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箱庭で異彩を放つ花 ローズ・レクチャー伝  作者: undervermillion
第1部 第1章 こども時代
10/22

第 9話 華麗なる我が冒険譚に、人々は驚嘆していた。

「先生(笑)、長旅お疲れ様でした。

いかがでしたかな、今回の旅は。

前回のように、巨人の腹で生活することが有りませんでしたか。

村人に、盗賊団の一味と間違えられて、追いかけ回されませんでしたか。

冒険者と間違えられて、いつの間にかモンスターと戦わされませんでしたか。

道に迷って、港町に着きませんでしたか。

そのまま、調子に乗って港で昼寝をしているうちに、乗組員と間違えられて乗船させられませんでしたか。

途中で、海賊に襲われそうになったときに、泳げないにもかかわらず、真っ先に海に飛び込みませんでしたか。

海賊に襲われた後で、嵐に巻き込まれたとき、1人だけ命綱をつけずに甲板に上がって、そのまま流されませんでしたか。

到着した、無人島で1ヶ月生活しませんでしたか」

セリエは、長々と話すと、私に挑むような視線で睨み付ける。


「どうやら、私の過去の冒険譚がねつ造されているようだね。

巨人が村を襲撃するのを避けるために、私のチート機能をいかして、生命の危機を顧みずに内部からの攻撃を行っただけだ。

私が、盗賊団に間違えられた時は、わざと逃げ出した先に本当の盗賊団のねぐらがあったので、盗賊団を壊滅することが出来た。

道に迷ったのは、ただの振りで、海洋SFの構想を練るためのものだった。

船に乗船したのも同じ理由だ。

海賊に襲われたとき、真っ先に飛び込んだのは逃げ出すためではなく、海賊の注意を引きつけるためだった。

実際、海賊が俺を捕まえる間に、襲われた船は逃げていった。

私1人残してね!

嵐に巻き込まれた時には完全に遭難すると確信したから、いち早く退避したのだ。

現に、海賊船は渦に引き寄せられ海底に沈んだ。

だから、無人島で1ヶ月生活することなど、死ぬことに比べたらなんでもない」

私は論理的に否定した。


「ご安心下さい、セリエ様。

そのために、我々がいるのです。

今回の旅でも、先生(笑)が道に迷ったのはいつもの事ですし、回避不可能でしたので問題ありませんでした。

今回の最大の問題は、途中に立ち寄った村で、先生(笑)が何故か彫刻家と勘違いされたようで、村を守る女神像の作成を依頼されました。

先生(笑)が、根拠もない自信で、作品を作り始めると、恐ろしい邪神の像が完成し、邪神召還が危うく発動しそうになりました。

私たちが異変にいち早く気付いて、対応しなかったら、召還された破壊神に世界が滅ぼされたことでしょう」

青年の1人が、あきらめた表情で今回の旅を説明した。


「先生(笑)が、チート機能を生かして、妖艶すぎて、子どもには決して見せられない像をいやらしい表情と熱意で造られましたからね。

あの出来と情熱では、破壊の女神が召還されても誰も驚かなかったでしょう。

私が、先生(笑)が像を完成するまえに、像を破壊できたので問題なかったですが」

もう1人の青年も、ため息をついた。


「なんで、この世界に破壊神がいるのだよ。

おかしいだろう、常識的に考えて。

さすがに、世界が終わったら、異世界チート作家の私でも、さすがに人生終わっちゃうよ!」

私は思わず叫んでしまった。

「自業自得です」

「私たちを巻き込まないでください」

私の両側にいた青年達は、口々に俺を非難する。


「さすが、先生(笑)。

昔と、変わりませんな」

村長は、世界の滅亡の危機を聞いても平然としていた。

「というわけで、あなたが出歩くと厄災を振りまくのよ。

だから、これからつれて帰るわね」

セリエは宣言した。


「たのむ、1ヶ月いや2週間は滞在させてくれ。

ここで暮らせば、良い原稿を作れそうなのだ」

「以前も、別の村で同じ事を言って、世界を滅ぼすような素晴らしい像しか造りませんでしたが」

「その前は、混浴露天風呂に潜入だと息巻いていた割には、筆が進みませんでしたよ」

2人の青年は、私に過去の話を暴露する。


「ま、まさか、温泉が各家庭に引かれていて、誰も大浴場に来ないとは思わなかったのだ。

1ヶ月待っても、女性旅行者が現れないなんて、なんという拷問だ!」

「辺境の、強力なモンスターが出現する村に、何を期待しているのですか」

「女性旅行者を期待して何が悪い!

私が研究している、温泉と女性の素肌との因果関係の研究は、今後出版予定の「混浴露天風呂殺人事件 死ぬまでに一度は入りたい温泉ベスト5編」を完成させるのに必要なのだ」

「先生(笑)の原案では、殺された女性は全て入浴前に殺されていましたが」

「やめてくれ、それだけで犯人が誰かばれるではないか」

こんなところで、私の推理小説のネタ晴らしをされても困る。


「今すぐにでも、追い出したいのだが、君たちも疲れているだろう」

村長は一連の会話が終わったのを見計らって口を開くと、2人の青年に視線を移す。

「いつものことなので、慣れてはいますが」

「さすがに、破壊神召還の直前でしたので、像の影響によって集まった魔素に反応して強力なモンスター達が出現したので、撃退戦で疲労しましたね。

正直、あのときも疲れました」

青年達は、村長に感謝の念を送る。

「では、出発は3日後ということで、よろしいかな?」

「ありがとうございます」

「感謝します」

「私も、構わないわ」

青年2人と、セリエ頷いた。


「私の意見は、聞いてくれないのか」

私は、自分の意見が反映されないことに文句を言ったが、

「「聞きません」」

「無理です」

「よくも、まあぬけぬけと」

全員から否定された。


「決まったところで、夕食の準備が必要だな。

ローズ頼んだぞ」

「かしこまりました。

それでは皆様、失礼します」

ローズは、優雅に頭を下げると部屋を後にした。



「あの子どもは、お前の子か。

年齢にしては、随分とおちついているようだが。

それに、娘がいたのは聞いていたが、息子がいたとは聞いてないぞ?」

私は村長に指摘する。

「違う。

1年前に、村の前で倒れていた子どもを拾った」

村長は、答えてから、怪訝そうな顔を私に向ける。

「子どもがここに来るまでの記憶が戻らないと言うことで、先生(笑)に、最近行方不明になったり、誘拐されたりした子どもがいなかったか、手紙を出したのだが。

だからこそ、今日ここに来て何らかの話を聞かせてくれるものだと、期待していたのだが」


「そ、それは」

私が、適切な説明をする前に、2人の青年が口を挟む。

「先生(笑)は、締め切りに追われて、手紙を私に読ませました。

王都を出発する直前まで、思い出されることは有りませんでした」

「先生(笑)が、調査をされませんでしたので、僭越ながら私たちが当時の王都で誘拐事件や行方不明事件の発生が無かったか、確認を取りました。

該当するような、事件は発生していませんでした」

「そうか、ありがとう」

村長は2人の青年にお礼をいう。

「先生(笑)、詳しい話は食事中にきっちり聞かせてもらいます」


次回は、1月3日正午に更新の予定です。

次回で第1章は終了します。

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