新たな敵
うわーたけーよ。超こえー。俺は今空を飛んでいる。決して頭がおかしくなったわけではなくほんとに空を飛んでいるわけだ。
俺は子供のころから高いところが大嫌いで中学、高校の行事で遊園地に行く機会があったが一度も絶叫マシーン類のものは乗らないように生きてきた。なのにいきなり絶叫マシーンを通り越していきなり空中だぞ。ありえない。
もちろん、命綱もなければ安全レバーもない。ほんとに自分の身一つで空を飛んでいる。すぐ横を飛んでいるマコも飛ぶのは初めてなのだろうが俺と違ってとても楽しそうにしている。無邪気な子供が羨ましいよ。
「だいじょぶか?マコ」大丈夫じゃないのなのはどう見ても俺のほうなのだが飛ぶ作戦を立てた俺がびくびくしているのどうも恰好がつかないので俺はこうして余裕を装って聞いているわけだ。
でも、俺がこの高さにビビッているのが手に取るようにわかるのだろマコが意地の悪い笑みを浮かべ「きさま高いところが苦手なのか?」と聞いてきた。こいつから見てもそう見えるってことはだれが見てもそうなんだろう。それでも俺はビビッていないように装い、「そ、そんなことはにゃい」
あーやっちまった。動揺を隠しきれずに噛んじゃったよ、、、、、。
「うそをつくのが下手なやつじゃな」空飛びながら冗談なんていえるかよ。落ちたら海だぞ、夜の海には危険がいっぱいなんだぞ。てか俺昼の海でも怖いけどな。だって俺泳げないし。
「嘘じゃないぞ。そんなことより早くいくぞ」早くいくぞと言った割に俺はなかなか前に進めていないのが現状だ。
するとマコはまた意地の悪い笑みを浮かべ「そんなに怖いならわらわの手でも握るか?ほれ」と手をこちらに伸ばしてくる。
なんか中学生に馬鹿にされている気がしてなんか微妙な気分だが、確か実年齢は俺の倍生きているおばさんなのだからここは少し頼ってみるかという考えに至り俺はマコの手を握った。
マコの手は見た目どおり小さかったが温かく少し高さへの恐怖が無くなったような気がした。
「どうした?マコ?」手を握られたマコはプルプルと震え顔も真っ赤だ。なんかあんまいい予感がしないな、あの刀を突き付けられた時もこんな感じだったもんな。
「きさま、な、なにをする」と言って手を振り払い、俺の腹を思いっきり殴った。いてーよ。普通に。戦う前からダメージ負ったわ。てかこの鎧物理攻撃聞かないんじゃないのかよ。「主、残念ながら俺の鎧は敵意のある攻撃しか無効化できないんだ。」クレイが俺の疑問にすぐさま答える。
敵意のない攻撃なんて存在しないだろう。
「お前が手を握れって言うから握ったんだろ。」マコは俺の方を指さしながら「き、きさま、あんなの冗談に決まってるだろ。そんなこともわからないのかバーカー。」なんかキャラ若干おかしいけどそこ触れるとまた鉄拳制裁食らいそうだからやめとこ。
「なんだよ。紛らわしい嘘つくなよな。」はぁ~なんか手話したらまた怖くなったきたな。
マコはまたプルプル震えながら「亮は手を握りたいのか?」と上目使いで目をうるうるさせながら聞いてくる。てか俺こいつに初めて名前を呼ばれた気がするな。今まで貴様か人間だったよな。しかもキャラおかしいっていうか崩壊してない。ちょっとかわいいけど。
俺が返事に困っていると続けて「きさまが握りたいのなら仕方がないから今日だけ特別に許してやらんこともないぞ」うーんこれも拒否したら鉄拳制裁かな。
これ以上ダメージを負うのは極力避けたいし仕方ないか。「マコさまお願いします。」と俺はマコに手を差し出すとマコは仕方のないやつじゃなーこれだから人間はと言っているが鉄拳制裁はなく、俺の手をとり「では行くぞ亮」と笑って言った。
それから俺はマコの手に引かれて前へ進んでいった。しばらくするとさっきまであんな遠くにあった船が結構近くに来ていた。
「おい、どうするんだ?もう結構近くまで来てるけど。」もう完全に立場が逆転している。俺がマコに指示を仰ぐようになっている。
「もう、すこし高く飛べば船からは見えないんじゃないのか?」確かに一理あるけどこれ以上高く飛ぶなんて考えられない。すでにマンション六階くらいの高さにいるんだけど。
「雲の上まで行けば大丈夫だろ」とマコは意地悪そうな笑みを浮かべて俺に言う。
「いや、そこまで行ったら船が見えないじゃないか?だから高度はこのままにしよう」これ以上の高さはさすがに無理だよ。
「でもそれでは敵の船の恰好の的じゃぞ。」そうなんだけどこれ以上高いのは絶対ダメ。うん。
俺たちがそんな話をしていると船の方からカーンカーンという鐘のような音が聞こえてくる。まさかこれはよくある「敵襲だ―」ってやつか、てことは俺たちばれたのか?
「おい、マコ俺たち敵に見つかったみたいだぞ。逃げるか?」とマコに聞くとマコは俺たちがいた砂浜の方を見て「わらわたちではない。あれじゃ」と言って砂浜の方を指をさして言った。
あれってどれだよ。俺はマコが指さす方を見ているがそこにあるのは真っ暗な海だけ。おれの目には砂浜すら見えない。ツユハちゃん大丈夫かな。
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そろそろかな。私は真っ暗な地平線を見ながら天城君の言っていたことを思い出す。「俺たちが空を飛んで敵の船に近づいたらツユハちゃんは水流魔法を使って敵の船を攪乱してくれ。」姿は夜の暗さにまぎれて見えないけど多分もう近くに行ってる気がする。
私がしっかりサポートしないと。せっかく頼りにしてくれてるんだし。
えーっと水を操る水流魔法、呪文は「ウォーターウェーブ」あと役に立てそうなのは、召喚魔法かな。
よしとりあえずガンバろ。「ウォーターウェーブ」後は「私の願いに答えて姿を表せ_____________ケルビー」
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「どうしたんだよ」マコにはなにか見えているようだが俺には何が起きているのか全く分からない。しかしマコが焦っているような様子だということはなんとなくわかった。
「ここにいてはダメじゃ」というとマコは俺の手を引いて一気に上昇を始めた。おいおい勘弁してくれよ。やべーたけーチビりそう。
マコは俺に気を使ったくれたのかそれともこの高さまでくればなにかわからないものからの攻撃に耐えることができると考えたのか雲の上まで行くことはなかった。それでもかなり高い。さっきの例えを再利用するならマンションの三十階くらいの高さまで一気に上がってきたのだ。
「いったい何が起こったんだよ。」俺はマコの手を強く握りながら聞いた。
「下を見ていればわかる」とだけ答える。下なんて見たら死ぬぞ。しかも暗くてよく見えないぞ。「そんなに下が見たいなら見えるようにしてやるよ。主」いや、別に見たくないんだけど。主の気持ちくらい察しろよ。このくそドラゴンが。
クレイの声が聞こえたすぐ後に急に視界がクリアになった。星が綺麗だな。下は見ないぞ。「どうだ主。これがドラゴンの目だ。夜でもよく見えるだろう。」すごい力なんだろうけど今の俺には必要のない力だ。
ゴォォォォォォ。うん?なんの音だ。なにかすごい音が下から聞こえてくる。敵の砲撃かと思ったがその音は徐々に近づいてくる。
「あれじゃ」とマコが指を指すので俺は仕方なく下の方を見た。すると砂浜のほうから大きな山のようなものが轟音をたてて近づいてきている。
あれはなんだ。海の上に山なんてあるわけないし。あれは津波か?でも津波なら砂浜から来ることはないだろう。そこで俺はある結論にたどり着く。てかこういう異常なことが起きるときは大概魔法だろう。魔法ということはほぼ間違いなくツユハちゃんだろう。
その津波はすごい勢いで敵の船を飲み込んでいった。さっき俺たちがいた場所を飛んでいたら確実に波にのまれていただろう。マコの隠れたファインプレーだった。
てか俺ツユハちゃんにサポートを頼んだんだけど一人で完全にすべて終わらしちゃったし。いいとこ見せようと思ってたんだけどなー。
津波はそのまままっすぐに進んでいき見えなくなった。さっきまで船があった場所は静かになっていた。
そりゃあんな攻撃されたら逃げようないもんな。「マコ、砂浜に戻ろう。」やっと戻れるよ。陸に。
俺はまたマコに手を引かれるようにして少しづつ砂浜に向かっていく。
あともうすこしで砂浜というところで後ろから「まて、貴様ら。よ、よくも俺の船を沈めやがったな。」後ろからこえ?ここは海の上だぞ。
俺とマコが声のする方に振り返るがそこには誰もいない。「どこを見ている。俺は上だぞ」
上?と思ったが何も考えずに上を見た。上を見ると空は星が綺麗にきらめいている。そして月の方を見るとそこに一人の人間が仁王立ちしている。うん?浮いてるから仁王飛び?
月の灯りに照らされその人間が男であること、そして背中からゆらゆら燃えている真っ赤な羽が生えている。
味方じゃないよな。絶対。