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1 我ら生徒会執行部

 

 ──────2年前


「……っはっ、はっ…!」


 純白の翼を背に生やした少女の手を引きながら走る1人の女子。その後ろから、漆黒の翼を生やした異形の者達が追いかけてきていた。

 彼女達が走る道には無数の骸。原形を留めている物は少ないが、これが全て人間のものであることに違いない。ゾッとする。この空間に長居しようものなら確実に気が狂ってしまうだろう。


「もうすぐっ……!もうすぐで、転移魔法陣だよ!」

「……うん」


 背後から迫る異形達の攻撃が少女を導く女子の皮膚を引き裂いた。身体に焼けるような痛みが走る。それでもなお、女子達は走り続けた。その身体に無数の傷を負いながら、己が血に塗れようと足を止めることは決してない。これは自分にしか出来ないことであり、世界を守るためだと女子は理解しているからだ。

 開けた場所にある模様の描かれた地面の上に足をつけた。それは、地上に繋がる扉。世界を行き来するための転移の魔法陣。

 女子が小さく何かを呟いた。そのまま地面は青白い光を放ち、彼女達を包み込んでいく。そして、彼女達は魔法陣の上から姿を消した。

 消え去る瞬間、少女を導いていた女子は勝ち誇ったかのような小さな笑みを浮かべていた。

 それを見送ってしまった異形の者が小さく舌打ちをする。


「ちっ!地上に逃げられたっ!」

「今から行ってとっ捕まえてやる!!」

「そう焦るな。地上に行ったんだ。アレを探している間に見つかるだろう。そして、あの小娘諸共捕まえればよい」


 どうせ、あの世界に行ったところで、逃げられはしない。向こう側へ行ける我らにとっては障害にもならないのだから。異形の者はそう呟くとほくそ笑んだ。





 ──────2年後


「………であるからして…」


 静寂の中に響き渡る教師の声とシャーペンの走る音、教科書のページを捲る音。これだけで授業中だということは一目瞭然だろう。真面目な生徒であれば黒板に書かれた文字を、ノートに書き写している頃だ。

 そんな中、俺は教師の話を右から左に聞き流し、ボーッと窓の外を見つめていた。それに気が付いた教師が一つ咳払いをする。


「時雨……時雨冬夜(しぐれとうや)!!」

「……お兄ちゃん」


 前方から声をかけられた。そちらに視線を移すと、自分の最愛とも呼べる可愛い妹が教卓の方を指差していた。

 釣られるようにそちらを見てみると、教室内にいる生徒の視線が、全て自分に向けられていることにようやく気がつく。

 隣とその前に座る学友達は、はあぁっとため息をつきながら呆れた表情を浮かべ、更に席を挟んで向こう側にいる友人は、この状況を楽しむように笑みを浮かべていた。


「時雨、これやってみろ!」


 教師が教卓に浮かんでいる構築された魔法陣を指差す。

 全然話聞いてなかった。お陰で何をしたらいいのかわからない。黒板に何かヒントが書いてあるだろうと思い、俺は黒板の文字をチラ見した。

 黒板に書かれていたのは風魔法の基礎構築法。やってみろということは、魔法陣で風を起こせばいいってことだろう。

 そう解釈した俺は、こういうのは冬歌の方が得意なんだけどなーと思いながら渋々椅子から立ち上がると、教卓の前へと向かい左手を魔法陣にかざした。


「風よ、巻き起これ」


 俺がそう呟いた途端、魔法陣が輝きブワリと風を渦巻き始めた。風の渦は魔法陣の中だけに収まらず、教卓を飲み込みそうな勢いで大きく広がっていく。

 ………しまった。加減間違えた。そう思っている間に、風は最前列の生徒が広げていた教科書を巻き込み始めていた。悲鳴が上がる。もちろん恐怖の悲鳴だけではない、所謂黄色い声と呼ばれるものも混じっているだろう。だが……、これ以上放置したら大変なことになりそうだな。


「し、時雨!もういい!」


 教師の制止の声がようやくかかる。

 ……先生様よ。お前がやれっていったんだろ。なんでビビってんだよ。しかも、普通ならこんな巻き込まれるより、もう少し早く止めるだろ。

 俺は、呆れながらはぁっとため息をひとつ吐き出すと、パチンッと指を鳴らした。風はピタリと止み、巻き込まれていた教科書類が、バサバサと音を立てながら床に広がり落ちていく。すまない教科書、お前達に罪はない。


「これでいいんだろ?」

「あ、あぁ……」


 教師が放心している間に、落ちた教科書を拾い上げると、名前を見ながら持ち主に差し出す。その作業を終えると、俺は自席へ戻った。


「やり過ぎだ」


 隣の学友から小言を言われた。

 ああいうのは加減がわからないんだよと伝えると苦笑が返ってくる。

 俺は頬杖をつくと、再度窓の外を見つめ始めた。視界に広がる街と海……。しかし、見つめているのはそんなありきたりな風景ではない。海の上空に輝く、まるで血液で作ったような色の魔法陣。俺はそれをずっと眺めていた。

 約15年前、突如海の上にアレは現れた。魔境と呼ばれる、魔物の住む異界とこの地上を結ぶ扉の様な魔法陣。扉ならば開くことが出来るように閉めることもできる。なので理論上封印出来るはずなのだが、肝心の封印方法は未だ分からず、学者達も手を焼いている。あの魔法陣を通り抜けてやってくる魔物を撃退する以外の方法がまだ見つかっていないのが現状だ。

 だが、約2年ほど前から魔物の動きが活発化し始めているのだという。何はともあれ自分達のすべき事をするだけだなと思い、魔法陣から目を逸らした。


 授業終了の鐘が鳴る。教師が教材をまとめ、気が緩んだ生徒達の話し声がポツポツと聞こえ始めた頃、俺の周りに人が集まった。


「……凄かったね。……冬夜くんの魔法」

「さすが、学園に2人しかいない評価SS」

「ズルいよね。俺達成績はいいけど、評価はAとかSだもんね」


 褒めてるのか嫌味なのか、小さな笑みを浮かべる俺の学友。この学園の生徒会長である暁御影(あかつきみかげ)とその幼馴染であり生徒会庶務を担う瀬戸鈴音(せとすずね)、生徒会会計の天道樹(てんどういつき)

 この世界の魔法のランクは評価という名で振り分けられている。SSは上から二番目の評価、魔法が使えない者は一番下の評価Eに分類されている。評価Cが魔法の使える一般人レベルなので、俺は相当強いということだ。評価Eの鈴音からすれば、俺の魔法は凄いとしか言いようがないのだろう。


「まぁ、その上の学園に1人しかいない評価SS+が側にいるけどな」


 チラリと己の前の席に座る己の妹を見つめる。この学園で1人しかいない一番上の評価であるSS+。俺の最愛の妹である時雨冬歌(しぐれとうか)がその最上位の評価を頂いていた。

 愛する妹が最上位の評価を頂いていることは誇らしいことなんだが……、この評価のせいで冬歌をチヤホヤしたり言い寄ってくる害虫が増えるため、俺は気が気ではない。可愛い妹に手を出す奴は何人たりとも許さない。

 それにしても、今日も可愛いなぁ、後ろから冬歌眺めてるだけでも幸せだ。さっきの俺を呼ぶ声も可愛かったなぁ……。


「あはははっ」


 その笑顔も声も可愛すぎる。くそっ……!なんで!俺と冬歌の血は繋がってんだよ!……あ、でも血が繋がってないと四六時中一緒にいられないか。双子ばんざーい!……などと脳内で自問自答を繰り広げていると、ビーッと構内に設置されている放送用スピーカーから警報が鳴り響いた。真っ先に反応する。こうして構内に警報が響く時は、この学園の敷地内に魔物が入り込んだ時のみ。俺は会長達を見回すと、コクリと頷いた。


「行くぞ、お前ら」

「はいよ。じゃあ、あいつも呼ばないとね」

「んじゃ、冬歌と一緒に先行ってるわ」


 俺は冬歌を抱き上げて教室の窓をガッと開くと、二階の窓から飛び降りた。風魔法で落下速度を調節して華麗に地面へ降り立つ。

 冬歌が探知魔法と呼ばれる魔法で魔物の居場所を特定すると、目的地へ向けて走り出した。そちらへ向かうと170cmの人間くらいはあるであろう大きな蜂が3匹、嫌な羽音を立てながらこちらに向かって飛んで来ていた。


「アジャイルハニーか」


 アジャイルハニーは蜂の魔物。評価Dクラスの魔物であり、弱点は火属性の魔法。ただ、必ず複数体で行動する上に動きがとても素早い。その速さを封じなければ、一方的に嬲り殺しにされてしまう。

 俺は冬歌を地面に降ろすと、己の右腰に差している刀へと手をかけた。昔は右差しは邪道だと言われていたが、今の時代で気にする者はいない。その刀身を鞘から引き抜いた。


「冬歌、サポート頼む。会長らが来る前に倒すぞ」

「了解」


 駈け出し、飛び上がる。

 アジャイルハニーは宙に浮いてるため、風魔法を翼代わりに使用して接近しなければ俺の攻撃は当たらない。上手いこと威力や向きを調節すると、素早く懐へ潜り込んだ。反応に遅れたが、アジャイルハニーは己の尻に付いている針を突き刺そうと身体を丸めると、針先を俺へ向けた。しかし、それより先に動く。


「烈火一閃!!」


 炎を刀に纏わせ、そのまま薙ぎ払うように刃を振りかざした。斬られたところから炎が侵蝕し、そのままアジャイルハニーの全身を包み込んでいく。もがき苦しむと焼けて灰へと変わった。まずは一体。すぐに次の蜂の懐へ侵入する。

 だが、相手は魔物であり、簡単にやられてくれる程甘くはない。アジャイルハニーは俺が懐へ入り込んだのを確認すると、素早く離れた。ビュンビュンと周りを飛び回る。そのため狙いが定まらない。

 チッと舌打ちを一つすると、一度地面に足を着けた。


「冬歌!」

「任せて。吹雪」


 冬歌の手に一つの扇が現れた。俺の持つ刀と対になる鉄扇『吹雪』。冬歌はそれを広げると、足元に純白の魔法陣を輝かせた。


「光縛の舞!」


 金色に光る輪が、アジャイルハニーを捕らえた。拘束魔法により、身動き不能にされた蜂が、ブブブッと羽音を立てながらもがく。


「サンキュー」


 流石、俺の妹だ。そう呟くと再度宙へと舞い上がった。口角を釣り上げ、ニタァッと悪どい笑みを浮かべる。動けぬ蜂など、もはや俺の敵ではない!


「焼けちまえ、烈火一閃・燐火!!」


 刃を横に薙ぎ払うと青白い炎が舞い散った。触れたアジャイルハニーを包み込み、火柱を上げる。刀身を鞘へ納めると同時に炎は消え、アジャイルハニーはその姿を残さず灰へと変わると、吹きゆく風に流されていった。


「冬歌、サンキュー」

「どういたしまして」

「おーい!」


 丁度いいタイミングで御影が鈴音と樹、他1名を引き連れて、俺達と合流した。


「火柱が上がったと思って来てみれば、もう倒していたのか」

「おうよ」

「冬夜ー、俺にも残しといてーや」


 愚痴る男、生徒会副会長の根来蛍(ねごろけい)

 残念だったな。お前の出番はない……と、言いたいところなのだが、まだ敵のいる気配がある。恐らく隠れていたのがいたのだろう。ビュンッと風を切る羽音が徐々に近付いてきていた。鯉口を切りながら、敵が間合いに入るのを待つ。

 だが、俺が振り返ると同時に、隠れていてらしいアジャイルハニーは真っ二つに斬られていた。何に、大鎌に。


「なーんや。まだ残ってるやんか」


 ニィッと笑みを浮かべる。己の刃よりも先に蛍の大鎌がアジャイルハニーに襲いかかったのだ。そのまま苦しむように地面をのたうち回ると、アジャイルハニーは動きを止めた。敵の気配はもうなく、これで終わったことを動かないそれが告げている。

 俺達の役目は、学園の治安維持と魔物の殲滅。


 これが我ら、聖アストラル学園高等学校生徒会執行部。星の腕章を掲げる学園の守護者。

 この物語は、我ら生徒会執行部と魔物の世界をかけた戦いの物語である。



はじめまして、歌月青と申します。

今回が初めての連載となります。

ど素人が書いています。読む人を選ぶような内容が凄く多いです。

正直設定ガバガバじゃねーの!とかその他諸々思われる所多々ありますが、許してください。豆腐メンタルなので、突いたら崩れます。ボロボロに。

こんなアホみたいなお話ですが、少しでも面白いなと皆様に思っていただければ嬉しいです。

どうぞ、暇つぶし程度に読んで下さい。


では、『我ら双子で生徒会執行部!〜シスコン兄とその妹〜』をよろしくお願いします。

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