隠し事・訪問者
≪序章≫
―――――『神』――――――。
曰く、それは人間を超越した威力を持つ隠れた存在・・・・。
曰く、それは人間に危害を及ぼし恐れられている存在・・・・。
曰く、それは人知を似てはかることのできない『能力』をもち、人類に過福をもたらすと
考えられている存在・・・・。曰く・・・・、
その存在は日本でいうアマテラス大神,ヨーロッパでいうゼウスだろうか?
また、その者たちは神話という物語で生き、人には到底扱うことができない力を振るい数々の武功を挙げた。
そして、その者たちは人々の信頼を集め、崇められる存在へと成り果てていったのだった。
だが、果たして人間はどうだろうか?
誰かの力を借りねば生き永らえる事が出来ない、信頼したと思えば手の平を返す・・・・。
とてもじゃないが、そんな人間が弱肉強食の神話の世界を生きていけるとは考えにくくはないだろうか。
神話という世界は弱ければ喰われ、強ければ生きることができる。
――――――――では人はどのようにして生きてきたのか?――――――――
答えは簡単!神の特性を利用したのだ。
神話という世界は約100万年続き、どの種も自分たちの力を最大限に使えるように進化を繰り返してきた。
また人間たちもそのうちの1種だ。
人間は他種族にはない頭の回転の速さ、知識を生かし神話で最も強い神について徹底的に調べ上げた。
この行為そのものが今、現代へと繋がる神の謎へと発展を遂げるのは誰も知る由はない・・・・。
―――――――まだ神話は終わっていない、まだ序章を終えたばかりだった――――――
「崇めるのなんてまだまだだ、価値のない人間どもが・・・。お前らの価値は死んでこそ生まれるんだよ・・・・!」
< 第1章 >
1話、⚡⚡ 電撃 ⚡⚡
「 妹の下着はほしいですか~~??」
暗い部屋の中、いつものように早起きし、そそくさとPCを立ち上げた俺は目の前の画面を見つていた。
『妹の〇〇はほしいですか』
などとそんな不埒なことを呟いているのはもちろんオレではない。恋愛シュミレーションゲーム、俗にいうギャルゲーである。
俺は普段こんなゲームなどしないのだが、ネトゲの友達が強く勧めてきたので、仕方なくやってやろう
というわけで、今プレイしようとしているのだが。
俺は驚きを隠せずにいた。
画質・声優の声・ヒロインとなる妹・・・・などなど、何をとっても神がかっている。まるで本当にいるかのような錯覚でさえ覚えていた。
「すげぇ~!!いや、でもこれ実妹に見られたら絶対殺されるはな・・・・」
と、少しの不安をおぼえながら【NEW GAME】をクリックする。
画面が切り替わりオープニングが始まった。それもまた神がっかていたのだが・・・・。
「・・・・ゼぇロぅしゃん??ふぁぁ~~~~、」
起きたのは・・・・いや、正確には起動したのは俺こと神代さんのガイダンスドロットで、
名を【コア】といい超能力者の健全な育成、また犯罪を起こさないように防止する役割を果たしている。
【・・・・まあ手っ取り早く言うと、妖精みたいな。】
『ゼロしゃん、今朝は早いですね・・・!!もしかして、宿題するの忘れてましたか??
ダメですよ!!ちゃんとしないと。
この街は学力・自分自身の超能力・家庭能力・・・この3つを総合して順位がつけられます。
また、Å~Eまでの『レベル』があり、ランクがEになった場合大量の宿題が出されます!!』
・・・・え!?,しょっぼ!?なにそれ怖~~い。〔ある意味〕
フワフワと浮き、胸を張りながら凄い自身有り気に言うコアに、
「・・・・で、それがどうしたの?お前はさ、俺のいわばランクアップの為に召喚されたんだろ?
じゃあ、何で毎度毎度俺に面倒ごとを押し付けて来るの・・??
何でコミュニケーション障害(コミュ障)の俺に人と話させようとするの・・??
結論をいうと、君は俺に邪魔しているわけだ。わかる?・・・・勿論分かるよね・・・・!!」
すると,コアは(?)という感じで首を傾げ、
『 私は・・・・。私は自分のやっていることは間違っているとは思えません。全てはゼロさんに
少しでも良くなってもらおうと、わざと人とコミュニケーションを取らせようとしたり、
面倒ごとを押し付けてしまったこともありました・・・・!!』
(・・・・面倒ごと押し付けたっていう自覚あったんだ!!)
コアは真剣な面向きで、こちらを見てそしてでも・・と続け、
『 私は主を良い方向へ導くのがガイダンスドロットの仕事また誇りだと思っています。
そこらへんにいる野良Eランクの超能力者なら、無茶苦茶しますけど、
ましてやゼロさん・・・・優柔不断で無慈悲で陰湿で素直じゃない方ですけど・・・・。』
( 今の発言で俺のチキンハートが・・・・!?グェェェェ~~。)
『 優しくて私のす・・・、いえ、尊敬できる超能力者さんです・・・・。えへっ、えへへ~~~~!!』
(・・・・・・・・・・・・・・・・。)
コアは手を頭の後ろにやって、いつもは見せない子供っぽい笑顔を浮かべる。
なんか告白シーンみたいな甘酸っぱい空気になっているのはなんでだろう??
・・・・そこに起動していた『妹の下着はほしいですか』などというなんともいやらしい題名の
恋愛シュミレーションのメインヒロインの萌恵が追い打ちをかけるように、
≪ 私ね・・・・。実はお兄ちゃんのことが・・・・ことが好きなの!!≫
やめろー!!なんか凄い意識するから。これ以上この部屋を危ない空気にするな!!
( コアの顔が次第に赤くなって、呼吸が荒くなっているのは俺の気のせいだろうか??)
後で、ギャルゲーのディスクは叩き割るとして、どうにかしてこの状況を回避しようかと頭を巡らせたの
だが、結局名案は浮かばず・・・・。
「・・・・ごめんな、そんなちっぽけな事に気付いてやれなくて。やっぱり、俺はこの街のクズ
間違いなしだな!」
『(クズなんか) じゃない!!』
俺が笑い飛ばすように言った言葉にコアは強く反発した。その表情はまるで母親がわが子を守るような強い顔で。
『 ゼロさん。覚えてる??母親が目の前で殺されたあの事件を。
あの時、あなたはまだ13歳。生きていくにも何をするにも親という存在が不可欠だった・・・・。
・・・・普通あの歳だったら、まだ身も心も未発達だから生きる術が分からなくて死んじゃう子も
多いんですよ!!』
「 それはおれの運がよかったからだろ!? 」
『 運が良くて、今まで生きて来られるんですか??運がよくてあなたを殺そうとしていた組織が、
一歩引いているんですか?? 本当に運が良かったのなら、あなたはEランクなんていうところに
踏みとどまっていませんよ!!』
確かに、運が良くてここまで生きて来られたというのはどうもしっくりこない。
( 偶然かそれとも必然か?? )
『 あなたは知らない。自分がすごいということを。もっと誇らしく思っていいんですよ!
だから、もっと大事にしてください・・・・。自分のこと・・・・。 』
それを言い終わるまえに、コアからたくさんの【涙】が頬を伝い、落ちていった。
『 私・・。知っちゃったんですよ・・・・。あなたの過去を。
自分についた訳の分からない能力のせいで、友達を傷つけてしまい、そのせいで周りからは
一歩置かれ嫌なあだ名をつけられ、何度も傷ついて幾度も自殺を図ったことも。
父親からはそのせいで散々暴力を受け、身も心もボロボロになったのに、誰もあなたに駆け寄って
声も掛けなかった。
・・・・・・だから、今も憎く思っているんでしょう。自分の能力に、また人という生物に。』
「確かにお前の言う通り今まで本当に辛かった・・・・」
でも・・・・と言う前に、俺はコアのその小さな体に抱かれていた。
『 私はあなたと会ってから、いつも楽しくてずっとあなたを振り回していました。
でも、これからは私が振り回される番です。素直になってください。ゼロさん。
そして戻ってきてください。(その時はきっと打ち明けます。あの事件の真実を・・・・。)』
最後、何を言っているのかはよく分からなかった。
・・・・今はどうでもいいや、俺はそう勝手に自分に結論づけ、ずっとコアに抱かれることを
選んだのだった。
【 終 】