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騎士ライオット

  声の主は正面の牢から聞こえてきた。

 鉄格子越しに見てもその身体は程よく鍛え上げられ、隆々とした筋肉が姿を見せている。

 顔も悪くない。今は伸びきった髭と髪の毛でよく見えないが、キレのある目と高い鼻、鋭い眼光からしてただ物ではないだろう。歳は推測だが40後半だろうか。声音には丁度よい渋さと貫禄があった。


 「あんた、何もんだ?」

 「そらぁこっちのセリフだよ。おめぇこそ何もんだ。若いのにこんなとこぶち込まれて、どうせロクなことしなかったんだろう?」


 見事に当たっている。ついさっきも王様に殴りかかるし、ここの異世界に来る前だってロクでもない奴だったことは確かだ。

 黙り込む俺に、声の主はフンっ、と鼻で笑う。


 「図星か。まあロクでなし同士、上手くやろうや。俺はライオット。オメーさんは?」

 「榊。榊雄一だ」

 「サカキユウイチね。長いな。ユウイチでいいか?」

 「勿論だ。俺もライオットで良いよな。今更敬語なんて使えねーぞ」

 「別に構わねーよ。ロクでなしに歳の差で上下なんざあるかよ」


 俺はここですんなりと話せるようになっていたことに気付いた。

 俺はどちらかと言えばコミュ障で、クラスでも隅っこで本読んでるタイプだ。さっきはどうしようも無かったとはいえ、こんなに自然に、スラスラと話せているのは家族以外初めてかもしれない。


 「アンタは何でここにぶち込まれてんだ? 勝手な憶測で悪いが、そこまでロクでなしには見えないぞ?」


 ライオットはまた鼻をフンっ、と鳴らすと、重そうに言葉を紡ぐ。


 「王様に逆らったのさ。俺は元々王様直属の護衛騎士でな。そらぁモテたもんだ……」


 あ、やべぇ始まったよ……。これだから年寄りは困る。

 口を開けば「俺はモテてたんだ!」と豪語する。あんたらの全盛期はもう終わったんだよ。過去の栄光とか全然興味ないから。その萎びたもやしみたいなエクスカリバーで何処貫けるってんだ。少しは風呂で自分のチ○コ確認してから言いやがれ。


 「————それでな、王妃様に気に入られちまって……」

 「おいマジか! あんなクソ王にも王妃いたの? あんなハーレム許容する正妻とかなかなかの強者だよ! 普通なら即刻捨てるよ? 社会のゴミまっしぐらだよ?」


 ライオットの自分語りの端々に気になる単語がちらほら出る。それでも話が長すぎて質問の回答までいつ辿り着くのか分かったもんじゃない。


 「————で、俺が王様に進言したんだ。『こんな女子供に王様を守る力などありません。どうかお考え直しを!』ってな。そしたら機嫌を損ねちまったみたいでね。ここまで真っ逆さまに落とされたのさ」

 「えーと? 要約するとつまりハーレム拡大計画の中に騎士団も入ってて、そこも女の子にすると防衛機構に著しい破綻が生じるから止めろっつったら怒られて牢に放り込まれたのな?」

 「あ。そうそう。まあ短くするとそんなもんだ」


 おいおい何だよ。萎びたおっさんの生々しい夜の生活のくだり要らなかったじゃん。っつーか健全な青少年に何聞かせてんだよ。青少年から性少年にクラスアップするところだったよ。俺のエクスカリバーにオルタ成分混ぜるんじゃないよ。うっかり黒化したらどうすんだよ。


 だが確かに、王の護衛という役目はあまり果たせていないように感じた。どこぞの漫画は王の護衛軍とか言ったら会長に「ワシより強くねww」とか言わせるくらい強かったのに。彼女たちは確かに顔こそ美人ではあったが、もやしとよく言われる俺すら抑えられず王様に一撃入れさせちゃうくらいひ弱だ。

 

 「まあお前みたいなもやしに突破されるような騎士団なんざ、いてもいなくても同じだがな」

 「もやし言うな。ってかこの世界もやしあんのかよ。そっちの方びっくりだわ」

 「何言ってんだ? もやしは世界最弱のモンスターだろ。スライムよりも狩りやすい上に飯にもなる。ガキの格好の訓練相手だろうが。お前もやったことあるだろ? あの上についてるひょろっとした奴だけぶった切る遊び」


 何それ怖いんですけど。つーかなにその遊び。流石にそんな猟奇的な遊びしたことねーわ。


 「とにかく、今の王は腐ってる! 先代が無くなられてからは一層酷い! ああ。魔王討伐に勇者が失敗しなければこんなことには————」

 「待て待て待て! あのクソ野郎は魔王は死んだって言ったんだぞ!」

 「あ? どうせ口から出まかせだろ? そういうのよくやるんだよ、あの王は」


 なんて王だ。まさしく殴打しといてよかった……じゃなくて、さらっと嘘ついてんじゃねーよ!


 「それで……魔王は今どうしてるんだ? 悪逆の限りを尽くしてんのか?」

 「いや。積み荷をたまに襲うくらいだな。そうやら先の大戦で向こうも相当やられたらしい。今は下手に手を出したりはしないだろう」

 「そっか……」

 「でも、それも一時の平和に過ぎない。魔王が本気を出せば、人界は大混乱に陥るだろう」

 「ど……どうなるんだ?」

 「人界が焦土になる」

 「ゆ、勇者は何してんだよ!」

 「勇者様は魔王との決戦以来、姿を消された。それ以来、誰も消息を知らない」


 全く勇者何やってんだよ! 人界放ってどこ行ってんだよ。全く顔が見てみたいぜ。どうせロクでもない奴だよ。根性ねじ曲がってるタイプだよ毛根に出るタイプだよ!


 全く、勇者————勇者?


 あ……勇者、俺じゃん……


 「全く、勇者ともあろうお方がいったい何をなさっているのか。魔王との戦いから5年。何も言ってこないなんておかしいじゃないか! なあ? お前もそう思うだろ?」

 「そ、そうだなぁー。でもほら、勇者も人間だからさ! 多分疲れたんだよ。きっと今休んでるとかそんなんじゃないかな? はは、あははははー!」

 「なんだお前。こんな寒いのに汗かいてんぞ?」

 「うるせーよ! 細かい事ねちねち気にすんなよ! 俺にとってはサウナ並みの気温なんだよ!」

 「お、おう。そうか……」


 おいどーすんだよ。ステータスが平均的な勇者でスキルが漢検の奴なんて聞いたことねーよ。多分魔王倒せないよ? 俺無理だよ? 絶対死ぬよ?


 「おいホント大丈夫か? やっぱり熱でもあるんじゃ……」

 

 ライオットが余計な心配をしてきた、ちょうどその時だった。


 「おい自称勇者! 出ろ!」


 鋭い指示が飛ぶ。俺のいる牢の鍵が外され、そのまま引きずり出される。


 「王命により、貴様を斬首刑に処す。何か言い残すことはあるか?」


 それ……ここで聞くの?


 

 


いやぁ。何も考えないでその場のノリで書くってやっぱいいっすよねー

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