モブルート、転生
目を覚ますと見知らぬ世界にいた。そのような話を聞いたらみんなは信じるだろうか。信じる人はいるだろう。けれど、信じない人の方が多い。かく言う俺もリアルでそんな話を聞いたら笑い飛ばす自信がある。
……そう、今日までなら。
「……どこだここ?」
いつものように目を覚ますと見慣れない部屋にいた。
本当に見たことが……いや、ある。
一つだけ思い当たる節がある。
「モブルートの…モブの部屋…」
そう、ここはあの【アミトラ】に出てくる《モブルート》のモブの部屋だ。見れば見るほどそれにしか見えない。だけどまだ確定させるのは早い。何か確定的な証拠がないと断定できない。
コンコンと、ノックされる音が聞こえた。誰かいるのだろうか?
「何か用か?」
「兄様?起きているのですか?」
兄様…その独特な呼び方から一定のファンを得ているキャラ、いや……人物、宮島朱里。《モブルート》の主人公、宮島遥斗の妹である。ちなみに俺の前世の名前も偶然にも"宮島遥斗"だ。偶然ね、うん。
ちなみに妹の見た目は黒髪の清楚っぽい感じの見た目だ。クソ可愛くて困る。
「起きてるぞ?」
「へっ…!?兄様が起きてるっ…!?」
「なんでそんなに驚くんだよ」
これには理由がある。俺……転生前の宮島遥斗は元々は不良だった。学校はサボり、街ではイラついたらすぐ暴れるし、他の女は寝取るしでそれはもう散々だ。まぁ、寝取るのはこれよりもっと後だった気もする。あれ?《モブ》ってなんだっけ?
「だってだって!兄様が起きてるのが珍しすぎてっ!」
「わかった!わかったから落ち着け!」
「……なんだか雰囲気も柔らかくなったような?」
さすが妹だ。兄のことはよく見ていて鋭い考察を飛ばす。だけど俺はそれを肯定しない。肯定したら俺の人生が終わる気がしたから。
「気のせいじゃないか?そんなすぐ変わるわけないだろ」
「うーん……まぁ今の兄様の方が好きなのでいいですけど」
「そうか」
「ところで兄様?今日も学校行かないのですか?」
「学校?」
「はい、今日は平日ですよ?まだ8時なので頑張れば1限目から行けるのでは?」
学校……懐かしい響きだ。少し心を躍らせてしまう。もしかしたら今の世界でも青春ができるのではないかと。
「そうだな、行ってみるか」
「っ……!?!?」
自分で言ったくせに驚いてんじゃねぇよと、心の中でツッコミを入れる。
「ち、朝食は作ってあるので……」
「あぁ、わかった」
俺はこの世界で初めて扉を開けた。




