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CONTRAST CONTEXT  作者: WAIWAI通信
第一楽章 - The same blue -
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第六小節 Second

「……また行くのか? もう少し間を開けても良いんじゃないのか?」

 正直言って面倒だ。俺は殺戮(さつりく)者では無いのだから、剣を振り回すのは楽しくても生を斬るのはあまり楽しくない。全部が全部討伐やら撃退系の依頼ではないが、約7割はそんな部類のものなのだ。大抵の事は専門の業者に頼めばそれで済むし、いくら安いからといってわざわざここに頼む人間はそう多くない。

「年間10の依頼を片付けないと駄目なんだぞ。ちゃっちゃっとやっといた方が楽だって」

 初陣から9日が経過した。帰宅から数えると丁度1週間。

 その初陣、と言うのはこれが中々(むご)い結果で。まあ、成功ではあるのだが、にしてもどうしてらしくない事をしてしまった。言うなれば大量斬殺。俺はこの前、とある農家の依頼で、その天敵と言っても過言では無いだろう猪をかなり殺した。いくら人で無いからと、流石にあれだけ血飛沫(ちしぶき)を見れば気も滅入る。

「あと7ヶ月もあるだろ? そんなに急がなくてもいいじゃないか」

 戦闘課に属する者には、先程響が言ったのだが1年間に10の依頼の達成が課せられる。正しく言えば11ヶ月なのだが、そんなことはどうでもいい。

「もし10回やらなかったら学園全体の掃除させられちまうんだぜ? 恐ろしいだろ?」

「だからまだ7ヶ月もあるじゃないか」

 分かってないなあ、と言わんばかりの素振りを目の前の少年がとる。

「そう言ってるうちに1年が経っちまうんだよ。現に俺も後9回残ってる」

「ああなるほど。仕方ない、やるか」

 クエストカウンター……、ではなくて無機質なタッチパネルを数度タッチする。洗練されたデザインの図形と文字達はされるままに動き、やがて依頼一覧表が現れた。列挙された依頼達の中に1つ目を引くものがあったので、俺はとりあえずタッチしてみる。

「何だこりゃ。これに行きたいのか?」

 少年響はそう言った。


 [目的]豪雨の原因調査、及び制止

 [掲載日時]2015/8/14 14:39[推定難易度]D[重要度]C

 [目的地]日本国水藤(みとう)県(詳細は承諾(しょうだく)後に提示)

 [推奨人数]2名[褒章額目安]20万円程度

 [本文]大変なのじゃ。龍神様がお怒りになられた。このままでは村が流されてしまうのじゃ。どうか助けてもらえんじゃろうか。


 気が狂っていると思われても仕方のない文面であった。しかし重要度は低くはない。ちなみにこの重要度と、ついでに難易度だが、これは学園側のなんとか委員が勝手に推測したもので、SSSからFまでの全10段階がある。最も、AA以上なんてほとんど見かけないから実質Aが最高と見ても良い。そうなればCというのはそんなに低くないのである。まあ、決して高くもないけれど。

「おーい、雪よ。ちょっと来てくれないか」

「何よ、今ちょっとゲームが忙しいんだけど」

 ひたすらコスに針を通し続ける天音(あまね)美空(みそら)先輩の横でガチャガチャとボタンを押し込んでいる。彼女が今やっているのは『モンスターバスター4th』というゲームで、これは俺が元居た世界で一時期ハマっていたものと酷似していた。製品名を出すと不味いかもしれないので、一応それについては伏せておこうと思う。

「それ一時停止出来るだろ。すぐ終わるからちょっとこっちに来てくれよ。何ならゲームやりながらでいいからさ」

「分かったわよ。どうでもいい事だったら承知しないんだから」

 ゲームを一時停止する事の一体どこに、ここまで言わせる力があるのだろうか。いや、一時停止すら彼女はしなかったが。

「これをどう思う? 例のアレだと思うか?」

 この依頼に目を引かれたのは即ち"龍"という文字のせいである。あの時神は言っていた。龍は俺達の考えるそれと同じだ、と。ならばこういう龍神、とか言った伝承風の物も目標と捉えて問題は無いはずだろう。

「そうね……。行ってみる価値はある……、かも。どうする?」

 俺達2人は散々龍とかドラゴンについて調べたのだが、出てくるのは六龍とは近しくて程遠い黒龍ばかり。黒龍というのはトカゲに翼が生えたいわゆるアメリカ風の龍で、身体は黒く、世界生態系調査機関に特S級の危険生物と定められた、要するに化物だ。単体で町1つ破壊する能力があり、もちろん銃、剣、もろもろ人間が扱える多くの武装は役に立たない。奴らは滑空という形で一応飛行もする。そもそもが重いわけなのだから余り遠くへは飛べないが。まあ、いずれにせよ俺達は奴らに用は無いし、関わる理由も同じく無い。単刀直入に言えば、俺達にとって奴らはどうでもいい存在なのだ。

「何の話をしているのだ? 依頼を受けるなら是非私も混ぜて欲しい」

 流花が横から声を掛けてきた。暇なのだろう。

「じゃあ行くか。この4人でいいよな?」

 答えは要らない。淡々(たんたん)と画面を叩き、サクッと依頼を承諾する。

「ちょっと裕城、今の何よ」

「普通に依頼を受けただけだが」

 ムスッとした顔で雪は何か言いたげである。

「よし、そうとなったら準備だろ? 何持ってくのさ」

「そうせかせかするなって。どうせ出発は明日の朝なんだからな」

 遠足のお菓子でも選ぶのかと思わせるようなノリだが、響が言っているのは携行する武装の話である。やれやれ、全く物騒な。

「そうね……、とりあえず対戦車ライフル辺りは必要よね。ロケットランチャーも要請しとく?」

 対戦車ライフルもロケットランチャーもとりあえずと言って出すものではないだろう……。しかしもしこの期待通りに事が運んだなら、それでも足りないという現実が待っているのもまた確かな事だ。効かない物を持って行っても重いだけなのは明白。

「どちらに転じてもただの重荷にしかならないから必要ないと思うんだが」

「でも1発撃ってみたいじゃない、対戦車ライフル」

 全く自分に素直なやつだな、と思った。実は俺もちょっと撃ってみたかったりする。

「銃器というのはそんなに良い物なのか? 私は2、3度しか使った事が無いんだが」

「一・本・槍って名前通り槍・一・筋だからな、こいつは」

 上手い事を言っているだろう、と言わんばかりの顔で柊響が述べる。

 確かに一と槍は合っているが、筋は出てきていないだろう? というかお前が語るな。

「ふむ。まあ対物ライフルぐらいは持って行くか」

「お、運搬よっろしくう」

 はいはい、と軽く返事をして、タッチパネルに向き合う。

「何だ? 響よ、この要認可武装って」

 機器・武装支給要請という項目から銃器、大型、対戦車ライフルと辿って行った先にもう1つ分岐が現れた。それは通常武装という項目と、もう一つは要認可武装で、後者が気になる。

「ああそれか。それは学園から使用許可が下りないと使えない武器だ」

 見てみるだけならバチは当たるまいと赤文字で表記されている方の項目に触れる。その先に掲載されていたのはたった2つで、その内1つは明らかに今回の依頼には不向きであった。

「なるほど。何々……、取り扱い危険、水属性又は土属性魔法による補助が必要。試験内容…………。これ使ったことあるか?」

 試験内容は反動の相殺。制度の高い魔法による物体操作が必要という事だそうだ。風属性しか使えない俺は、まず試験を受ける資格すら無いらしい。

「無いな。試験なんて物を受けた事が無い。学校のテストも含めて」

 お前どうやって進級したんだよ……。

「だ、そうだが雪、どうするんだ? これにするか? それとも普通の奴にするか?」

 いつにもなく真剣な眼差しで鮮明な輝きを放つモニターを凝視している少女に問う。このモニターと言うのがゲーム機のモニターで無ければ良かったのだが。

「愚問ね。決まってるじゃない」

 せめて一度画面を見るくらいはして欲しいが、まあ雪が良いと言ったのだから良いだろう。

「んじゃあ受験申請しとくぞ。所要時間は10分程度だとさ」

 ボス戦だと言っていたが、この集中力を何か別の事に使おうとは思わないのだろうか。

「了解了解。もうすぐ終わりそうだからちょっと待って」

 無言で流花は雪のゲーム画面をかな~り遠くから眺めている。構図的にはちょっと面白い。

「流花もやるか?」

「いや、いいよ。少し興味があるだけだ」

 このモンバスは現在4thWまで発売されている。とりあえず俺達は人気作である3rdGから入った。それが終わって今はその次回作であり、最新版の1つ前の作品である4thをやっているというわけだ。そして雪は圧倒的なプレイ速度でそれすらもクリア目前まで来ている。

「まあそう言わず今度皆で買いに行かないか? やってみたら楽しいと思うぞ」

 黒髪の少女は少し考え込み、やがてこくりと頷いた。

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