第二章】第十五部分
「ちょっと待ってくれ。ボクは戦いに来たんじゃない、話をしに来ただけだ。」
御台が一言発した瞬間、御台はお腹を押さえた。
「ぐっ!攻撃をよけたはずなのに、左脇腹にダメージがあるぞ。」
『ガルル~!』
白馬が横に立っていた。牙を剥いていて、口からワイシャツの切れ端が垂れている。
「ボクは馬にやられたのか。」
『グルル~。』
将軍ナポレオンも狼のように、唸り声を上げている。
ひとりと一頭は、飛んだり跳ねたりして、御台の周りを動いている。
「これじゃ、身動きが取れない。ボクは戦いに来たんじゃない、話し合いに来たんだ!」
御台は部屋中に響き渡るような声を出したが、将軍ナポレオンたちに届いている様子は全くない。
間合いを徐々に詰められて、将軍ナポレオンたちの攻撃が御台の体を掠めるようになってきた。
「ぐっ。完全にかわすのは難しい。」
御台のワイシャツ、ズボンが少しずつ破れて、痛みが見えるように血が滲んでいる。
『ガルル~!』「グルル~!」
まさに野獣として人間を襲う将軍ナポレオンたち。
「これぞ、まさに白馬に乗った暴れん坊将軍だな。手が付けられない。演説会の将軍はもっとかわいかったのに!」
『ピクッツ。』「ピクッ。」
将軍ナポレオンたちの時間が止まった。しかし目だけは複雑な感情を湛えて動いている。
『シュウウウ。』
白い煙が将軍ナポレオンたちを覆って、蛹のように同化した。
「おや、どうしたんだ。いったい何が起こったんだ?」
「あれ?アタシはいったい。」
華麗な十二単を着た吉宗がそこにいた。口元を扇子で隠しているが、地面に立っている。白馬の姿はどこにも見当たらなかった。
「う、上様~!戻ってきたんだ~。よかった~!モミモミ?十二単の上からだと揉みにくいよ~。ちゃっちゃと脱いでよ~。」
「できるわけないでしょっ!」
「その姿、君が新将軍、いや生徒会長だな。この前に見た人物と一緒だ。」
(あっ、布切れ王子だ。ついにここまでアタシのためにやってきてくれたんだ。う、うれしい。で、でもここでのアタシは将軍吉宗。しっかり将軍らしくやらないと。)
緩んだ口元を扇子でしっかりガードして、目に力を入れた吉宗。




