男四人、転生
眠すぎて半分意識が飛びかけていた時、後ろから肩をたたかれた。
「なんだ。荒木か」
肩を叩いてきたのは男子四人グループのリーダー的存在、荒木士棒だった。
「なに寝てんだよ立炎。今日は久しぶりに深川と小玉の部活がOFFだから四人でゲーセンいこうぜ」
「5限は?」
「なにいってんだ?もうホームルームもおわってるぞ?」
意識は飛びかけていたのではなく飛んでいたらしい。
「早く帰ろうぜ」
小玉が急かしてくるので仕方なく椅子からたった。
「立炎バッグ、忘れてるぞ…」
深川が呆れたようにいってきた
「サンキュ」
階段から降りるのもめんどうだ。
授業で学生は疲れているんだからエレベーターくらいつけてほしい。
「歩いたら目、覚めたか?」
「おい荒木。俺を誰だとおもってる?もちろんまだ眠いな」
靴を履き替えそとに出ると学校のすぐ近くの信号が青からチカに変わった。深川が
「走って渡っちゃおうぜ」
とか言ったせいで仕方なく走ることになった。
信号を半分くらい渡ったとき横のトラックに僕たち四人は誰も気付かなかったらしい。
目が覚めたとき四人は何もない空間にいた。
「おっ!いいところにきたじゃない!君たち四人はいま轢き殺されたわ!まだ学生でかわいそうだと思うから異世界に送るわね!」
何が何だかわならないことをよくわからない女の人がいっている。
「別の世界って何すか?」
最初の質問をしたのは荒木だった。
「別の世界は別の世界よ。異世界ってこと」
異世界?嘘だろ?ほんとに死んだのか?
「さっきのいいところにきたってのは?」
次に質問したのは小玉だった。
「やって欲しいことがあるのよ。前に転生させちゃった人がいま世界征服?的なことをしてて奴隷制度OKとか、とにかくむちゃくちゃやってるのよ。あっちの世界の人たちじゃいま最強のアイツを止められないの。異世界からきた人なら倒せるかもしれないからやっちゃって欲しいの!」
「異世界に転生ってことは俺たち最強になれるってことだろ!?漫画でみたぜ!」
深川がはしゃいでいる。深川はゲームかなにかと勘違いしているのだろうか…?
「なれるかどうかはあなた達しだいね!言葉は通じるようにしておくわ!一刻も早く倒して欲しいからもうあっちの世界送るわね!頑張って!」
四人の足元が光ってきた。転生の準備だろうか…
目が覚めると森の中にいた。山だろうか。下は草か…
「みんな!異世界だってよ!暗い気持ちになってても仕方ない!何をするにもまず立ち上がろうぜ!」
荒木のこういうプラスな性格にはみんなかなり助けられてる。異世界でもなんとかやっていけるんだろうな。
「ガサガサいってるぞ」
深川がみている目線の先から生き物がでてきた。5メートルくらい先だろうか。
緑のチンパンジーのような見た目でバットのような木の棒を持っている。目が赤く不気味だ。
「こっちにくるぞ!!」
深川が叫んだ時には緑の猿は走って荒木に向かっていった。座っている荒木が立ち上がるまでの時間は緑の猿が荒木に近づくまでには十分な時間だった。
猿が棒を持ち上げる。まずい。
「荒木よけろ!」
ゴグチャ…
鈍い音がなった。棒で頭を殴られた荒木からは血と、頭から何かが飛び出ていた。緑だった地面の草が赤く染まっていく。
緑の猿が次はこっちにくる。荒い鼻息をたてこちらを睨んでいる。
あとこっちまで3歩程度のところで木のつるのようなものに引っ掛かり猿が転んだ。足は俺たちよりはやい。逃げられない。殺すならいましかないだろう。深川も、小玉も考えが同じだったのかすぐに抑えにかかった。暴れている猿にひっかかれた小玉の腕からは血が流れていた。
小玉と深川が抑えている間に緑の猿の棒を奪い全力で振りかぶった。
「いけ!立炎!!」
「死ねクソザル!!」
人生で一番強い力を出せた気がする。緑の猿の頭は完全に叩き割ることができた。
「荒木ぃぃぃ!」
ここは地獄だ。
生きている可能性もあるかもしれないと荒木に近づくがとても目を向けられるような状態じゃなかった。何時間三人で泣いただろうか。暗くなってきた。またあんなのがきたら次は勝てるきがしない。
「おい。これからどうする…」
深川はまだ体育座りをしている
小玉が答えた
「あそこみて光が見える…!」
暗くなるまできずかなかった。確かに光が見える。真っ暗になる前に向かいたい。
「行こうぜ深川」
ここが異世界だからまだ可能性があるかもしれないと信じて俺は荒木の死体をかついで光のあるところまで持っていくことにした。
光ある場所につくまで何もなかった。誰も一言も話さなかった。光は、町の家の光だった。安堵で俺たちはまた泣いた。涙が落ち着いたとき思い出した。
「あの転生させた変な女は言葉が通じるっていってたよな」
まずは病院を探そう。そのために荒木を運んできた。
「すげぇ!読めるぞ!あれ病院ってかいてあるぜ!」
深川が病院を見つけた。
レンガのようなものでできていた。ドアは引きドアだった。
「すみません。この人まだなおりますか?」
地球の生き物で例えるとアリクイに似たような顔の人間がでてきた。驚いたような顔で答えた。
「こりゃひどいね。なんでこんなことになったんだい。無理だよ。死体は治らない」
心のそこではわかっていた。俺だけじゃなく、他の二人もきっと。小玉が泣きそうな顔で言った。
「埋めたりすればいいですか?」
「埋める?ダメダメ~!そんなことしたらゾンビになるだろ?近くの海にでも捨ててくれ」
日本とは常識が違うのか。それか俺たちの前に転生したやつの仕業だろうか。
海まで運んだが荒木を捨てるなんてすぐにはできなかった。時間がたったせいか匂いもきつくなってきた。蚊とハエをたして2で割ったような見た目の虫がたかっている。
さっきの医者の服がボロかったことを思い出した。
「服。売れるんじゃないか?」
深川が声をあらげた。
「どういうことだよ。死んだ荒木から服剥ぎ取るってことか?」
「僕も売れるならそうした方がいいと思う。」
深川の意見を無視する形になったが服を剥ぎ死体を海に落とした。すぐにでかい魚のような生き物に丸飲みにされた。海に落とせってのはこういうことだったらしい。
「宿とか無いよな。野宿か」
仕方なくその日は町の裏路地のような場所で寝た。ネズミのような、ウサギのような生き物がチラチラ見える。
「おはよう。」
「おはよう。」
「おはよう。」
全員起きたようだ。いまから服を売れる場所が無いか探すことにした。
「あれ。服売ってるとこだよね。買い取りはしてくれるのかな?」
小玉の指の方向には服が並べてある店がある。
「いってみようぜ!」
深川は乗り気だ。
「いらっしゃい」
鈴がなった。
「服の買い取りってやってますか?これなんですけど。」
荒木のきていた服を見せる。
「珍しいね。どんな素材だいそれ。5分くらいまってて」
「珍しいっていってたぞ。売れるんじゃないか?あれ」
小玉は他の服をみてるようだ。
「金貨三枚でどうかね?」
並べてある服は大体"銅貨五枚"
とかいてある。とりあえず銅貨の価値を聞いてみようか。
「銅貨ってどのくらいの価値なんですか?」
「そんなのも知らないで売りにきたのかい?
銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚、これでいいかい?」
不思議そうな顔をしているが答えてくれた。
「ありがとうございます。その服。金貨三枚で売ります。ついでに俺たちの服も売っていいですか?」
深川と小玉の意見は聞かず売ることにした。
「悪い深川、小玉。飯とか買うのに多分金がいるから脱いでくれ。」
二人とも少し嫌そうな顔をしているが金のためだ。仕方ないだろう。
「金貨9枚ね」
「ついでにそこの服買います。3個ずつお願いします。」
ぼろい服でもきておかないと流石に恥ずかしい。小玉も深川もきっとそうだろう。
「合計銀貨一枚ね」
「ありがとうございました」
店を出てみたが何をしようか。
「とりあえず歩いてみようぜ。」
「僕もそれがいいと思う」
「良さそうな店があったら入ってみよ」
本屋?この世界にもあるのか。早速気になる店を見つけてしまった。
おすすめ本一位!とかいてある本を見つけた。
"5ヶ月でマスター!誰でも簡単魔法基礎の本!"
「この世界には魔法があるらしいぞ」
「えっ!?まじ!?」
深川が目を輝かせている。
「購入してしまった。金貨5枚は高かったな。」
貧乏だと魔法を覚えられないらしい。
「読んでみない?」
小玉も楽しみそうにしてる。読んでみるか
「3個からまず一つ選べ!!炎魔法!雷魔法!氷魔法!※強化系と回復系は別の本に記載」
なるほど。基礎はこと三つらしい。なぜ水じゃなく氷なんだろうか。まず誰がなに魔法を担当しようか。被らないといいが。
「深川はなに魔法を使いたい?」
「雷だな!一番かっけぇだろ!」
「小玉は?」
「僕は氷かな。かき氷とか作れそうだし」
「なら俺は炎だな」
本を読んでみると詠唱が必要らしい。無詠唱を使いたいならそこからさらに2ヶ月必要ともかいてある。
「まず一回詠唱してみようぜ。」
この本の炎のマークに左手を当てながら…
「ほのおでろでろ燃えろ~!全部燃えてしまえ~!」
ボッ!
ライターくらいの炎が人差し指からでてきた。
詠唱がダサすぎる。無詠唱練習は絶対だな。
小玉も深川も笑っている。
「とりあえず今日から練習だな」
-------3ヶ月たったくらいだろうか…
詠唱を使った魔法が完璧なった。サッカーボールくらいの炎を少し飛ばせるようになった。5ヶ月マスターとかいてあったが才能があるかもしれない。これが転生特典!!
「僕もかき氷3回分くらいなら氷を出せるようになった!」
それはどのくらいなんだろうか。絶妙に分かりづらい例えだ。
「俺もうなぎくらいの太さの電気を出せるようになったぞ!」
ここからは無詠唱の練習だろう。
-------さらに1ヶ月
無詠唱をマスターしてしまった!しかも三人ともだ。威力は変わってないがやはり声を出さなくても打てる!やはり転生者特典だろう!
「威力はどうやったらあがるんだ?」
「本には敵を倒すとき死ぬか死なないかの狭間のときに危機を感じて本能が解放されるらしい!」
本だけじゃここからは上がらないらしい。基礎だけだったな。
「仲間一人くらい探したくないか?」
深川は仲間が欲しいらしい
「僕も強化系の仲間が欲しい」
小玉も欲しいらしい。
その前に一度森で力試しをしてみたい。
「その前に力試しないか?」
「了解!」
森の少し奥まできたが足が少し震える。鳥の鳴き声が少し不気味だ。やっぱり怖いものは怖い。
「キャーーー!!」
叫び声が聞こえた。森のさらに奥の方だ。
「おい!」
「だな行くぞ!」
そこにはゾウくらいでかいクモと草がたくさんはいった袋をもっている耳の長い銀髪の女の人がいた。おいあれってエルフってやつか?
「おいあれってエルフってやつか?」
深川も同じことを思っていたらしい。
「よしクモ倒すぞ!」
「小玉クモの足元凍らせてくれ!」
クモの足の半分くらいが凍った。
くもからなにか白いものが飛んだ
「なんか飛ばしたぞ!!」
溶かす系だったらやばいぞ。なんだ。
「くっそ!ねばねばしてて動けねぇ」
深川が捕まってしまった。暴れている。
「深川!そっから雷うってくれ!」
クモが痺れてる。いまならいけるだろう。
「くらえ!!」
三回くらい炎を飛ばしたら焼け死んだ。
「ありがとうございます!」
さっきのエルフのような人だ。銀髪が美しい。
まず気になった。
「どうしてこんなところまで一人で?」
「薬草を探してたらここまできてしまって。
私強化系魔法しか使えないのに仲間がいなくて…」
深川が耳もとで話しかけてきた。少し不快だ。
「仲間に誘ってみるか?」
「賛成だな。小玉、この人を仲間に誘ってみないか」
今度はこっちが耳もとで話してやった。
「賛成だよ」
決まりだ。誘おう。
「すみません」
「はい」
「僕たち強化系魔法を使える人を探してて。
仲間になってくれませんか?」
異世界らしくなってきた。助けられた手前、相手も断りづらいだろう。
「お試しで何回かってのはどうでしょうか?いい感じでしたら続けましょう!」
いい感じ?少し考え頷いた。
「わかりました。」
「今日、さっき倒したクモを倒すと報酬が貰えるとギルドの掲示板にかいてあったのでそのクモの討伐にいきましょう。明日の1時からでどうでしょうか?」
「わかりました」
ギルド?討伐?色々はじめて聞いた気がする。明日に備えて今日は帰って寝よう。




