裏4話◆ピーちゃん
今日はポカポカしている。上を見ると青空が広がっている。
今日は友達と人生会議だ。
そこにやってきた友達。春なのにちょっと暑そうな服を着てる。
「調べたぜ。バアルの所在地!」
「ほんとに?」
天気はこんなに陽気な街なのに、実際は殺伐とした場所。鬼に見つかって捕獲されたら人ではなくなってしまう。とっても怖い場所。
ただ、捕獲されない方法が存在した――。
「ここに行けば僕達ベルフェゴールの体で生活できるんだよね!」
バアルという人物の場所に行き、その人からベルフェゴールという機械の体を手に入れること。そうすると僕はその機械人間として過ごすことができる。その間はお腹も空かないし、眠くもならない。何よりも鬼に捕獲されない。なぜなら、本体はバアルの所在地でコールドスリープしているから。
「ああ。ただし、一つ問題があるがな!」
「問題……?」
「そこ、壁の外だぞ。」
この街から出ることはできない。なぜなら街を覆うように見えない壁があるからだ。
つまり、バアルの所在地に行けば捕獲されないための手段が手に入るものの、そもそも僕らはバアルの所在地に行くことすらできなかったということだ。
ため息が出た。
僕はポケットにそこへと行くための地図が描かれた紙をしまった。せっかく調べてもらったのに申し訳ない。
「な、が、そ、で!」
どこかからか聞こえた言葉。どうしてだろう。目の前にいる友達の体が液体のようにぐにゃぐにゃと形が変わっていく。
ふと声がした方を見ると見知らぬおじさんがいた。――鬼だ。
友達は【長袖】の服に変えられた。もう人ではなくなった。鬼に捕獲されたんだ。
僕は必死で逃げた。
なのに、捕獲されてしまった。僕は【電子レンジ】に変えられてしまった。
赤ちゃんぐらいの目線。周りは見渡すことすらできない。手も足もない。口すらないから話すなんてもってのほか。動かせそうな箇所など一つもない。なぜなら僕は電子レンジだから。
助けて、助けて、なんて祈っても、言葉にならないのだから、意味なんて一切ない。
辛くてもどうにもならない。
動きたくても動けない。
数日経った。何にも動きはしない。もう何もできないせいで、何も考えることができない。
人は死ぬなって言う。けど、死にたくても死ねない時はどうすればいいのだろう? 僕はちょっぴり疑問に思った。
誰かが僕を蹴っては転んだ。
僕よりか歳上の女の子だった。今度はあの嫌なおじさんの声が聞こえた。捕獲するために追いかけているのだとすぐに気付いた。
ふと僕の体が勝手に動き始めた。
そして、鬼のおじさんに体当たりをかました。
びっくりした。僕の体のはずなのに僕は何も動かしていない。それなのに体は動いているのだ。まるで誰かに操られているみたいだ。
鬼のおじさんはそのままどこかへと走り去って行った。
一方で僕は誰かに操られていくように何処かへと進んでいった。一体僕はどこへと行くのだろうか。
辿り着いた場所は公園だった。
静けさが残るその場所で聞こえた言葉。
「良かった。無事だったみたいだね」や、それに対するリアクションへの返答である「実は、僕、喋れるんだよ」が自分の耳に入る。
それはいったい誰の言葉なのだろうか――?
明らかに僕の声ではある。けれども、僕はそんな言葉を言おうとは微塵も考えてなかったし、口すら動かした記憶はない。
誰かが操って、そして代弁しているみたいだ。
頭に過ぎる『オママゴト』と、その人形――駒になって巨大な何かに掴まれて勝手に動かされたり代弁されたりする様子。それが自分なのだと認識した所で何にもならなかった。
僕は名付けられた。――ピーちゃん、と。
センス良いね、なんて思ってすらないのに言っている。誰がそんなことを言わせているのだろうか。
◆
僕はコハという女の子の奴隷のような存在だ。その子からしたら単なる友達とか仲間とかそんな風にしか思われていないだろうけど。
ある時、絶対に破られないと思っていた街な壁が消えた。僕はそれがその女の子によるものだとすぐに悟った。ただ、その原因は僕のお陰ということになった。
本当は違うと思う。
僕は知っている。これは全部、コハという子が無意識の内に行っている茶番劇なのだと。
◆
体が勝手に動く。きっと遠くからコハという子が動かしているのだろう。そして、その日はどうしてかコハが機械人間ベルフェゴールに追われていた。
やっぱり操り師の仕業なのだろう。
もちろん、僕の体は勝手に動いていて彼女を守るための壁となった。
彼女は不思議な力に目覚めた。真っ黒な空間に塩の結晶のようなバリアが現れる。ベルフェゴールの攻撃がビクともしない無敵のバリアだ。さらに、僕はどんなに壊れてもすぐに修復されていく。
そう、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も修復されていく。
その度に思う。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、と。
そこに一人の男の人が乱入してベルフェゴールを蹴り飛ばす。そして、僕らはそこから逃げた。その後、彼女の家へと戻る途中でベルフェゴールと再選した。
今度はその男の方が力に覚醒し、あっという間に襲ってきたベルフェゴールを破壊した。
彼は優しかった。
傷ついた僕に優しく「……無事か?」と声をかけてくれたんだ。
だのに、僕の口はどうしてか「大丈夫! 僕はね、痛みを感じないんだっ!」と勝手に動く。
そんな訳ない!
痛みしか感じない。何度も何度も痛い思いをした。それなのに痛みを感じないなんて嘘でしかない。
助けて――。
僕はきっと彼女にとって都合のいいことを言わされているだけなんだ。都合の良いように操られているだけなんだ。
彼女はその事に気付いていない。けれども、僕は直感でその事実が分かるんだ。
僕は彼女のことがとっても恐ろしく感じた。オバケよりも、悪魔よりも、悪人よりも何よりも恐ろしい。僕にとってはコハこそが一番の恐怖なんだ。
そんな事が通じることはなく。僕は彼女の良いように動かされていった。
誰か――。
助けて――。
そんな言葉、通じる訳――なかった。




