Ⅲ.終幕!
夜、魔王の寝室にて。
「……」
ベッドの上には図書館で受け取った「魔人オラゴンの書」が置いてあった。
彼は厚手の表紙に手をかける。
「……」
ここに至り、少年は二つの決意をしていた。一つは、アスモデウスとの戦いの際にも触れた、サタンにメイド達を傷付けさせないということこと。そして、もう一つは。
「……」
彼はその最初のページをゆっくりと開く。そこに連なる文字からは魔力があふれ、不思議と表わされる意味を感じとることができた。
「……」
魔力の仕組み、魔力の使い方。文字はそんな情報の集合体で。
「……」
彼は読み進める。
そう、彼の決意のもう一つとは。
「これで少しでも強くなるんだ」
それは自分自身が強くなること。他の存在の手を借りず、戦える武器を持つこと。例え、魔力が切れた状態でも、何か対抗手段を持つこと。
「ようし、やるぞお!」
強い意志を放つ声。
彼は今成長しようとしていた。急激に。急速に。大事なものを守るために。二度と失わないために。
深夜、宝物庫にて。
「……」
ミアはキントから預かった魔界の秘宝を納めていて。
そして、そこにはもう一つの影。それは金色の麗しい長髪を足元まで流し、瞳は滴る血液のように紅々と。
「メイド長よ。〝タマゴの出来〟はどうじゃ?」
少女は訊ねた。
「順調です」
それにいつものように落ち着いた声で答えるミア。次いで彼女はそのまま、宝物庫を出ていくために踵を返す。
その背後で。
「ふふふ。この暗く悪趣味な余興、制するのはいったい誰なのじゃろうな?」
ゲィーミットは闇を抱きながら、愉快そうに笑っていた。
(了)




