ある晴れた春の日。1 始まり
晴れた春の日のこと。
桜の前で男子生徒が一人、消えた。
「…ら、そら!大空!」
朝から母さんの声に叩き起こされた。母さんの俺を起こす声はいつもヒステリックでちょっとイライラする。
「大空!いつまで寝てるの?!朝ごはんなしね!」
前言撤回。めっちゃイライラする。
「うっせーな!起きてるよ!」
直後、ふすまがバーンと豪快な音をして開いた。マジで鳴るんだ。とか呑気に考えていたら掛け布団を引き剥がされた。
「起きてないでしょ?!お弁当ご飯だけでいいなら自分でご飯だけ詰めていきなさい!」
あまりにイライラしたので速攻で着替えて家を出た。朝ごはん出さない上に昼は冷たい白い飯食えだと?許せん。コンビニでパンでも買うか。
「大空」
コンビニのパン売り場の前で悩んでいたら声を掛けられた。
「ケンカした?」
幼馴染みのこいつは無表情で聞いてくる。
「ああ。よくわかったな。」
「毎日金欠って言ってるやつがわざわざパンを朝に買う理由なんてそれくらいしかないだろ。」
決めた。メロンパンと一個増量中のチョコパンとコロッケパンにしよう。
「透哉!決まったぞ!」
さっきまで隣にいた透哉が隣にいない。まさか……と思って焦ったけれど透哉はいつの間にか外でアイスを食っていた。俺もつい食べたくなり隣のアイス売り場に目をやった。アイスモナカが140円。財布とにらめっこした結果結局買い、相変わらずアイスを食ってる透哉と共に学校に向かう。
日差しは暖かいが風は生温いし何かの花の匂いがまじっていて気持ち悪い。二人で無言で歩く。校門をくぐったところで突然誰かにぶつかられた。
「ごめん!」
つい謝ってしまう。ぶつかってきたのは向こうだから謝る必要はなかったかもしれない。
「すみません!」
謝ってきたのは女子生徒だった。顔を見ると予想以上に可愛かった。でも見たことがない顔だから一年生だろうか。妹が読んでいた少女漫画の出会いのシーンに似ている。これはチャンスかもしれない。にやけながら透哉の方を見ると透哉は喜びと驚きと悲しみと憎しみが混じりあったようななんとも言えない顔をしていた。コーラの色みたいな。余計わからなくなった。だいたい透哉がここまで動揺している方が珍しい。そう、珍しいのだ。透哉は基本感情を荒立てない。え、今感情が高ぶっている?!
「待って!透哉!透哉!とうや!」
……。
遅かった。
俺たちの前から透哉の姿は消えた。
学生なので続くかどうかわかりませんが、頑張ります。