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箱庭で異彩を放つ花 ローズ・レクチャー伝  作者: undervermillion
第1部 第1章 こども時代
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第 6話 魔法の初歩について教わった。

「魔法の定義については、知っているわよね」

「魔素を用いて、事象を改変させる行為の事ですね」

「そのとおり」

ローズとセリエは草原のなかにいた。


「まあ、知識が十分に有るようなので問題なさそうね」

「私の身につけた知識が、正しいのかどうか、確証が持てません。

ぜひご教授願います」

「話す内容が論理的に問題が無いだけに反論しづらいのだが……」

セリエは目の前の子どもを眺める。

どうみても、8歳程度だ。

目の前にいる子どもの外見が信じられなくなる。


「話し方がお気に召さないようですね。

あまり、慣れない口調なので、気が進みませんが。

せんせい。おねがいします」

ローズは突然、口調を見た目に合わせた内容に変えるとともに、ひょこりと頭を下げた。

「か、かわいい」

セリエが思わず口を滑らせると、

「だから、いやだったのに」

ローズは口をとがらせる。

「反則よ、それは」

セリエは思わずローズを抱きしめる。


が、一瞬で体をローズから離れる。

「教えていただけないようですので、口調を戻させて頂きます」

ローズは一礼するが、先ほどのお辞儀とは異なり、あくまでも業務上の礼節であった。


「教えるから、ちゃんと教えるから」

「お礼は、教えてもらってからにします」

「仕方ないわね」


「魔法の定義については理解しているようだが、魔素により事象を改変させるためには、どうすればいいか知っているの」

「改変式、通称サークルの生成ですね?」

「そのとおりだ」

「実際に生成したところを見たことがありません」


この村には、魔法を使える者がいなかった。

というよりも、魔法についての教育を受けることができる教育機関が限られているからだ。

この国には、国内の主要都市に一つずつ魔法学園が設置されている。


基本的な魔法について、中等部で学習することでようやく、魔法の基本と初等魔法を使用することが出来るのだ。

魔法学園に入学するためには、多額の資金が必要であるため、少なくともこの国での魔法使用率は少ない。

「そうよね。

では、教えてあげる」



目の前に、金色に光る三重の円とその中に二つの三角形が円に接した大きさで入っている。

日本では「ペンタグラム」「六芒星」と呼ばれている形状だ。

無論私は、こちらの世界では、別の言葉でこの形状を表現することを知っている。

しかしながら、人名や地名を除いて、こちらの世界での名称を用いる理由を私は見いだすことが出来ない。


「サークルと呼ばれる理由は、改変式の形状による」

セリエは説明を続けた。

「通常は、このサークルを見ることが出来ないけど、二つの方法で目視が可能となるわ」

「一つめが、表示魔法ですね」

ローズが答える。

「そのとおり。

この魔法は、純粋に表示のみを行う最低限の改変式で構成されている」


「頭の中で、構成する改変式をイメージし、体内の魔素を用いて改変式を具現化する。

具現化した改変式に魔素が満ちることで、改変式が発動し、魔法が行使されるのだ」


「もう一つは、探知魔法よ」

「目が」

ローズは、セリエの目を見ると、サークルと同様に金色に輝いていた。


「相手がどのような魔法を使用するのかがわかれば当然、対応しやすくなるわね」

ローズは頷く。

「とはいえ、今現在魔法使いを相手にすることはできないけどね」

「そうですね。ですので私が知りたいことは魔法の習得する方法と、魔力の底上げ方法ですね」

「魔法を習得する方法については、キチンとした指導者で修行するしかないわね」

「教えてはもらえないのですね?」

ローズは残念そうに答える。


「そうね。

相手にするのは楽しそうだけど、本来の目的があるからね。

先生(笑)が来るまでは暇なのだけど」


「魔力の引き上げ方法なら、教えるのは簡単ね」

「それでしたら、ぜひ」

「一番簡単な方法は、日頃から魔力を行使する事ね。

一番簡単な改変式を教えるから、毎日使いなさい」

「お願いします」


「まずは、改変式の作り方を教えるわね。

これが出来たら、とりあえず魔法は使えるようになるわ」

セリエはローズの右手を握る。

「あなたの魔力を消費して、改変式を生成するわね」

やがて目の前に、最初に起動した改変式が現れた。

「今、改変式を発動したとき、頭の中に改変式と同じイメージが思い浮かんだ?」

ローズは頷いた。

「ならば、魔法を使用できる素質は有るようね」

ローズは笑顔を見せた。

セリエは思わずローズを抱きしめようとしたが、ローズがいつもの表情に戻ったので、慌てて話を続ける。

「そ、そうね。

さっきの感覚を思い出しながら頭の中で改変式を思い浮かべてみて」

セリエは、ローズの手を離すと、改変式の生成を促した。

再び、先ほどと同様の改変式が現れた。

「……。

すごいわね。

一度で、ここまで再現できるなんて」

セリエは感嘆の声を上げる。

「本当は使えたとか、言わないでよ」

「そんなことはありません」

ローズは、即座に否定する。

言葉を発するとすぐに、改変式は消失した。


「あとは、集中しなくても使用できるように努力してね」

「……。わかりました」

ローズは頷いた。


「まあ、実際には呪文によって発動できるように、頭の中に改変式を仕込んでおくのが一般的なのだけど。

魔法の構造をキチンと把握するためには、基礎を積むのが一番ね」

セリエは、訓練の続きを説明する。


「そして、魔力がついたら、改変式を大きくすると良いわ」

セリエは、先ほどの改変式と比べて直径が2倍の大きさの改変式を生成する。

「これくらいの大きさなら、本来は大気中の魔素を利用する改変式を組み込むほうが良いけど、練習だからね」

そう言って、改変式を消し去った。

「2倍になると、約8倍の魔力を消費するわね」

「直径が2倍なら、面積が4倍になるので、魔力消費は4倍になるのでは?」

ローズが指摘する。

「確かに、面積は4倍になるけど、伝導効率がだいたい半分になるので、8倍になるのよ」

「失礼しました」

ローズは素直に謝った。

「疑問に感じることはいいことよ」

セリエは機嫌良く答えると、

「じゃあ、今日の講義はここまでね」


「せんせい、ありがとうございました」

ローズは、ひょっこりと頭をさげる。

ローズは、セリエの願いを忘れていなかったようだ。

「だめ、かわいすぎる」

セリエはローズを後ろから抱きしめた。

「暑苦しいのですが」

「……。かわいくない奴だ」

セリエは、ローズから離れた。


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