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箱庭で異彩を放つ花 ローズ・レクチャー伝  作者: undervermillion
第1部 第1章 こども時代
2/22

第 1話 ルナスと呼ばれる世界には、魔法が存在していた。

この話は、本文にもあるとおり、作品世界の背景です。

それほど長くは有りませんが飛ばしてもらってもかまいません。

この本を手にしている読者であれば、「カオスコールド事件」に関心を持っているだろうと考えている。

そのため、この事件が発生した舞台となった世界の背景についても、ほとんどの読者はご存じだと思う。


これからの文章はルナス世界を知らない読者や確認しておきたい読者以外は、読み飛ばしてもらって構わない。

特に、魔法学園中等部で「歴史」の講義をしっかり受けているならば、間違いなく不必要だろう。




この世界ルナスは、地球と異なるところに存在する。

この世界は、創造神ルナスが7日かけて作り出したと伝えられている。

ここら辺の話は、名前こそ違うが、地球の各地で伝えられている神話とあまり変わりない。

地球と大きく変わるのは、魔法の存在であった。


ルナスの世界では、魔法という存在が当たり前に使用されていた。

神が、世界を創造し、事象を改変するために用いた技であると。

その技は、人間にも伝承され、使用されていたが、やがて問題が発生する。


魔法使用者の、俗に言う「凶暴化」である。

魔法とは、事象を改変するために世界に存在する「魔素」を操作することで、事象を改変する。


その代償として、脳内神経に魔素の素粒子(原子を構成する素粒子とは異なる)通称「残骸」が蓄積することで脳に異常が発生する。

これが、「凶暴化」の原因である。


創造神は世界の枠外にいたため、魔素の影響を受けることは無かったと考えられているが、この世界に生じる人々にとっては、無視できない問題であった。

人間が使用する魔法が強大化するにつれ、戦乱が発生し、人類自体が絶望の危機を迎えた。

それを防いだのは、神の力であった。


神が行使した魔法「概念魔法」で、世界のシステムを改変したのである。

「概念魔法」により改変したのは、魔法の発動による残骸についてであった。

魔法行使後に残った残骸は、世界に拡散していった。

拡散した残骸は、地中に沈んでやがて元の魔素に戻っていく。

この概念魔法の行使以降、人類は絶望の淵からよみがえった。

しかし、神の存在は、この概念魔法「浄化」を境にして、歴史から姿を消すことになる。



概念魔法により、世界が平穏化するとともに、魔法は新たな時代を迎える。

制限無く使用することが可能となった魔法により、文明がかつて無いほど発展していった。

その一方で、人類に対して新たな脅威が産み出されていった。

魔物の発生である。


魔物の存在が最初に確認されたのは、概念魔法により、人類の凶暴化が収まってから約100年が経過した頃であった。

中央大陸の最北部、溶けない雪で一年中覆われた地域から発見されたときは、始めから存在したと考えられていた。


しかし、やがて大陸各地に様々な魔物が登場することで、現実は異なったことが知られたとき、対魔物対策の魔法の研究が始まった。

研究の結果明らかになったのは、魔法の使用により地中に蓄積された残骸が魔素への還元に追いつく前に生物に摂取されたことで、魔物に変異したことが明らかになった。


多くの国々は、魔物を撃退することで問題は解決すると考えて、次々と攻撃魔法を開発しては魔物を退治していった。

なんとか、人類の生存圏を大陸内に確保したとき、新たな脅威が誕生した。

魔を統べる存在が、魔王の誕生である。



魔王が誕生した経過は、はっきりと知られている。

大陸北部の港湾都市モルスクで、魔法研究を行っていた女性がいた。

名前をアルヴァ・ウルクルターゼと呼ばれていた。


アルヴァは、他の魔法研究者達が、モンスターを退治するための方法論を研究していたのとは異なり、魔物の研究を中心に行っていた。

アルヴァの研究の結果、魔物は、概念魔法が発動される前の人類と同様に、脳内に魔素の残骸が集積されており、これが「概念魔法」が発動された証拠になった。

アルヴァはさらに研究を進め、どのようにして魔素の残骸が集まるのか、これらの魔物がどのような行動を行うのか、そして魔物を操ることが出来ないかという研究を進めていった。


アルヴァは、後に「暗黒魔法」と呼ばれることになる魔法体系を完成させ、魔を統べる存在、「魔王」となった。

アルヴァは、自分自身を普通の人間から、魔素の残骸で体を生成し、世界で魔法が使用され続ける限り自分が存在することが出来るよう、体を作り換え、不老不死の存在となった。


魔王となったアルヴァは、最初に魔物が発見された地域に城を建設し、魔物の国ネグザスを建国する。

ネグザス自体は、他国に攻め込むことをしなかったが、ネグザスを攻撃した国々に対して、城を壊し、国王を倒すことで、適度に戦乱を起こし、魔法を発生させ、さらに魔物を産み出していった。



この事態が100年ほど続いた後、名もない賢者により新しい概念魔法「召喚」が開発される。

概念魔法「召喚」とは、異世界から「勇者」と呼ばれる存在を呼び寄せて、「魔王」を倒す存在となる魔法である。

魔法の発動には、100人が毎日魔力をつぎ込み、1年でようやく発動する大がかりな内容である。


実際の魔法の行使は、国家規模でしか使用することが出来ない魔法である。

概念魔法で魔王を倒す存在として呼び寄せられるため、地球の一般的なRPGのように、魔王は倒される。

異世界から召喚された者は、召喚元の世界では、普通の人間だったようだが、概念魔法により強力な力を身につけていた。


この概念魔法が、当時の魔法の水準を超越した技術で作られていたこと、この世界には、「他の世界」という概念が無かったことから、この概念魔法も神が作ったものと、現在では考えられている。

証明することは、神が現れないことにはわからないのだが。



だが、アルヴァはしたたかであった。

アルヴァは、部下の1人に暗黒魔法を伝授させて「魔王」にしたて、自分を「大魔王」として「勇者」と「魔王」の様子を伺った。


やがて、概念魔法のとおり勇者が魔王を倒すと、アルヴァは召喚された勇者に「魔王を倒しても元の世界には戻れない」とそそのかし、勇者が召喚した国を滅ぼさせると、暗黒魔法の力を与えて、新しい「魔王」に就任させ、支配下に置いていた。


アルヴァは、元勇者が得た力を解析することで、自らの力にしていった。

そして、勇者が登場するたびに魔王が倒され、勇者が新しい魔王となるということが繰り返された。



変化が訪れたのは、1人の村娘が冒険者になったことがきっかけとなった。

村娘は、勇者にあこがれて冒険者となった。

旅の途中で、勇者が魔王を倒して新たな魔王となったことを知ると、魔法の研究に励み、新しい概念魔法「帰還」を産み出す。


新しい概念魔法「帰還」は、魔王となった勇者を元の世界に「帰還」させる魔法であり、この世界で得られた力を失わせることも可能だ。

魔王に対して行使した「帰還」より魔王はこの世界から消失し、アルヴァも概念魔法により消失した。

アルヴァの消失により、ネグザスも消失し、再び人類の脅威は消え去った。



荒廃した大陸は、やがてクレルダン王国が統一し、魔物の存在は残るものの、ひとまず人類に再び平穏な時代が訪れた。

ここまでの混乱により、魔法の技術はかなり失われた。

魔法研究を再開するため、近年魔法学園が創設され、ようやく国を挙げての研究開発が進み始めた。

このような時期に、ローズ・レクチャーが登場した。




「先生(笑)、この内容は魔法学園中等部での講義録、「歴史について」を適当に切り貼りしていませんか?」


第1話の原稿を読み終わった私に対して、青い髪の優男風の青年が、ため息と共に感想を漏らす。

「第1話から剽窃とは情けないです」

先ほどの青年と同じような顔をしたもう1人の青年、こちらは長い髪を後ろで束ねていた、が悲しそうな表情で頷く。


「剽窃とは違う。ちゃんとしたオマージュだよ、インスパイヤだよ」

私は、ありのままの事実を述べ、剽窃疑惑を完全否定した。

私は、異世界チート作家だ。

この程度の誹謗中傷など、問題ない。


「では、巻末にちゃんと参考文献リストを添付してくださいね」

「あらかじめ著作権者の了解をとってくださいね」

「それと、引用した文献の使用料は印税からきちんと引き落としますからね」

「……」

私は青年達の指摘に謙虚に頷いていた。


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