約束9個目
⑨私以外に本音で話せる人を作ってください。
「夏希」
「………」
「夏希…!」
「ん!?あぁ、ごめん。ぼーっとしちゃってたね」
最近、夏希がおかしい。
話してても上の空だし、ぼーっとしている。
「寝不足」
「……かも、ゲームのしすぎかなぁ?」
うぅ…と呻き声をあげながら眠そうにうつ伏せる夏希。
さすがに、これは心配。
「暑くないの」
「うん」
夏希は夏でも長袖ジャージを体育で着る。
もちろん下ジャージも。
本人は寒いからって言ってるけど、額には大量の汗が出ていた。
「なんでジャージ着るの」
「寒いか…「汗、かいてる」……!」
「本当は、暑いんじゃないの」
熱中症っぽく、今にも倒れそうだったので、日陰に行かせ、水を持ってきた。
「ご、ごめ…ありがとう」
「なんで謝んの」
「迷惑かけちゃったから」
「迷惑なんてかけられてない。最近、変」
「そ、そうかなぁ…?」
夏希は、嘘をつくのが下手だ。
「体操服、着てる?」
「うん、……って何するの!?」
「熱、逃がさないと駄目」
俺は強引にジャージのチャックをさげた。
「は……?」
すると目に入ったのは、首にはいくつもの痕、と言うより痣。傷。
「なにこれ」
「いやぁ…転んじゃって」
「転んでもこんなとこ痣できない」
とにかく言わせないといけない気がした。
今のうちに悩みを吐かせないと、夏希が壊れる。
「ま、海音の……ファンなのかな?っていう人に……ちょっと、ね」
俺の…ファン?
「いつも海音のことキャーキャー言う人が…」
風が入ってきたのか少し楽な表情になり、安心するが、傷を見るとそれどころではない。
「そいつら、殺 す」
「はは、冗談でもそんな事言わないの」
弟扱いをする時の言葉使いになり、目を細める夏希。この表情は、なにかしてほしい時。
「どうしたの」
「ぎゅっ、て抱きしめて」
そう言われたので俺は初めてめて女子を抱きしめた。甘える夏希は、初めてかもしれない。少ししてから、もういいよと言わんばかりに背中に回してた手が緩まれ徐々にあの夏希の温もりが消えてく。
だんだんと離れ、目が合うと、
「ふふ」
見たこともない嬉しそうな表情と、安心しているような顔。その顔に、俺は唇をあてた。
「……海音」
「……好き」
「うん、私も」
そう言ってから1週間後、夏希が自 殺した。




