昨日の約束
「兄様? 朝ですよ〜?」
どこかの春妖精のように俺を起こしに部屋に来る妹。
「あぁ、悪い。今何時だ?」
「7時です!」
昨日の情報を紙に書いていたな。あれ?待って今朱里が部屋にいるよね!?見られた!?
「あ、朱里、なにか部屋を漁ったりしたか?」
「? してませんよ?」
ふぅ、良かった。セーフだったようだ。
「今行くから下で待っててくれ」
「分かりましたっ!」
上機嫌に去っていく妹。可愛いなおい。
「ええっと、確かここに……お、あった」
書き写した紙を拾い上げる。それを机の中にしまった。もちろん、鍵付きで。
『頂きます!』
二人で手を合わせ、朝食を食べる。
「そういえば兄様、なんで急に学校に行こうとしたんですか?」
「ゲホッゲホッ……」
そう言われ、思わず吹き出してしまう。
「に、兄様!?」
「あぁ、悪い。で、なんだっけ?」
「なぜ急に学校に行こうとしたのか、です」
「そうだな、何となく……かな」
「何となく?」
傍から見れば見苦しすぎる言い訳だったが、この状況ではこれしか無かった。
「何となく、だ。流石に入学した学校に行かないのはまずいしな」
「ふぅん、あの兄様が」
じとっと睨まれる。
「あ、お弁当作りましょうか?」
「いや、今日は大丈夫だ」
「そうですか?」
残念そうに肩を落とす妹。なんだか申し訳ないことをした気がする。
「とりあえず、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい!」
俺はそう言って家を飛び出す。今日は弁当を貰うイベントだ。俺以外の人ならば、好感度アップイベだと歓喜すると思うが、俺は違う。焦っている。どうにか《正規ルート》に戻さなければいけない。ただ、美波春の誘いを断ったらそれこそ終わる。周りから痛い視線が飛ぶだろう。それは避けなければ。そのようなことを考えているとその学校にたどり着いた。
「おはよ、遥斗くん」
「あ、あぁ、おはよう春さん」
偶然、いやほんと偶然廊下で会った。
「"さん"? 春でいいよ?」
「いや、でも」
「春って呼んで?」
上目遣いでそう言われた。断れないじゃないか!!
「は、春……」
「うん!」
笑顔が眩しすぎる。
「そうだ、今日お弁当一緒に食べよ?」
「俺もそのつもりで来たんだ」
「忘れてなくてよかったよ〜。てっきりボク、避けられてるのかと」
いやまぁ実際避けようとはしたけれど。そのような会話をしながら俺たちは教室に入った。




