裏8話◆アデイル
私は伝説の三人である『三杖士』が一人ペルバの打ち出したプロジェクトチームの一員であった。
私はフィリップの議員であり、その立場でプロジェクトチームに参加していた。協力会社等を担当する担当だった。
作られるのは悲惨なゲーム。人徳に反する凄絶な悪意である。
我々プロジェクトチームは初め画面越しに行われるものであると信じて疑わなかった。だが、事が進むに連れて対象が三次元ではなく二次元であることを知った。
ペルバは世界で有数の能力者であり、かつその中でも上位に与する。
誰も逆らえなかった。逆らえば人という形を失うからだ。残酷にも目の前で魚になった同僚もいる。そんな事もあって誰一人として逆らえない状況に陥っていた。
ゲームの内容はリアリティがなく架空の話としか思えないものだ。石が浮かんで木の葉が沈むものだ。だが、ペルバにかかれば本当に石が浮かんで木の葉が沈むのだ。フィクションはノンフィクションへと変わる。それが能力者という存在だった。
しりとり変身ゲーム。
鬼となった人間が人々を人間以外の何かに変える。例えば、人間を芋虫に変えることもできるし、シチューにすら変えることもできる。そんな異次元のものだった。
完成したそれはフィリップの都市で開催された。街はこれまた不可思議な力により外に出られなくなる壁に覆われる。その中で行われるゲームは、私からしたらデスゲームにしか見えない。
この状況を何とかしたかったし、何よりも罪悪感が心を支配した。
このイカれたゲームを終わらせる。自分も同じ蜘蛛の糸にかかる虫であってはいけない。そこでプロジェクトチームの協力者だったバアルと手を組み、私はベルフェゴールの体でフィリップに戻った。
私だけではない。私と意を同じくする同志も同様にベルフェゴールの体で戻った。
私は市長に立候補した。
市長となった私はフルリモートで全生活ができる街を急ピッチで完成させた。そして、機械人間が故にゲームの対象外となるベルフェゴールが、街の機能を回す重要な仕事を行うことにした。
街の警備。配達及び配達のトラブル対応。工事等。同志は同じく持つ罪悪感から必死で役目を全うした。そもそもこの機械人間の体は休息をそこまで必要としないという利点も追い風となっていた。
市長である私は如何に被害を出さないようにできるかをメインに頑張った。
それともう一つ、このゲームの首謀者であるペルバに終わらせるように要求することを怠らなかった。
が――彼女が私の言うことを聞くことはなかった。どんな交渉も無下にされる。仕方がないことだった。私には交渉できる程の手札が存在していなかったからだ。ペルバは最強クラスの能力者が故に力も持ち合わせるし、欲しいものは何でも手に入る。交渉する余地がなかった。
◆
一時的にペルバが街を離れた。嵐の前の静けさみたいだった。
それでもゲームは止まらなかった。
度々、この街に戻ってきたからであろう。
そして、再び彼女がこの街に定住した。今度は孫のコハという女の子を連れて。
最後の望みに感じた。
善悪は言ってられない。コハを誘拐し、それと引き換えにこのイカれたゲームを終わらす交渉をする。その子は唯一の切り札だった。
だから、コハを誘拐しようと頑張ったのだが、何度も何度も邪魔が入る。街に無害だからと見過ごしていた街から出られなくなった流浪の剣士が邪魔をしてきたのだ。
今度は街から出てきた。
いくら機械の体だろうと街の外には出られないため、ベルフェゴールの体を乗り換えてコハを誘拐しようと試みた。念には念をとバアルの拠点を守るバアル護身兵を一体連れて行ったが、失敗に終わった。
諦めずにもう一度挑戦しに行くと、そこには一人はぐれた彼女達の仲間がいた。何やらただ事ではなさそうで、話を聞いたら、決別したとのこと。
彼女はコハ達と敵対する心を持ち合わせており、私に協力すると持ちかけてきた。
私は彼女をバアルの拠点へと連れて行った。ベルフェゴールの脚力なら早くつく。
彼女はベルフェゴール体になりたがっていたが問題があった。
ベルフェゴールは大人じゃないと貸し出しされない。お金の問題は私が工面すれば問題ないが、年齢の問題は私にはどうしようもできなかった。
そんな時、赤く光り出すメリカ。彼女は魔法の力なのか何なのか瞬く間に可憐なドレス姿にメイクアップしていた。
そして、幻影を操れた。彼女は周りに自身を大人と見させる幻や架空の手続きの書類を作り出す幻を発現した。そのお陰で彼女はベルフェゴールを借りることに成功した。
後はミッションをこなすだけ。
彼女はコハと決闘を申し込みたいと言った。それを尊重して、決闘の機会を与えることにした。ただし条件に殺さないことを加えた。
で――負けた。
旅の仲間に普通に負けてしまった。
◆
ラボにて私達二人は再びベルフェゴールに乗り込もうとした時、研究員の一人に呼ばれて家の外に出た。
「それはあたしの絡繰人形よぉ」と研究員は人間ならありえない関節の外れで崩れていった。
そこに現れたペルバ。
「ちょっとおいたが過ぎるからねぇ。ここで退場して貰うねぇ。」
気付けば私は岩に変わっていた。
一方でメリカはゴミ箱に変わっていた。
私は魔法でこの場所から外れた人気のない洞窟の中へと移動させられた。
誰にも見つからない寂しい場所だ。
悠久の時――。
俺は辛くて堪らなかった。
何も変わらない景色。視線を固定され見応えのない単なる岩場しか見れない。いつだって真っ暗だ。雨が降っているかどうかさえ分からない。気温も感じない。何にも感じない。
人はいない。動物すらいない。虫すらもいない。多分、魔法で近づくことすらできないんだろうな、と思う。
本当に何にもない場所で何にもできない。ただ時間が過ぎるのを待つ。
悠久――。
退屈すぎて辛い。
悠久――。
退屈すぎて感情すらなくなった。
悠久――。
もう言葉すらいらないや。
v:bV:――。
'gemm/E0kjIg。
◆
アデイルはあまりの無限の時間の中で、廃人に変わってしまったのであった。




