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詩群/視点と惑星

深緑のコート


プリズムとか何を言っているのか、コロイドとか何を言っているのか。蟹の専門家の研究課題とか、弾力する均衡状態だとか、きみのコートをみつめるぼくには、到底関係ないことだ。

深緑のきみのコートはきみの部屋のコート掛けにかかっている。その姿をぼくは見たことがないが、鮮明に想像できる。きみのコートは襟のところが丸まっていて、ちょっとかわいい。他のところはシンプルで、そのままいくらでもコピ―ペーストできるようなきっとどこにでもあるようなものだけれど、きっとどこにでもない。きみのコートはコート掛けにその丸い襟のところを引っ掛けられて、首を吊られたように縦にしわをつけながら無造作に伸びている。その深緑は薄暗い部屋の中でより深さを増して、夜の森のようにどこまでも暗くて、梟が覗いているような、目を凝らせば何かが潜んでいるような、そんな色になっているのだ。

きみはどこにいるのだろう。


天体の話を始めるような、まとまったことをいうのがぼくらというものだ。機械ではないから、ひとを好きになる。スカしたことを言って、愛だとか、恋だとかくだらねえぜ、くたばっちゃえよ、というのは簡単で、きっと理解もされやすいのだろうけれど、結局は子どものいうことなのさ、わかっちゃないよ。クロムウェルはどういうことを思ったのか、そんなのきみたちに押し付けられるなんてのはきっと彼だって迷惑だ。たとえ日記やなにかが見つかったって、それが全部だなんて思うのはむしろ信頼しすぎだろう。支離を滅裂にしたって、罰が当たるわけではないし、言葉尻を捕まえて批判をするのは子供っぽいと思うんです、子どもはいいと思うけれど、大人は悪いと思うけれど、悪い子供はいるわけで、悪い大人はいるわけで、本当に悪くない子供は、きっと生まれてこない子供。






さあ、愛を語ろうか。

ウィスキー片手に煙草くわえてお洒落なバーで星を見下ろして、医学の進歩が愛の進歩を、ぼくらの生きるかぎり愛は広がって、おそらくきみを問うものは、良心とか言葉とか、思想なんてえおべんちゃら、愛に照らせばほりゃららが、きっと全てをぼかしていくけど、それでいいんじゃないかとも、きっと言ってくれるのさ。死んでしまうまでできるだけ怒られたくない。愛とか探して生きていたい。本当に愛されるのは、きっと生きていない大人。



名前さえ知らないきみが、交差点にきえていく。そんなことを繰り返して、いくつもいくつも答えを出さない。到底関係ないことに、消えていくものがある。

深緑のコート。


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