やっぱり魔女は最恐?
おいおい、 なんだよあの羽。 俺もどうせならあんな羽欲しかったわ。俺なんてボロマントで空飛んでんのに。
「おい、そこの黒いの。 聞いてんのか。」黒いのってなんかひどくね。
「俺のことですか?」まあ俺しかいないのはわかってるけど、 一応確認で。
「お前以外にいないだろう。 よくも俺の船を沈めやがって。 絶対に許さないぞ。」沈めたのは俺じゃなくてツユハちゃんなんだけどな。 まあそんなこと言っても仕方ないから言わないけど。
「だって、そっちがこの島に攻撃を仕掛けようとしてくるから、こっちは仕方なく攻撃しただけじゃないですか。」そう、 これは完全な正当防衛だ。
すると、 彼は「俺が島を攻撃? はあ? そんなことしてねーよ」いやいや完全に戦闘モードだったよな。 とぼけるつもりかこいつ。
めんどくせーなと呆れているとまた彼が口を開いた。「俺はこの海で釣りをしてただけだ。 そしたらいきなり砂浜の方からバカデケー津波がきてそれに飲まれたんだ。それで海に投げ出されて上を見たらお前らが空を飛んでいたんだ。」というがそんなやついたかな。
まあいたとしても俺はあんな状態だったし見てるわけないか。横にいるマコと俺の相棒のドラゴンなら見ていたかもしれないが。
「なぁマコああやって言ってるけどさっきの船の軍団のほかに船なんてあったか?」うーんと少し考えてから閃いたように「そういえば、砂浜から近いところに小さい船があったような気がするな」おいおいそういうことは早く言ってくれよ。てか砂浜の近くからこんなとこまで流されて何で生きてんだよ。
どうしたもんか。これって俺たちが悪いのかな。 とりあえず謝れば許してくれんだろう。 よし。
俺は大きく息を吐いて満を持して「すいませんでした。じゃあ俺たちはこれで失礼します」よし。 完璧だ。完全に俺の誠意は伝わっただろう。俺は振り返って砂浜に向かって飛び出そうとしたら後ろから「ちょっとまてよ」やっぱダメか。
仕方なく俺が振り返ると彼が大きく拳を振り上げ俺に飛びかかってくるところだった。殴って満足ならそれでいいだろう。どうせ痛くないんだし。
俺は殴られる覚悟をして目を閉じた。バコーンというすごい音がしたが音のわりにというかまったく痛くない。
俺が目を開けると目の前にいたさっきの男の姿はなく、その代わりに目の前に未知の生物がいる。それは月夜に照らされた、 白い空飛ぶ馬だ。 しかもその上に魔女が乗っている。ペガサスってやつなのか。
俺は馬に乗っている魔女に「ツユハちゃんそれどうしたの?」と当たり前の質問をぶつけてみた。すると「これは、ケルビ―のニンジンです」と彼女は答えた。
ケルビ―っていうのはそのペガサスのような生き物の種族名なんだろうけど、ニンジンっていうのはなんだ?やっぱ馬だからニンジンが主食ってことなのかな。
「へ~そのケルビーって草食なんだね」とどうでもいいことを言ってしまった。ツユハちゃんは目をぱちぱちと数回瞬きすると笑いながら「あのですね、天城君ニンジンっていうのはこの子の名前ですよ。」
えーーこんなすごい神々しい見た目してんのに名前がニンジンって、、、、、、ツユハちゃんってやっぱ天然なのかな。
まあ名前のことは置いておいたとしてさっきのやつはどこに行ったんだ。さっきの音的にニンジンの前足に踏みつけられてそのまま海に叩き落とされたっぽいけど。
俺は恐る恐る下の方を見てみると、ちょうど俺の真下の海面がぶくぶくと泡を立てている。多分てか百パーセントあれだよな。
俺は浮き上がってくるのは待っているが中々浮かびあがってこない。おいおいまさかあいつも泳げないんじゃないのかよ。その予感は的中した。海面はブクブクと泡を立てているが当の本人は上がってこない。
とりあえず死なれたらなんか寝覚め悪いからなよし。「ツユハちゃん、魔法であいつのこと助けられないかな?」ここにきても彼女に頼ってしまう自分を情けなく思うが仕方ない。だって俺は泳げないのだから。
いつもならすぐにわかりましたと言ってくれるツユハちゃんなのだが今は違った「嫌です」と彼女は即答した。 えっ。 今までできないですと言うことはあったが嫌ですと言われたの初めてだ。 嫌ということはできるけどやりたくないということだろう。
「でも、助けないとあいつこのままじゃ死んじゃうよ?」俺は説得を試みるが答えは変わらない。そこで俺は助けたくない理由はなんなのか気になりそこを聞くことにした。すると答えは単純なようで複雑なものだった。
その理由は「だって、あの人は天城君に暴力を振ろうとしたんですよ。なんでそんな人を助けなくちゃいけないんですか?あんな人はこのまま溺れて地獄に堕ちればいいんです。」ツユハちゃんはいつものまぶしい天使のような笑顔で言った。だがツユハちゃんの周りに黒い炎が渦巻いているような気がしたが、多分気のせいだよな。
なるほど。ツユハちゃんは俺のことを心配してくれてるんだろうな。後半は聞かなかったことにするとして。えーーーーーーっユハちゃんこえーーーー。 見てはいけないツユハちゃんの一面を見てしまった気がした。
さすがにこの姿にはいつも強気なマコでさえ「ツユハはどうしてしまったのじゃ」とおれに小さな声で聞いてくるレベルだ。残念ながら俺にもわからん。
俺はツユハちゃんの圧力に押されながらもなんとか「でもツユハちゃんのおかげで俺は殴られてないし、もし殴られてもクレイの鎧で痛みを感じないから大丈夫だよ。だから助けてあげようよ」と言葉にした。
それでもツユハちゃんは「ぜ~~~ったい嫌です。暴力を振ろうとした時点で死刑です。」と力強く言った。困ったな。こうしている間にやつはどんどん海底に沈んでいくわけだし。
仕方ないか。俺は頬を自分で叩き気合を入れ「わかった。じゃあ俺が行くよ」ほんとは行きたく無いよ。だって水着でも泳げないやつが着衣のまま泳げるわけないしな。
俺が泳げないことをなんとなく察しているマコがお主泳げるのかと心配そうに聞いてきたが俺は「大丈夫だ」とだけ答え彼が沈んでいるであろう場所へ向けて急降下した。
海に入った瞬間さっきまで軽かった鎧が急に重くなり、視界も一気に暗くなった。「レイク暗くてなんも見えないぞ」重くなった鎧のせいか俺はどんどん沈んでいく。
「主、俺は炎のドラゴンなんだ。水は大の苦手だって話はしたよな。俺の鎧は防水じゃないんだ。」えっ。確かに水の魔法は無効化できないって話は聞いたけど普通の水にも弱いなんて聞いてないぞ。
やばいな。息するのもつらくなってきたぞ。俺の意識はどんどん遠のいていく。もう死ぬことを覚悟した瞬間空がまぶしく光った。
まぶしく光ったと思ったら今度は一気に暗くなった。明るくなったり暗くなったり今日は騒がしいなと思っていると急に俺の体にニュルニュルしたものが俺の体にまとわりついた。
なんだこれ。気持ち悪いな。新手の敵か、それともモンスターか。どのみち死ぬんだからどっちでもいいか。
このまま締め付けられて死ぬのかと思っていると俺の体にまとわりついていたものが一気に海上へと俺を引き上げた。
海上へ出るとニュルニュルしたものの正体を俺は知ることになった。大きな頭をもち十本の足を持つ巨大なイカのような生物がいた。
まさか、これがあの空想の生き物クラーケンか。おれ食べられるのかな。
今日二回目の死ぬ覚悟をしたときに、「天城君、大丈夫ですか」とニンジンに乗ったツユハちゃんが声をかけてくれた。
ツユハちゃんは巨大イカを見てもまったく驚く様子をみせず、俺の方に近づいてくる。まさかとは思うけどこれもツユハちゃんの魔法なのか。
「さぁ。天城君こっちに来て下さい。」とニンジンに乗るようにと言ってくれた。普通こういうのって逆だよな。男が助けた女の子を自分の馬に乗せるっていう白馬の王子様的な。
これってすごいダサいよな。女子にたすけられたあげく泳げないことも露呈してしまったし。
「いや、海中じゃなければ鎧の力で飛べるから大丈夫だよ。このイカはツユハちゃんの魔法なのか?」俺は今俺のことを握っている巨大イカのことを聞いた。
ツユハちゃんは不満そうに頬を膨らませながらも「わかりました。あとイカじゃなくてゲソ丸です。ゲソ丸天城君を離してあげて」えーまたそんな名前つけて。 伝説の生き物にニンジンとゲソ丸なんて。 名前聞いた後に顔見るとなんか愛らしく思えるから不思議だよな。
すると、 ゲソ丸の足の力が弱まり俺はまた宙に浮いた。「あはは、、 ゲソ丸かいい名前だね。えっと、、、 あっ。 そうだ、あのへんな男は助けてあげたのな?」そもそも泳げない俺が海に入ったのは炎の翼を生やした男を助けるためだったのだ。
ツユハちゃんはさっきの頬膨らませて不満そうにするというかわいい反応をすることもなく本当に不満そうな顔をして「あーあの暴力男ですね。あの人ならあそこにいます」と指を指して言った。
指さす方を見るとゲソ丸の足があの男の足に絡みついていて彼は逆さまで宙づりになっていた。やっぱりなんでかわかんないけどツユハちゃんすごい嫌いなんだろうな、彼のこと。
俺は、ははは、、、と乾いた笑いをしてから「俺のこと助けてくれてありがとうツユハちゃん。あとゲソ丸もな。」俺はツユハちゃんにお礼を言い、ゲソ丸のにゅるにゅるしている足に手を置いてゲソ丸にもお礼を言った。
ツユハちゃん天使のような笑顔でいいえ、お役に立ててよかったです。と言ってくれた。月夜に照らされた魔女の笑顔はやっぱりかわいい。
「はぁぁあ」なんかいろいろありすぎたせいなのだろう一気に眠気が襲ってきて俺は大きな欠伸を一つついた。
すると今まで黙っていたマコが「要は済んだのじゃろ。島にもどらないのか」欠伸こそしていないが目が虚ろで眠そうなだった。慣れない環境に来ているのは俺だけじゃなくマコもツユハちゃん、そしていまここにはいないが隆も同じはずだ。
それだけに一人で俺たちと違う場所に転移してしまった隆のことが気がかりだ。
しかし、今俺が考えたところでどうしようもないことも事実だ。俺は今は目の前のことだけ考えて行こうと決めて、俺は「よし、島に戻ろう。」と二人に言った。
さてとあの男は俺が抱えていくしかないか。俺はツユハちゃんにゲソ丸の拘束から彼を解いてもらい彼をわきに抱えて飛び立った。それと同時にツユハちゃんはゲソ丸にありがとうお休みというとゲソ丸は眩い光を放って海底に消えて行った。
マコはどうやらほんとに眠いらしく気が付いたらツユハちゃんの後ろに座っていた。
とりあえずまた生き残れてよかったと俺は島に戻りながら思った。島の砂浜に着くと俺は体力の限界だったのか俺は倒れこむようにして砂浜で寝てしまった。
まさかおきたらあんなことになっているなんて思わなかったが。