幕間:ガルドの静かなる観察
音色の里に夜の帳が降りる。昼間の騒がしさが嘘のように、村は静まり返っていた。俺は、長老から提供された簡素な宿の縁側に腰を下ろし、静かに空を見上げていた。今日の騒動で破壊された食堂の残骸が、まだ記憶に新しい。
「フン。」
小さく鼻を鳴らす。
今回もまた、奇妙な事件だった。
「音」を食べる料理。
殿下の奇妙な味覚は、時として厄介だが、その「不自然さ」を感じ取る直感は、時に悪事を暴く刃となる。あの「歌う宝石」から抽出された「偽りの音色」とやらが、人の心を蝕むとは。理解はできんが、殿下の言うことは常に真実を突く。彼女の**食べ物への執着**は、ただの食欲ではない。真実を見抜く、何かの力なのだろう。
村人たちの目は、生気を失っていた。
「音がする料理」を食しながら、ぼんやりと虚空を見つめる姿は、まるで操り人形のようだった。ああいう、抗う力すら失った者を見るのは、好かん。力ある者が、無力な者から何もかもを奪う。それは、俺の正義に反する。
殿下は言った。「美味しいものは、元気を出して、心も体も満たしてくれるものなのに!こんな風に心を奪うなんて、全然美味しくない!」と。
「美味しくない」という基準が、殿下の「正義」なのだろう。理解に苦しむ表現ではあるが、その根底にあるのは、常に弱者を守り、不正を正すという、揺るぎない信念だ。
俺の仕事は、殿下を守り、その道を切り開くこと。
あの食堂の地下室に潜入したリアナから、「対処をお願いします」と連絡が入った時、迷いはなかった。迷う必要などない。悪を叩き潰すのみ。
食堂の入り口に立ちはだかった男たちは、弱かった。
俺の拳は、彼らを粉砕するためにある。壁にめり込み、意識を失う。それが彼らの末路だ。**過剰な破壊**と揶揄されることもあるが、必要なことだ。手加減をして、悪がのさばるなど、許せることではない。
リアナは、冷静で的確だ。
あの流れるような体術は、見るたびに感心させられる。彼女は、殿下の言葉の真意を理解し、その行動を支えている。そして、その表情は、感情をほとんど表に出さないが、時折見せる「呆れ顔」は、殿下に対する彼女なりの愛情表現なのだろう。
セレネは、不可思議な力を使う。
精霊たちと心を通わせ、敵を翻弄する。あの小さなコウモリや虫が、男たちを混乱させた時は、正直驚いた。だが、彼女の力がなければ、本当の「歌う宝石」の場所を見つけることはできなかっただろう。
リネットは、金の亡者だ。
常に金銭の匂いを嗅ぎつけ、儲け話を探している。今回も、悪党が隠していた金品を回収していた。彼女の行動は、時に理解しがたいが、情報の収集力と、いざという時の判断力は評価している。
そして、ポヨ。
あの白い塊は、いつも殿下の足元にいる。無邪気で、危険を顧みず、何でも口にする。今回も、あの「精神操作魔導具部品」とやらを、何の躊躇もなく舐めていた。そのおかげで、それが何であるか、すぐに分かった。彼の**幸運**は、殿下のそれと同等、いや、もしかしたらそれ以上かもしれん。
村人たちは、目を覚ました。
「偽りの音色」に囚われていた彼らの目には、再び光が宿った。彼らが、本当の「歌う宝石」を見つけた時の歓声は、偽りの音色とは比べ物にならないほど、力強く、美しいものだった。
殿下は、あの時、心から笑っていた。
「んー!やっぱり、本物の音色は、体がポカポカして、心が洗われる味がするってことだよね!」
彼女のその一言が、全てを物語っている。彼女が守ろうとしているのは、「美味しいもの」であり、それは「真実」であり「幸福」なのだろう。
俺は、これからも殿下を守る。
たとえ、その道がどんなに奇妙で、胃に負担をかけるものであったとしても。彼女の「デザートは別腹、悪人も別格」という、あの言葉。
「フン。」
ただそれだけだ。
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この度は、「迷子王女は今日も行く! ~お腹と世直しは別腹ってことだよね!~」第八話をお読みいただき、誠にありがとうございます!
この物語は、水戸黄門を愛する転生王女サクラと、彼女に振り回されつつも支える個性豊かな仲間たちの、のほほん痛快な世直しコメディです。
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