幕間:リアナの胃痛日誌
常夏の実りの里に夜の帳が降りた。昼間の喧騒が嘘のように、村は静けさに包まれている。私は、村の長老から提供された部屋の片隅で、静かに帳簿を整理していた。今日の騒動で発生した損害と、村の今後の復興費用について、頭の中で計算する。当然、ガルドが破壊した温室の修理費も含まれる。
「はぁ…また胃がキリキリと…」
思わず口からため息が漏れ、私は慣れた手つきで懐から胃薬を取り出した。この旅に出てから、胃薬の消費量はうなぎ上りだ。
今回の件も、殿下の**方向音痴**と**食べ物への執着**から始まった。どこへ行けばあんなに甘く、不自然な匂いのする村にたどり着けるのか。普通の感覚では理解できないが、殿下にとっては「美味しい匂い」が指針となるのだから、仕方ない。
あの「幸せの果実」を一口食べた時の、殿下のあの表情。
「甘すぎる!なんか、この甘さ、舌の奥が痺れる味がする!そして、ちょっと頭がふわふわするってことだよね!」
まさか、それが薬物の影響による酩酊状態を示唆しているとは、私もすぐには気づかなかった。殿下の**純粋な舌**は、味覚だけでなく、その裏に隠された不純物まで感じ取るらしい。本当に恐ろしいほどの**幸運な洞察力**だ。
村人たちの不自然な笑顔と、恍惚とした目。最初はただの陽気な村かと思ったが、殿下の言葉を聞いて、すぐに違和感を覚えた。彼らは「幸せの果実」という名の毒によって、現実から目を背けさせられ、労働力を搾取されていたのだ。
「美味しいものは、自然の恵みを大切に育てるものなのに!こんな嘘の幸せ、全然美味しくない!」
殿下がそう激怒した時、私はメイドとして、そして人として、彼女の言葉に深く共感した。あの純粋な怒りが、村人たちの目を覚ますきっかけとなったのだ。
ガルドの**過剰な破壊**は、今回も健在だった。温室の壁が崩れ、隠されていた薬物の貯蔵庫が露わになった時は、さすがに顔を引きつらせたが、結果的に証拠を暴くことになったのだから、良しとすべきなのだろう。彼の寡黙で圧倒的な力は、殿下の護衛として非常に頼りになる。胃への負担は大きいが。
セレネは、優雅に精霊たちを操り、男たちを翻弄した。森の小動物たちと共に、敵の視界を遮るというコミカルな攻撃も、彼女ならではだ。精霊たちの声を聞き、村の本当の「自然の果樹園」を見つけ出した彼女の力は、この旅において不可欠だ。
リネットは、いつものように金銭の匂いを嗅ぎつけ、素早く情報収集と金品の回収に動いていた。今回も、あの店主が隠していた不正な金銭を、ちゃっかり懐に収めていたようだが、彼女の情報がなければ、ここまでスムーズに事が運ばなかったのも事実だ。彼女の金の亡者ぶりには呆れるが、その実力は認めざるを得ない。
そして、ポヨ。あの小さな白い魔物は、常に殿下の側で、その行動を助ける。今回も、あの怪しげな「強力幻覚剤」の瓶を見つけ出し、その存在を殿下に知らせた。彼の無邪気な行動が、常に**幸運**を呼び込む。時々、突拍子もない行動をするため目が離せないが、彼の存在が殿下の心を和ませているのも確かだ。
夜風に乗って、村からは、村人たちの歌声が聞こえてくる。それは、あの不自然に陽気な歌声ではない。心からの喜びと、解放された安堵に満ちた、温かい歌声だ。彼らは、真の「幸せの果実」を見つけ、偽りの楽園から解放された。彼らの瞳には、もううつろな光はなく、生き生きとした輝きが宿っている。
私は、メイドとして、殿下の身の安全を守り、旅の段取りを整えることが使命だ。しかし、それだけではない。殿下の純粋な善意と、彼女が巻き起こす**幸運の嵐**が、世界に小さな変化をもたらしていくのを間近で見届けることは、何よりも尊い経験だ。
「殿下…あなたはこの世界の希望なのですね。」
私は、静かに胃薬を水で流し込んだ。
明日も、きっと殿下は何かとんでもないことをしでかすに違いない。また、どこかの村で「美味しい匂い」を嗅ぎつけ、トラブルに巻き込まれ、そして最終的には解決するのだろう。私の胃の苦労は続くが、それでも、この旅は続ける価値がある。
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この物語は、水戸黄門を愛する転生王女サクラと、彼女に振り回されつつも支える個性豊かな仲間たちの、のほほん痛快な世直しコメディです。
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