裏2話◆コハ
がらくたの山の中にあるのは沢山の指人形。一つ一つに名前が付いている。それは進化したり、しなかったりする。それは可愛らしいモンスターに限らず、ゴツイモンスターもいる。それぞれには属性が一つまたは二つついている。そんな指人形だった。
私はそれらにそれぞれ性格を当てはめて、それで遊ぶのが好きだった。
それとは別のおもちゃがある。屋敷のセット。二階建てで六つのエリアに区切られている。それと同時に上記の指人形の小さな人形バージョンを置いていく。
そうやって遊ぶのも好きだった。
それで物語を考えるのが好きになった。いつかはアニメを作る人になりたいな……なんて思った。けど、国語が苦手だからシナリオライターは難しいし、絵は得意じゃないからイラストレーターも難しそうだ。いつの日にかアニメのオープニングやエンディングに魅力を感じるようになった。音楽を作る人になってみたいとも思ったけど、そんな才能がない。歌手になりたいとは思いもしない。今度はゲームにはまり、ゲームクリエイターになりたいと思ったけど、そんな学力なんてある訳がない。結局、私にはできない夢しか夢を見ていない。
ある日のこと、学校で将来の夢を語る時間があった。けれども、私はぎりぎりまで何も思いつかなかった。クラスメイトはすらすら浮かんでいるのに、私には何も浮かぶものなんて存在していない。
仕方ない。私は他と比べて劣っているのだから。
最後の最後に記したシナリオライターの夢。キャラを創って、物語を考えるのが好きだから。それを渋々、親に伝えた。「今のままじゃ無理じゃない。もしなりたいなら今よりももっともっと勉強頑張らなきゃいけないんだよ」と返ってきた。つまり、私にはなれっこない、無理だという宣言。――知ってるよ、それは。けど、授業で、絶対に示さなきゃならなかったんだから仕方ないでしょ――。私はシナリオライターの夢を諦めた。
クラスメイトの中には素敵なお嫁さんになるなんて言ってる人がいた。正直、私には興味が湧かない。そんなことを夢見る程、脳内はお花畑でもない。
賢くはない。けど、言うほど馬鹿でもないと思う。
何者かになりたい訳でもない。ただ、何者かにならなきゃいけないとは思っている。結局、私は何をしたいのかはっきりしないまま時間だけが過ぎていった。
平凡な人間だった。特段、目立つ特技はない。目立つ程、性格が馬鹿でもない。中学生に入っても、何も煌めかない。
私は頭が良くない。だから、目の前の事を乗り越えるので精一杯の人間だ。平坦な道を歩いて、目の前の課題を淡々とこなしていくだけだ。
結局のところ、夢なんて見つからなかった。
何者かになって、愛されるような人間になりたい。ただ漠然とそう感じてるだけだった。
◆
私の人生は一転した。
世界が変わった。――両親が一日にしてあの世へと旅立ってしまったからだ。
それから一年程度、心の傷はある程度まで回復していた。
えげつない程の心の傷を受けた。けれども、元々、何も持たざる人間だからこそ、失う時の落差は低かったのかも知れない。だからこそ、性格が捻じ曲がることも大きく成長することもなかった。
私は私のままだ。
ただ無色透明な私のままなんだ。
一つだけ言えることがある。私は一歩を踏み出すのが苦手だ。全てに置いて受け身だ。平凡な人間だから何かを話せる程の感情も、知識もない。
それに人と関わるのは疲れる。その時はノリで話すから良くても、その日の夜とか後になって「あんなこと話さなければ良かったな」とか、その人の反応を見て「あの時、目線を逸らしたのは〇〇と思ったからなのかな。やらかしちゃったかな」とか、「逆に、私がいなくてあーいう風に思ってるんではないだろうか」とか、脳内で、独りで、反省会が無理やり勝手に行われるためだ。だから、あまり人と関わるのは嫌いだ。それが余計に私の持っていたカラフルな色を落としている結果になったのかも知れない。
もう私は無色透明だ。
そんな人間だからこそ、自分から一歩踏み出すことをしない。いつも後衛的な人間なのだ。いつも身を委ねてしまう人間なのだ。
だから、不思議だった。
白熊にトドメを刺さないといけない時。槍を持って突き刺しに行ったのは――きっと何かのターニングポイントだったのかも知れない。
もしかしたら私は――平凡な性格から変われるのかもしれない。
そんな出来事だった。




