実は俺
扉を開けた先に見えたのは、前世では考えられなかった光景だった。リビングは綺麗に整っていて、2人分の料理が並べてある。その光景に少し感動してしまった。
「兄様、学校に急ぐと言っても朝ごはんは必要です。なので、食べてから行ってください」
「わかった、一緒に食べようか」
「っ〜〜……はいっ!!」
ニコッと微笑む朱里。とても可愛い。俺にはもったいないほどの妹だ。
『頂きます』
二人で手を合わせてご飯を口に運ぶ。
「っ……うっま…」
「良かったです♪」
前世の俺は料理ができなかったので、カップ麺かコンビニ弁当ばかり食べていた。だから久しぶりに誰かの手料理を食べられて本当に嬉しかった。
「っ……」
「兄様っ!?泣いてるんですか!?やっぱり、まずかったでしょうか……?」
と、不安げに聞いてくる朱里。
「違うんだ、俺はーー」
そこで俺は言葉を切った。朱里は妹だ。それはもう周知の事実だろう。ただ、そんな妹だからこそ話していいのか迷ってしまう。今の俺が"昔の俺"ではないことを。
「……?」
「……なぁ、朱里。お前は俺が別世界からやってきた人だと言ったら信じるか?」
あくまでも確定とは言わず、推理させるように俺はそう言い放つ。その問いに朱里は
「正直、そう言って貰えた方が理解ができます。今日の兄様は様子がおかしかったですから。普段絶対に行かない学校に行こうとしたり、私と朝食を一緒に食べたり……ともかく、色々とおかしかったのです。ですが、私は今の方が好きです。なので……"あなた"が別世界から来た…と言われた方が納得します」
「……そうか」
それを聞いたところで明かそうとは思わない。けれどいずれその時は来る。そのための心の準備をして欲しかった。けれどその心配は要らなさそうだ。だったらいっそ言ってしまおう。
「朱里……いや、朱里ちゃん。俺はこことは違う世界から来たんだ」
「…………」
黙り込む朱里。それでも俺は説明する。
「俺はここから遠いところからやってきた。いわゆる転生ってやつだ。多分な。俺の世界には……いや、この話はやめておこう。つまりだ、俺は別世界からやってきた他人ということになる。だから朱里ちゃん。俺に無理にかかわらなくてもーー」
「いいえ」
俺がそう言いかけた瞬間、朱里は睨むような目でそういった。
「兄様は、たとえ中身が別人だとしても……私にはたった一人の兄様なんです。なので、自分から突き放そうとは思いません。だから兄様……そんな事言わないで?あなたが別のところから来たのはわかったから…だからって私の態度が変わる訳じゃないです。あなたが私の兄様でいてくれる限り、そばを離れたりはしません」
「……そう、か」
その言葉は今の俺には心の奥まで突き刺さった。
俺は裏切られるのが怖い。前世は家族、友人、先生など色々な人から裏切られた。だったら、そんなことになる前に突き放そう。そう考えていたのだが目の前にいる朱里は俺を兄様と認め、離してくれなかった。それが嬉しくて、寂しさもあった。けれど、嬉しさの方が上回った。
「……朱里ちゃん」
「朱里でいいです。今までの呼び方で構いません」
「そうか、なら朱里」
「はい、なんでしょう兄様?」
「俺と……ずっと一緒に」
「はい……離しませんよ。もう二度と」




