力の正体
目を開くと俺は真っ白な空間に浮いていた。
「ここはどこだ。俺はまた死んだのか。」またツユハちゃんを死なせてしまったのか、まったくどうしようねーな。
てか二回目死んだらどうなるのか聞いてなかったな~どうなるんだろうな。などとどうでもいいことを考えているとどこからかわからないが声が聞こえる。
「なんだこの声は?」妙にテンションが高い話し方の中にも微妙な傲慢さが見える。なんか似ている話し方をするやつを俺は知っている。
「おい________おい」なんなんだよこの声全く訳が分からない。
「あんたが呼び出したんだから返事くらいしろよな」俺が呼び出した?いったい何のことだ。
確か俺は砲撃の衝撃でふっとばされた時に閻魔の言葉を思い出してファイヤードレイクの力を使って意識を失ったはず。
いつ俺がこんなやつよんだって呼んでないけど。まさかあの暴力マコ様と同じような話し方の声の主がまさかファイヤードレイクなのか?だったとしたら何が伝説のドラゴンだよ。
「お前まさかファイヤードレイクなのか?」てかそれ以外可能性ないよな。てことは死んでないみたいだな。
「おう、だがファイヤードレイクってのは俺の種族の名前だ。俺の名前はクレイだ」種族の名前ってことは伝説のドラゴンって何体もいるのかよ。
「クレイか。ここは一体どこなんだよ」ツユハちゃんとマコがどうなったか気になるしできれば早く元の世界に戻してほしいところである。
ここか~と少し考えてから気さくなドラゴンは「ここは籠手の中だな。気絶したお前の意識だけをここにもってきた。」また訳の分からないことを。
「どうしてそんなことをしたんだよ」俺がこいつを召喚したのが一番の問題だったらしいな。
そうだな~とまた少し考えるような素振りをして「正式な契約がまだだしな。契約が成立しないと俺が外に出られないんだよ。」
そういうことか。でもなんか理由があって籠手に閉じ込められてるのによくわかんないこの状態で封印を解除していいのか。
「とりあえず、契約って何をすればいいんだよ」これで命とかいわれたら速攻拒否してやろ。
う~ん何すればいいんだろな思いついたように「そうだ、手を出せ」というと真っ白い空間がめきめきと音を立ててひび割れそこからでかい鉤爪のついたドラゴンの手が出てきた。
その手が俺の手に触れたときクレイが「よし、これで契約完了だ。」えっこれだけかよ。変な覚悟して損した気分。
「これで晴れてあんたは俺の主だ。これから困ったときはあんたに力を貸そう。お、そうだあんたの名前まだ聞いてなかったな」そういえば名乗ってなかったな。
「俺の名前は荒川亮だ。よろしくな。」
アラカワリョウか変な名前だなとつぶやいてから「リョウよろしくな」と言った。俺の名前めっちゃ普通だろ。でもこの世界の名前は洋風なのかな。
「とりあえずそろそろ外に戻るか。あんたの意識も戻りそうだし、なにより外もそんなゆっくりしてられるような感じじゃないしな。」そうだ俺たちは火の海の真ん中にいるんだった。
「荒川くん________荒川くん_______ねぇ起きて______目を開けて」聞き覚えのある声が聞こえてくる。「人間起きろ」これってまさか
「ガーン」思った通りだ思いっきり腹殴られた。
「痛いな。こっちはけが人だぞ。」俺は暴力少女に文句を言いながら目を開けると俺はその光景に驚いた。俺の目の前にはツユハちゃんの顔がすぐ近くにあった。
どういう状態なんだこれは。後頭部には柔らかい感触を感じているし、これは膝枕だな。人生初体験だ。
でも彼女の眼には大粒の涙が浮かんでいるこれは気まずい。とりあえず体起こしたほうがいいよな。
「大丈夫なんですか?」と彼女は心配そうに僕の顔みつめながら聞いてきた。
「たぶんね~でも実際何があったのかよく分かってないんだけどね」たぶんできてないだろうけどできるかぎりの作り笑顔を作って言った。
「何も覚えていないんですか?」なんかすごいびっくりした眼で俺の顔見られてもホントになにもおぼえてないんだよな。
とりあえずおれは体を起こしてさっきまで火の海だったあたりをみて俺はまた驚いた。
「なんだこれ」思わずこえにだしてしまった。さっきまで火の海と化していた森の木々は綺麗な平地になっている。もちろん火も消えている。
これは一体。俺たちの後ろはまだ森が残っているが俺たちの目の前にあった木々は綺麗になくなりまっすぐ海までつながっている。まるで爆弾が爆発したあとみたいだ。
「これは荒川くんの力だと思います。」なんだってこれ俺がやったのか。まったく覚えてないよ。
「詳しくは俺が話すぜ。主」とさっきまで一緒にいたドラゴンの声が俺の上から聞こえてきた。
まさか俺がこいつの封印を解いてしまったからこんなことに。あんな大きな手を持っているやつだあいつが少し羽を羽ばたかせるだけでこの惨状を引き起こせそうだ。
「クレイお前がやったのか」と声のする空のほうを見たがあの巨大な龍は存在しない。
あいつどこから話しかけてきたんだよ。辺り探してみると俺の後ろからまた声がした。
「こっちだよ主」その声と同時に後ろに振り返ってみるが見当たらない。どうなってんだよと思い俺が少し俯くと俺の想像を裏切る形でドラゴンは地面に立っていた。
「えっ小さくないか」さっきの手のでかさから考えておかしいだろう。
「さっきのが俺の本来の姿なんだよ。封印の影響なのかわからないがこの姿になっちまってんだよ。」さっきの十分の一くらいの大きさだけど大丈夫かよ。
まあ今はそんなこと置いといて詳しい話を聞くほうが大事だよな。「とりあえず何が起こったのか教えてくれ」
_________________________数十分前
「ドレイクチューーーーン」と亮が言った瞬間腕の籠手が凄まじい光を放つと同時にそこからガァァァァオオンという何かの叫び声が聞こえた。
「なんじゃあれは」わらわでもこんな生き物は知らなかった。
空を飛ぶ怪物は羽で風をおこし森の木々をなぎ倒すと同時に火を軽く消して空を縦横無尽に飛び回っている。
亮があの怪物を出したのか、それなら何故亮は意識を失っている。わからないことだらけだ。
でもこれはチャンスなのではないか、やつが空を飛んで砲撃をしている船の気をそらしているうちに街に逃げ込むということもできなくないはず。でも動けない二人の人間を連れて逃げるのは無理がある。
その時海のほうでまた大きな叫び声がした。いや叫び声というよりもこれはもう咆哮だ。ドラゴンの咆哮が響くと同時にまた大きな爆発音が聞こえた。
そのあと砲撃が来ることはなく時間だけが過ぎて行った。しばらくすると木に叩きつけられていたツユハが動けるようになったのか亮の元へと近づいてきた。
ツユハは亮を自分の膝に乗せ亮に声をかけているが亮はが目を覚ます様子はない。なにもできずに時間だけが過ぎていく。
砲撃はさっきの爆発音があってからまったくこなくなりドラゴンの咆哮もさっきからまったく聞こえてこない。きっとあのドラゴンが船を沈めてしまったんだろうとということは容易に想像できる。
少しの安堵感を感じていると空からバサバサという音がしたと思ったら上から羽の生えたトカゲのような生き物が落ちてきた。
「なんじゃ貴様は」私は刀に手をかけて身構えた。それとほとんど同時にツユハが声を上げた。
荒川くん、荒川くんと。どうやら亮のやつが目を覚ましたらしい。
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なるほどあの言葉はクレイの封印を一時的に解除する合言葉みたいなものだったわけか。その代償なのか完全に籠手壊れちまったけど。
「結局これやったのおまえなのか?」と目の前の惨状をみて言った。
「久々に外に出られたのがうれしくてなついやりすぎちまったみたいだな」
ダメだこいつ。