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第 3話 落ち着いた少年は、これまでの出来事を教えてくれた。

私が、扉を開けると、目の前に、黒目黒髪の子どもがいた。

顔色は、良くないようだが目つきはしっかりと私の方を見据えていた。

なぜ、ここにきたのか聞くことが出来そうだ。


「先生」

「ああ、起きあがる必要はない」

私は子どもに寝たままでいるように、指示し子どもに確認する。

「君は、レナロダ村にいたローズ・レクチャーで間違いないのだね」

「はい」


そばにいた青年2人は、私の記憶力に驚愕しているようだが、さすがに状況を理解しているのか、突っ込みをいれるような無粋なまねは見せなかった。


「さて、ローズ君よ」

「はい、先生」

私に対して敬意を持って接する男の子に、私は感動を覚えた。


「教えてくれないか。

どうして、私のところに訪れたのか」

ローズはしばらく考えたあと、申し訳なさそうな表情を私に見せる。

「申し訳ありません。

私は意図してここを尋ねたわけではありません。

ただ、直接の原因ならば推測することができます」

「……。そうか、教えてくれローズ君」

「私が、この腕輪に対して呪文を唱えたら、急に光に包まれました。

そして、気がついたら先生の前に着きました」

私はローズが左腕に身につけている銀色の腕輪を眺めながら、村を出た日のことを思い出した。

セリエがかつて身につけていた腕輪だ。

ローズに手渡したことを知り驚愕したものだ。


「その腕輪に魔法がかかっているとは、気付かなかったな」

「セリエ様は、「本当にどうしようもなくなった時に、最後の手段として使って」と言っておられました」

「そうか」

私はしばらく考えていた。


私が、この子どもを助けるための最終兵器になると、セリエは思っていたようだ。

いろいろ私のことに文句を言っていたが、結局はあてにしていたようだ。

「ということは、ローズ君。

なにがあったのだね、君の身に」


「村が全滅しました」

ローズは肩を振るわせ、歯を食いしばりながら絞り出すような声でいった。

「そうか」

「僕は、何も出来ませんでした。

自分自身が戦うことも、冒険者の助けを借りることも、愛する人を守ることも、村の人たちを埋葬することも、絶望して死ぬことも……」

「そうか」

私は、涙を流す男の子に対して話しかける。

「ローズ君。

君にはまだ出来ることがある。

死に急いではいけない」

「ですが、先生」


私は、ローズの反論を抑えて話を続ける。

「いいかい、ローズ君。

今の君には、修行して戦う力を得ることも、冒険者になって人を助けることも、愛する人を作ることも、失った村の人がどのような生活をしていたか書き残すことも、子どもや孫に見守られながら死ぬことも出来るのだ。

そんな未来を夢見ることが、手に入れることが出来るのだ。

人は、いつか死ぬ。

だからこそ、次の世代につなげるために、生き残った君は生き続けなければいけないのだよ。

村の人達のために」

「先生、……」

「ローズ君。

今日はゆっくり休みなさい。

話なら、ゆっくり聞くことができる。

原稿も、キチンと仕上げたからね」

「わかりました。

先生」

ローズは、気を張っていたのだろう。

しばらく私の顔を眺めていると、ゆっくりとまぶたを閉じて眠った。


「ライトン、レフトス。

彼の世話を頼んだぞ」

「かしこまりました」

2人の青年は、珍しく文句も言わずに私の指示に従った。

いつも、こんな調子であればと思ったが、そのことを口にすると、確実に反撃を食らいそうなきがして、書斎に戻ることにした。



数日後、体調もすっかり回復したローズは、しばらくここで働きたいとお願いした。

私としては、ライトン、レフトスがいるので働き手は足りているのだが、

「ローズ君。

君の最初の仕事は、村であった出来事を私が村を出てからのことを詳しく教えてくれないか」

と言った。


少年は、しばらく考えていたが

「わかりました」

と軽く頷いて、話し始めた。


ローズの話は、毎日2時間程度行った。

ローズは、

「いくらでも、話が出来ます。

問題有りません」

と言っていたが、長時間の話は精神に負担をかけることになるだろう。

そして、与えられた2時間も村での話しだけではなくて、この家の状況や食事の話し、王都の話などいろいろと織り交ぜて話をした。


私は、話を聞いた後で話の内容をまとめていった。

ローズの話は、理路整然としていたが、それでも村の全てを知ることは不可能だ。

そして、これから記載する内容はローズの伝記なので、ある程度省略する箇所が出てくる。


十数日かけて、私は話をまとめ上げた。

「先生(笑)、三ヶ月かかっていますよ」

「うるさい、実際には別の仕事もこなしながら作業しているのだ。

実作業時間はこんなものだ」

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