守りたいものはありますか?
初投稿なのでお手柔らかにお願いしますー
守りたいものはありますか?
私にはあります。
どうしても守りたいもの。
絶対に失いたくないもの。
でも、私はいまそれを失いそうになっています。
これは私にとってとても大切なもので、
それと同時に、私に残された最後の価値のあるものです。
残された時間は、きっともう残りわずか。
できれば。
できるのならば。
もしこの世界に奇跡か魔法でもあるのならば。
時間を伸ばしたい。
まだ、失いたくない。
もっと、長く。
…いや、ずっと失いたくない。
この心地よい時間を。
もっと、長く。
まわりがどうなっているのか、私にはわからない。
視覚は早いうちになくした。
最後に見たものは病院のただただ白い壁。
それと、生まれてから十五年間いっしょにいた幼なじみの『君』の笑顔。
まだ微かに残っている触覚は私に教えてくれる。
君が私のすぐそばで、ずっと手を握ってくれていると。
こんな状態になってもう一年以上がたつような気がする。
涼しい風が吹いて、
寒い風が吹いて、
暖かい風が吹いて、
熱いかぜが吹き込んで、
また涼しくなり始めた今。
だんだん、いろいろなことが分からなくなってきた今。
左手に残るこの感覚だけが私の生命線。
生きる、すべて。
…私は、もうだめかもしれない。
君との時間は、まだ足りない。
体はもとより動かない。
馬鹿だな、私。
ずっと見てくれた君に感謝の言葉すら言えないなんて。
せめてこの口さえ動けば…
でも、動かなくても、君は感じてくれると信じてる。
ずっと、ありがとうね。
…あっ
ずっと、ありがとうね。
聞こえた気がした。
重い病気に罹っている君の声が。
口すらもまともに動かないはずなのに。
耳も聞こえない君に普通の言葉はもう通じない。
なら、
僕はそっと君を抱きしめた。
君は微笑み、そして数秒後には旅立った。
こうして、僕は大切なものをなくしました。