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最悪で災厄なエルフの魔王物語  作者: ぐりーんなぽりたん
はじまり
1/12

プロローグ 弱肉強食の果てで

初投稿です…

 


 ――弱ければ食われる。それが蹲る少女が今日一日で会得した考えだった。


 少女の目の前で両親の命は貪られた。それは彼らが弱かったから。

 少女の目の前で大勢の村人の命が食い尽くされた。それもみんなが弱かったから。

 隠れる少女の目の前で、大切だった人達の命は飲み込まれた。貪られ、咀嚼され、飲み込まれたのだ。


 瓦礫の中に隠れる少女は、全身を噛み砕かれるかの様な恐怖を堪え、じっと息を潜め続けていた。

 彼女もまた、弱かったのだ。


 嫌だ死にたくない。まだ食べられたくない。少女は涙を流すことも忘れ、ただひたすらに堪え続ける。


 ……だが、その飢えを抑えられない貪欲な存在達は、遂に少女の姿を捉えた。


 そのおぞましく醜い姿に、少女の小さな口からか細い悲鳴が漏れる。

 逃げ場などなかった。守ってくれる人などいなかった。

 少女にはもう何もなかったのだから。


 彼女には、抵抗することも慈悲を乞うことも許されてはいない。ただ一つ許されたのは、その理不尽な運命を受け入れ……それらの糧となることだけだった。


 ……ついに堪えていた涙が流れる。


 ――だがその溢れた涙が、少女の運命を大きく変えるのだった。






 弱ければ食われる……だが、強ければどうなるのか。

 全てを食い尽くした少女。だがそれでも激しい飢えを訴えるお腹をさすりながら、ふとそんなことを考える。

 我慢できないほどの飢えと渇き。その耐え難い苦痛は、段々と少女の心を蝕んでいく。


 彼女は濁った瞳を空へ向けると、ゆっくりと立ち上がる。

 そして……その口から言葉が溢れた。


「お腹……空いたなぁ」


 決して満たされることはない。だが少女は未だズキズキと痛むその欲を満たすために、その足を踏み出した。


 散らばった食べかす達を踏みつけながら彼女は歩く。

 目的はない。ただその『飢え』という欲望を満たすためだけに、少女の旅は始まったのだ。


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