幕間:ガルドの静かなる違和感
「フン。」
夜の「均等の里」は、昼間と変わらず、無機質な静けさに包まれていた。宿の窓から外を眺める。街灯も、建物の形も、全てが寸分違わず同じだ。妙な場所だ。
この村に着いた瞬間から、胸の奥で違和感が渦巻いていた。人々は皆、同じ顔、同じ服、同じ話し方。感情というものが、まるで存在しないかのように、皆がロボットのように動いている。不気味だ。
殿下は、あの「完璧な公平料理」とやらを一口食べると、すぐに「私のお腹が一つになっちゃうってことだよね!みんなと同じ味しかしない…」と、珍しく困惑した顔をしていた。殿下の**食べ物への執着**は、どんな複雑な状況の核心も突く。その感性が、この村の異常さを真っ先に感じ取ったのだろう。
「美味しいものは、みんなそれぞれ違う味があって、それを認め合うものなのに!こんな風に個性を奪うなんて、全然美味しくない!」
殿下がそう激怒した時、私は彼女の言葉を、静かに受け止めた。彼女の怒りは、いつも純粋で、そして何よりも正しい。人の個性を奪うことは、悪だ。
地下室での光景は、その悪の根源をはっきりと示した。
魔導具で人々の「個性」を抽出し、それを液体と混ぜて料理として提供する。委員長と名乗るあの男の、感情のない機械的な声は、その行為の異様さを際立たせていた。個性を失った村人たちの、ぼんやりとした瞳を見ていると、胸の奥で静かな怒りが燃え上がった。
悪党どもは、皆同じ顔、同じ服。
誰を攻撃しても、反応は同じ。手応えも同じ。普段なら、相手の動きや表情から、次の手を予測する。だが、今回はそれができなかった。全員がまるで一つの存在であるかのように、同じ動きで襲いかかってくる。
「フン…(なぜか眉間に皺を寄せて、壊れた看板を見るガルド)」
「フン…(また眉間に皺を寄せて、砕け散った壺を見るガルド)」
頭上に落ちてきた看板や壺を避けるたび、妙な気分になった。これも、あの村の「均等」とやらの影響なのだろうか。しかし、私の拳は、どんな均等であろうと、悪には容赦しない。躊躇なく、次々と敵を無力化した。殿下を守るためなら、どんなものも破壊する。それが私の役目だ。
リアナは、今回も冷静だったが、その顔には珍しく困惑の色が浮かんでいた。
「計算が…合いません。全てが均等すぎて、逆に不均衡です…」と呟く彼女の姿は、ある意味新鮮だった。彼女の論理が破綻しかけるほどの異常な状況に、私は内心、僅かながら感心した。しかし、彼女の胃は、今回も悲鳴を上げていたようだ。胃薬を飲む姿を見るたびに、少しだけ心配になる。
セレネの精霊術は、いつもながら優雅で、そして的確だった。
彼女が操る夜の小動物たちは、見事に敵の目をくらませ、動きを封じた。そして、彼女が「多様性の光」を感じ取ったことで、私たちは真の泉を見つけることができた。あの泉のほとりに咲き乱れる色とりどりの花々が、この村が本来持っていた個性の輝きを物語っていた。
リネットは、今回、金銭的に損をしたらしい。
「金儲けのチャンスがゼロじゃないの!」と憤慨していたが、それでも委員長の不正の帳簿を見つけ出し、悪の根源を暴く手助けをした。彼女のその**プロ意識**には、頭が下がる。
そして、ポヨ。
あの小さな白い魔物は、今回も無邪気だった。
なぜか、あの怪しげな粘土を舐めても、すぐに元のふわふわに戻っていた。彼だけが、この均等な村で、異彩を放っていた。そして、その異物感が、結果的に村人たちの心に疑問を投げかけるきっかけになったのだろう。
泉のほとりで、村人たちが互いに自分の好きな色や形を主張し、多様性を喜び合う姿を目にした時、私の心は、静かな満足感に満たされた。彼らの瞳に再び宿った輝きは、何よりも雄弁だった。そして、泉から感じられた「個性の味」は、心に温かい何かを灯すようだった。
「んー!やっぱり、本当の個性は、体がポカポカして、心が洗われる味がするってことだよね!」
殿下がそう仰った時、泉のほとりに咲き乱れる色とりどりの花々が、風に揺れて、村全体に優しい香りを放った。それは、偽りの料理の、あの無味無臭の匂いとは全く違う、温かく、鮮やかで、そして希望に満ちた香りだった。
私は、再び空を見上げた。
殿下の旅は、これからも続く。
そして、その旅が、世界にどんな「美味しいもの」をもたらすのか。
私の心は、静かな期待に満たされていた。
この清らかな個性の光が、この村に永遠に宿りますように。
私は、静かに、そう願った。
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この物語は、水戸黄門を愛する転生王女サクラと、彼女に振り回されつつも支える個性豊かな仲間たちの、のほほん痛快な世直しコメディです。
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