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【第一章】第一部分

【プロローグ】

ひとりの老人が暗闇の中でつぶやいている。

「ワシはとんでもないものを失ってしまった。このままだと、このせいで、世界が変わって破滅してしまう。なんとかせねば。ワシの曾孫に託すしかあるまい。あやつがワシの能力を継承する者なんじゃから。」

 老人は金色の羽織を翻して、どこともつかぬ闇を見ていた。


【第一章】

ここは紀伊国の徳川家の屋敷である。屋敷は大きな塀に囲まれている。

大きな石の置かれた豪華な庭には和服の幼女がかがんで土をいじっている。

「あっ、うちの家紋だわ。」

幼女が庭で三ツ葉クローバーを見つけて、それを前髪に付けて喜んでいる。

「みんなは四つ葉クローバーを探すけど、アタシは三ツ葉の方が好き。庶民は三ツ葉、それをまとめるのも三ツ葉なのよ!ワハハハ!」

少女は腰に手を当てて、高笑いしている。

その姿は周りの子供たちよりも遥かに高い。それもそのはず。少女は白馬に跨っているのである。しかし、その白馬は飾りっ気のない木馬である。

「今はアタシが白馬に乗ってるけど、いつか乗せてもらう方になるんだからっ。白馬の将軍様がアタシを乗せて、海岸を疾走する未来が見えるわ。ワハハハ!」

「あっ!また暴れん坊将軍が騒いでる!」

少し離れたところにいる安物の着物を着た子供たちが、少女を指差して、揶揄している。

幼女の赤い着物には、白馬が暴れている絵が描かれている。長い黒髪を軍配で留めている。軍配には三ツ葉クローバーの紋があり、裏には何か文字が書かれており、髪が揺れるたびに少し見えているが、判読はできない。

そこに背の高い女の子がやってきた。いかり肩で大きく腕を振っている。

幼女は、やってきた女子を額にシワ寄せながら見上げている。

「お姉ちゃん、南蛮渡来のかすていら、アタシにちょうだいよ。」

吉宗よしねはもう食べたじゃない。」

「足りないわよ、もっと食べたいのっ!」

「ダメよ。聞き分けのない妹だね。ダメなものはダメ。」

「じゃあ、これならどうかな。」

吉宗は自分の着物の中に手を入れて、白い布切れを取り出した。それを懐に隠した。

姉は驚愕し、顔が真っ赤になり、手が震えている。

「そ、それは、吉宗の脱ぎたてパンツ。ご、ごくり。そ、それをくれるなら、かすていらと交換してもいいわよ。」

「いやだわ。そんなもったいないことできないわよ~だ。チラリ。」

吉宗はパンツのゴムの部分だけを見せた。この時代、幼女はパンツで過ごし、体が大きくなると、腰巻に変わるのである。

「ぐぐぐ!」

姉は極度の幼女パンツフェチであった。姉は目を剥いて涎を流している。涎を拭うこともなく、パンツをガン見している。

「お、おパンツ、ほ、ほしい~。」

「かすていら、くれるならあげてもいいわよ~。」

「ムムム。し、仕方ないわ。ほら。」

姉はしぶしぶ、かすていらを吉宗に渡した。

「ありがとう、お姉ちゃん。じゃあ、チラチラ。」

吉宗はパンツのゴムから3センチ下まで晒した。お馬さんらしきタテガミの一部が、姉の淫らな瞳に投影された。

「それをくれるのよね。ぐおお~!」

姉は吉宗にむしゃぶりついた。しかし、ひょいとよけた吉宗。幼女の体は小さく、姉の攻撃回避は容易だった。

「パンツは見せるだけ。あげないわよ。」

「ちょっと、約束が違うじゃない。」

「そんなもったいことできないわよ~だ。」

「なによ、生意気ね。まだ胸もないチンチクリンのクセに!」

「アタシはまだ七歳なんだから、そんなの当たり前よ。アタシ前にはボン、キュ、ボンになる煌めく未来が、手ぐすね引いて待ってるんだからっ!」

「そんなことはないわよ。未来はウソをつくのが仕事なのよ。どれだけの人間が未来に騙されるのか、特にケチな吉宗に、未来は何も払ってくれないわよ。」

「アタシの未来を汚すなんて、お姉ちゃんでも許さないわ!未来は世間に対して倹約してるだけよ。余った分は全部アタシにくれるんだから。この軍配で成敗してやるわ!」

吉宗は軍配形の髪留めを外して、姉に向かって振り回した。姉の着物の裾が何カ所か切れた。肉感溢れる太ももの一部が垣間見えた。

「吉宗、危ないじゃない!その軍配、スゴく固いわよ。」

「お姉ちゃんが悪いんだよ。アタシをケチとか言うからよ。アタシはケチなんかじゃなく、倹約が好きなだけなの!」

吉宗が振り回す軍配の裏側には、力強い文字で、『倹約』と書かれていた。

「ホント、吉宗は手のつけられない暴れん坊将軍だわ!」


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