【第二章】第十部分
「じゃあ、どうするんだよ~?」
「全校生徒に『男女交際倹約令』を出すのよ!」
「禁止令じゃなくて~?」
「禁止だと反発されるわ。だからわずかに緩めて倹約令にするのよ。人間を統制するには、遊びが必要なのよ。しかし、倹約の効果は限りなく禁止に近いのよ。それが為政者というものよ。ワハハハ。」
「上様、悪辣!で、具体的にはどんな倹約をするのかな~。」
「『あげまんの性』よ。」
「ちょ、ちょっと、上様。それは極めてキケンな発言だよ。あげまんって、こうする~?」
顔を赤らめて、吉宗に背を向けて、艶っぽく振り返っている。
そして一気呵成に、スカートを捲り上げたH前。赤白のシマシマパンツが世間様にご挨拶をした。
「上様ったら、超大胆~。うふ~ん。」
「違うわよ。ちょっと言い間違えたわ。『あげまんの制』よ。」
「言い直してもキケンレベルがあまり軽減されないよ~!うふふ~ん。」
「だから、違うって。とにかく、今すぐに発布するわよ!」
次の行動は極めて迅速だった。H前の仕事の能力である。
『あ~あ。校内放送だよ~。これから将軍様からのお触れを申し渡すよ~。すでに掲示板に貼ってあるからよく見てね~。お触れタイトルは、あげまんの制だよ~。』
「あ、あ、あげまん?」「御台様に?」
タイトルに驚く女子たちは思わずスカートを一斉にたくしあげた。
クラスの男子たちは瞠目。しかし次の瞬間、インスタ映えターゲットを見つけて、スマホシャッターが鳴り止まなかった。
『やっぱりそういう反応するよね~。そうじゃないよ~!恋愛マンガを取り上げるってことだよ~。』
「ええ?そんなあ!」「恋愛マンガはあたしたちのバイブルなのに!」「ひどいわ!」「恋愛マンガにはBLも含まれるの?」「将軍の言ってた幕附高生ファーストはどこをさまよっているの?」
校内の意見をどこからか聞いたH前は、校内放送で事務的な口調で回答した。
『これは幕附高生ファーストのためのものだよ~。』
「恋愛マンガ禁止のどこがファーストなのよ?」
『幕附高生ファースト、それは幕附高生である将軍様も含まれる、つまり将軍様ファーストって意味だよ~。』
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「詐欺だわ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
『お触れに逆らえばソッコーで退学チケットを用意するよ~。』




