【第二章】第十四部分
「これぞ、疾風の『大岡シバキ』だよ~。名奉行のシバキには誰も文句は言えないよ~。ちょっと、簡単にやり過ぎちゃったかなあ~。」
ありきたりの舞台演出のように、ひらりと白い学ランの上が落ちていた。
「ふう。ちょっと、危なかったね。そのシバキはスゴいね。さすがは名奉行だ。いや、生徒会書記というべきか。」
ワイシャツ姿になった御台。営業で常に好成績を上げているサラリーマンのように余裕綽々な表情である。
「学ランの皮、一枚でかわしたね~。変わり身の術ってとこだね~。」
「その通り。でも変わり身が必要なのは、君の方かも。」
「何をバカな~。あれ?あたしの前に紅白の布切れが転がってるよ~。今から年末恒例行事でも始まるのかな。。。んなわけない!そ、それってまさか~。」
「うん。君のスカートを裁断させてもらったよ。これぞ、大岡裁き。」
「きゃあ~!まだ上様に見せたことのない新品ボニーパンツがああ~!」
ボニーキャラパンツを両手で隠しながら、生徒会棟へ駆け込んだH前。周囲に男子がいなかったのが幸いである。
「よし、これで将軍様にお目通りだな。」
御台は、生徒会棟の2階の面談会場に乗り込んでいく。しっかりと前と正義を見つめいているようである。
2階、ここは教室風の洋間である。生徒を迎えるだけの部屋で、調度品はほとんどなく、実に殺風景なものである。
階段でそこに上がった御台は、観音開きの両ドアをゆっくりとあけた。
『グルルル。』
そこにいて唸っているのは、堂々たる白馬に跨がる女子。白いシャツに肩パッドと大きな金ボタン付きのジャケットに短い白いスカートがわずかにひらめいている。特に目を引くのが、赤い二角帽子。なぜか三つ葉クローバーの家紋が付いている。
「こんなところに白馬がいる!それに馬に乗ってるのは、ナポレオン=ボナパルト!?」
『グルル~!』
二角帽子女子は唸るだけ。目が異様に光っているのは野獣の特徴である。
「上様~。ヤラれてないけど、やられちゃったよ~。」
H前が泣きながら2階の相談室に入ってきた。斬られたスカートを手に持っているのは乙女を感じさせる。
「あれ?上様がいないよ~。あれはどこの誰~?」
「君が新将軍か。この前の演説の時とは印象が違うな。そんなことより、生徒たちの話を聞いて」
『ドカ~ン!』
御台の言葉を遮って殴りつけてきた将軍ナポレオン。
瞬時に攻撃を回避した御台。壁がゴムのように変形している。




