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箱庭で異彩を放つ花 ローズ・レクチャー伝  作者: undervermillion
第1部 第1章 こども時代
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第 4話 目の前の存在が子どもとは、とても信じることができなかった。

「失礼ですが、セリエ様は冒険者ですか」

「ああ、そうだ」

少女は質問に答えると、子どもに視線を移す。

「君は何歳だ?」

「申し訳ありません」

子どもは先ほどよりも深く頭を下げると弁解する。

「とりあえず、8歳ということにしておりますが、正確なところはわかりません」

「ローズは、ここに来るまでの事を覚えていないのだよ」

村長は簡単に一年前の事を説明する。



「なるほどな」

セリエが話を聞き終わると頷いた。

「ローズよ」

「なんでございましょうか」

ローズは直立不動のままで、セリエの話をきいていた。

「どうして、私が冒険者だと思った」

「お一人で来られたからです」

ローズは即答した。


セリエは、意地の悪い笑顔で質問する。

「詳しい説明をしてもらっていいかい」

「少しばかりお時間をいただいてよろしいでしょうか」

ローズは、村長に了解を求めた。

村長は面白そうに許可をあたえる。

「ありがとうございます」


「この村の周辺には、モンスターが出現します。

ここ以外でも、同じように出現するとも伺ったことが有りますが。

通常であれば、十人以上で移動するところを、お一人でここまで来られたことを考えましたら、かなり腕の立つ冒険者であるとしか考えることができません」


「面白い、子どもだね」

セリエはつぶやくと、ローズに質問する。

「他の人たちが、別のところに行くとは考えないのかな」

「考えませんでした。

先ほどまで、道具屋の手伝いをしていたところ、ご主人様から呼び出しを受けました。

大勢で来られたら、道具屋が忙しくなることを、ご主人様は承知しております。

にもかかわらず、私を呼び出すのですから、少なくとも全員がご主人様のもとへ訪ねられたと考えました。

あとは、念のため村の子どもにお願いして、門番の人から確認をとりましたが」


「本当に、面白い子どもだね。

というよりも、本当に子どもなのかい」

セリエの目は笑ってはいなかった。

「よくわかりません。

この村に来るまでの私は何者であったか、いまだにわかりませんから。

ただ、今はローズ・レクチャーであると自信を持って言えます」


「そうか、済まなかったな」

「セリエ様、お気遣いは無用です。

同じ事を、ご主人様からも言われますから」

「……。そうだな」

村長は笑っていた。


「ところで、村長よ」

「なんだい、セリエ」

「頼みが有るのだが」

「先生(笑)が来るまで泊めさせてくれ、というのなら構わない。

いつものことだ」

私がこの村に来るのが遅れるのは、いつもの事ではない。

私がこの村を訪れるのはまだ、4回目なのだから。

「いつものことなのか。

まあ、先生(笑)の事ならば納得できる。

感謝する。

だが、私の頼みは別にある」

少女は、そばにいる子どもに視線を移す。

「興味を持ったので、しばらく預からせて欲しい」

村長は驚きの声を上げる。

「何だと!」

だが、すぐに表情を笑顔にすると

「そうか、そうか」

村長は1人納得の声を出す。

「ローズ、セリエの相手をして欲しい」

「……、かしこまりました」

ローズは、セリエと村長を交互に見ながら話を続ける。

「ただ、女性には慣れておりませんので、お気に召すかわかりませんが」


「……」

「……」

村長とセリエはしばらく無言で、ローズを凝視すると、お互いの顔を眺めている。

「村長よ、貴様にそんな趣味があったとは知らなかった。

いや、別に人に迷惑をかけないのであれば、双方合意の上であれば、問題はないが。

ただ、できれば、知りたくない話だったな」

「セリエ、何か勘違いをしていないか。

俺は、子どもをもてあそぶような趣味などない」

「知られたからといって、無理に否定しなくても構わないぞ。

村長とのつきあいを変えるつもりはない」

「勘違いするなと、いっている。

ローズとは、そんな関係ではない!

ローズ、お前からも何か言ってくれ」

村長は、怒りを抑えながら、ローズに話をうながす。


「誤解を招くような表現をしたのであれば、謝ります。

申し訳ございません。

誤解をまねいたのは、女性には慣れておりませんという言葉だったと思います。

私が申し上げたかったことは、この村にはセリエ様のような年齢の女性がおられないので、失礼な事を言ってしまうのではないかと、思ったからであります」


ローズの言葉に、言い合いをしていた2人は急に押し黙った。

「村長よ。

この子どもに、私の事を話したのか。

だから、私が冒険者であることを知っていたのではないか」

「それはない」

村長は即座に否定する。

「知っていたら、今のような失礼な事を言うはずがない。

だいたい、セリエが訪れたのは、今回が初めてだ」


「……。そうだな。

ああ、そうだな」

セリエは村長の指摘に納得する。

「セリエ様。

申し上げございません。気にさわるような事を言ってしまったようで」

子どもは深く頭をさげる。

「ローズよ、気にすることはない。

むしろ、興味がわいた。

しばらく私の話相手になってくれないか」

セリエは、ローズの目の前に右手を差し出す。

「かしこまりました、セリエ様」

ローズは、頭を下げながら、セリエの右手をしっかりと握りしめた。


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