幕間:リアナの胃の叫び
「まさか、ここまでとは…」
夜の「偽りの里」は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。宿の部屋で、私はそっと胃に手を当てる。ズキズキと痛む。今回の胃痛は、いつもよりたちが悪い。
村に着いた瞬間から、胸騒ぎがしていた。空気全体が、どこかピリピリとした、不信感に満ちた匂いを放っていたのだ。村人たちは皆、穏やかな笑顔を浮かべているのに、その言葉にはどこか裏があり、互いの顔を見合わせるたびに、小さな探り合いが始まる。
殿下は、相変わらず能天気な様子で、「すっごく甘い匂いがするのに、なんだか心がチクチクする気がする!」と仰った。彼女の**食べ物への執着**は、時に驚くべき洞察力を発揮するが、今回ばかりは、その「甘い匂い」と「心のチクチク」という表現に、私は頭を抱えたくなった。
「嘘の味?信頼がなくなる味?殿下、それは一体どういう…」
私の困惑を他所に、殿下は例の「真実を隠す料理」とやらを何の躊躇もなく口にした。その瞬間、私の胃が、文字通り「ぎゅるるるるるる」と悲鳴を上げた気がした。
あの料理を一口食べただけで、「食べた後、誰の顔も思い出せなくなるってことだよね!友達の名前も忘れちゃう味がする…」などと宣う殿下には、もはや驚きを通り越して呆れるしかない。しかし、彼女のその**幸運な洞察力**が、今回も事件の核心を突くことになったのだから、世の中は皮肉なものだ。
地下室で見た光景は、胃にさらに追い打ちをかけた。
魔導具で人々の「誠実さ」を抽出し、それを甘味料に混ぜて料理として提供する。その発想が、すでに私には理解不能だった。人々が自ら進んで嘘をつくことを選び、その結果、互いの信頼を失い、村が崩壊寸前になっている。これは、一種の精神的な病だ。そして、その原因が「料理」にあるなど、誰が信じるだろうか。
「こんなもの、料理に使うなんて…!」
殿下が心底嫌そうに吐き捨てた言葉は、私の心に深く響いた。彼女の「美味しくない」という基準は、単なる味覚ではない。それは、人の心を傷つけ、社会を歪める行為に対する、純粋な嫌悪感なのだ。
ガルドの**過剰な破壊**は、今回も健在だった。
食堂の壁に穴が開き、悪党どもが軒並み吹っ飛んでいく。彼の力は、確かに絶大だ。しかし、その破壊力で毎回建物を修復する手間を考えると、胃がキリキリと痛む。だが、彼がいなければ、私たちだけでは、ここまで迅速に悪党を制圧することはできない。彼の無言の忠誠心には、感謝しかない。
セレネの精霊術は、いつもながら優雅で、そして効果的だ。
フクロウや虫を使った足止めは、コミカルながらも、敵の動きを的確に封じる。そして、何よりも、彼女が真実の光を放つ泉を見つけ出した時、私は安堵のため息を漏らした。彼女の存在は、この旅における癒しだ。
リネットは、今回も金銭的な側面から事件を分析していた。
「ちっ、今回はあんまり儲けにならなかったわねぇ…」とぼやきながらも、彼女は確実に不正の帳簿を押さえ、悪党の隠し財産を洗い出していた。彼女の金への執着は、時に私たちの行動を助ける。そして、彼女が時折見せる、弱き者への僅かな同情は、彼女がただの守銭奴ではないことを物語っている。
そして、ポヨ。
今回も、怪しげな甘味料を舐めていた。彼の無垢な行動が、いつも重要な手掛かりを偶然にもたらす。あの小さな白い塊が、殿下の旅を支える、ある種の「マスコット」であり「幸運の女神」であることは、もはや否定できない。
泉のほとりで、村人たちが互いに正直な言葉を交わし、信頼を取り戻していく姿は、本当に清々しかった。彼らの瞳に再び宿った輝きは、何よりも雄弁だった。そして、泉から感じられた「誠実さの味」は、胃の痛みを和らげてくれるような、優しい味がした。
「んー!やっぱり、本当の真実は、体がポカポカして、心が洗われる味がするってことだよね!」
殿下の言葉に、私はまた深いため息をついた。
正直なところ、胃はまだ痛む。この旅は、私の胃にとって、まさに試練の連続だ。しかし、殿下の純粋な正義感と、彼女の言葉がもたらす奇跡を間近で見ていると、この苦労も報われる気がする。
「やれやれ…次は何の『味』を見つけることになるのやら…」
胃薬をポケットから取り出し、そっと口に含む。
明日もまた、殿下の「世直し」は続くのだろう。そして、私の胃の苦労も。
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この度は、「迷子王女は今日も行く! ~お腹と世直しは別腹ってことだよね!~」第十一話をお読みいただき、誠にありがとうございます!
この物語は、水戸黄門を愛する転生王女サクラと、彼女に振り回されつつも支える個性豊かな仲間たちの、のほほん痛快な世直しコメディです。
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