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迷子王女は今日も行く! ~お腹と世直しは別腹ってことだよね!~  作者: はぶさん


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幻惑の果実と偽りの楽園

波音の町での海の騒動を解決し、一行はさらに内陸へと旅路を進めていた。数日間の街道歩きで、季節は変わらず温暖な地域に入ったのか、道端には珍しい草花が咲き乱れている。そんな中、サクラはまたしても異変を察知した。


「ねえリアナ、なんか、空気が甘いってことだよね!そして、どこからか、すっごくフルーツの匂いがする!まるで、大きなケーキ屋さんにいるみたい!」


サクラは、鼻をひくつかせながら、道の脇に立つ看板を指差した。そこには『ようこそ!常夏の実りの里へ!幸せの果実があなたを待っています!』と、色鮮やかな果物の絵と共に書かれている。


「殿下、この先は『常夏の実りの里』という村だと聞いております。珍しい果物が一年中採れることで有名ですが、少々…この甘い香りは、自然のそれにしては濃厚すぎるような…」


リアナが冷静にサクラを促す。彼女は、これまでの経験から、サクラが「不自然な匂い」を感じた時には、必ず何か裏があると学習していた。


「ポヨ!ポヨ〜!」


足元では、ふわふわの白い魔物、ポヨがぴょんぴょんと跳ねながら、道端に落ちていた小さな果実の切れ端を齧っている。その切れ端からは、確かに異常なほど甘く、しかしどこか人工的な香りが漂っていた。ポヨの無邪気な姿に、リアナは少しだけ眉をひそめた。


村に入ると、そこは看板に偽りなく、まさに「常夏」の楽園だった。色とりどりの果物が木々にたわわに実り、村人たちは皆、満面の笑顔で歌い踊っている。彼らの足取りは軽く、表情は常に恍惚としたようだった。しかし、その陽気さは、どこか狂気を孕んでいるようにも見えた。


「いらっしゃいませー!ようこそ常夏の実りの里へ!さあさあ、こちらへ!今なら、特別に採れたての『幸せの果実』がございますぞ!この果実を食べれば、どんな悩みも忘れ、幸せな気持ちになれる!」


村一番の果物屋の店主らしき男が、サクラ一行に近づいてきた。その男の顔には、いかにも胡散臭い笑みが張り付いている。口元には金の歯が覗き、指にはいくつもの指輪が輝いていた。


「幸せの果実?なんか、とっても美味しそうな名前だね!ねえ、おじさん、この果物って、どんな味がするの?もしかして、虹の味がするとか、太陽の味がするとか…?」


サクラが目を輝かせながら尋ねた。男は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに取り繕う。


「ハハハ!お客様、果実に『虹の味』はございませんが、それはもう、全身に染み渡るような素晴らしい甘さでございます!どんな悲しみも忘れさせ、幸福だけをもたらす、まさに奇跡の果実なのです!」


「どんな悲しみも忘れさせてくれるってことだよね!それって、黄門様が悪い人を懲らしめるのと同じくらいすごいことだよね!すごい!私、早くその奇跡の果実を食べたいな!あ、でも、ちゃんと果実の味を確認しないとね!」


サクラは興奮気味に、男の話に食いついた。リアナはそんなサクラの隣で、冷静に男と村人たちを観察する。男の目には、客への純粋な歓迎の気持ちよりも、金への執着が強く見て取れた。村人たちの笑顔は、あまりにも不自然で、どこか人形めいている。彼らの言葉の端々には、いかにもな誇張と、隠しきれない焦りが滲んでいる。


「ええ、ええ!ぜひぜひ!ですが、こちらの果実は、特別な方法で育てておりまして…お客様方のような高貴なお方には、特別に、こちらの『至福の黄金果実セット』を…」


男がにやにやと笑いながら、高額な料金を提示してきた。その額は、通常の果物の数倍にもなる。村人たちの笑顔の裏に隠された疲弊は、この高すぎる果実の代償なのだろうか。


「おや、それは随分と高価ですね。奇跡の効能があるとはいえ、少々…この料金では、この村の住民の方々も、なかなか毎日利用できないのでは?」


リアナが冷静に交渉しようと口を開いた、その時。リネットが、背後からひょっこり顔を出した。金にがめつい情報屋のドワーフだ。彼女もまた、この「幸せの果実」の噂を聞きつけて、儲け話を探しにきていたらしい。彼女の耳は、常に金儲けの匂いを嗅ぎつける。


「あの果物屋の店主、最近急速に財を成したって噂よ。元々はただの肥料商人だったくせにね。裏では、相当汚い真似してるって話もちらほら。どうやら、この村の果樹園を独占しようとしてるとかしないとか…。で、おいくら?この情報、タダじゃないから。」


リネットが冷静に情報を提示し、リアナに手のひらを向けた。リアナは思わず額に手を当てる。こんな状況でも金銭要求をするリネットに、もはや驚きはしない。


「リネット、今はそういう時では…!」


その時、サクラが男から差し出された「幸せの果実」をじっと見つめていた。その果実は、異常なほど大きく、鮮やかな色合いをしている。サクラは一口かじると、そのあまりの甘さに目を見開いた。


「んんーっ!甘い!すっごく甘いってことだよね!今まで食べたどんなお菓子よりも甘い!でも…なんか、この甘さ、舌の奥が痺れる味がする!そして、ちょっと頭がふわふわするってことだよね!美味しいんだけど、心がザワザワする味…」


サクラの言葉に、男はギョッとしたように目を見開いた。彼女の**食べ物への執着**と**幸運な洞察力**が、またもや思わぬ形で核心を突いたのだ。


「お客様、何を仰る!それは幸福が体に染み渡っている証拠でございますぞ!この地の恵みが凝縮された、奇跡の味で…!」


男が必死に取り繕おうとするが、サクラはさらに言葉を続ける。


「うーん…でもね、前世で食べた美味しい果物は、もっと自然な甘さで、食べた後も心が落ち着いたんだよね。この果実は、なんか、体がフワフワして、変な夢を見そうな味がするってことだよね!おまけに、なんか変な化学薬品みたいな匂いもする気がする…あれ?この匂い…どこかで嗅いだことがあるような…」


その言葉に、男の額に大粒の汗が浮かび始めた。彼の視線が、一瞬だけ、村の奥にある大きな温室へと向かったのを、リアナは見逃さなかった。長年の経験が、そこには何か隠された事実があることを告げていた。


「殿下、少し待たせてください。私が様子を見て参ります。」


リアナはそう言うと、男が注意を逸らしている隙に、素早く村の奥の温室へと回り込んだ。彼女は足音一つ立てずに進み、気配を完全に消している。


温室の中は、異常なほど高温多湿に保たれていた。そこには、大量の「幸せの果実」が栽培されているが、その果実たちは、魔導具から伸びる怪しげな光を浴びて、不自然な速度で成長している。そして、果実の周りには、大量の怪しげな液体が入った瓶が散乱している。液体は果実に直接注入されているようだった。


「これは…!やはり、魔術と薬物で果実を強制成長させ、さらに何かを注入していたのですね!しかも、この液体の匂いは…酩酊作用のある薬物の匂い…!これでは、村人たちは…!」


リアナは怒りに震えながら、すぐさまその場で情報を整理し、携帯用の通信機でガルドに連絡を入れる。


「ガルド、村の奥の温室です。偽装の証拠を確認しました。対処をお願いします。」


「フン。」


ガルドからの短い返事とともに、村の広場から微かな振動が伝わってきた。ガルドが動き出した証拠だ。彼の行動は常に的確で、迅速だ。


「まあ、おいたは止めましょうね。」


セレネが優雅に声をかけ、温室の裏口からこっそり忍び込んでいた男たちを、森の小動物たち(小さなリスや、飛ぶ虫たち)と共に足止めする。リスが男たちの足元を駆け回り、虫たちが頭上を飛び交って視界を遮る。混乱する男たちの間を、セレネはひらひらと舞うように動き、彼らの動きを封じていく。彼女の舞は、敵意なく、しかし確実に相手を翻弄する。


「ポヨ!ポヨ〜!」


その間にも、ポヨは温室の中にあった、先ほどサクラが感じた「変な化学薬品みたいな匂い」の元である怪しげな液体が入っていた瓶を見つけると、興味津々にその匂いを嗅いだ。そして、ごくわずかにペロリと舐めてしまった。すると、ポヨの体が少しだけ膨らみ、不思議な光を放ち始めた。毒ではないらしいが、何か奇妙な効果があるようだ。


その時、村の広場から怒鳴り声が聞こえてきた。


「なんだと!貴様ら、一体何者だ!勝手に俺の楽園に…!全員叩き出してしまえ!」


肥満体の店主が、配下の男たちを連れて駆けつけてきた。彼の顔には、憤怒と焦りが入り混じっている。背後には、彼が不正に蓄えた金銭と、高価な衣類に身を包んだ複数の商人らしき男たちが控えていた。彼らは、この「偽りの楽園」の共同出資者たちなのだろう。


「あなたの楽園などではありません。これは、人々の心を騙し、人生を奪う、偽りの楽園です!そして、その不正は、この帳簿と、この毒々しい液体が証明しています!」


リアナが正面に立ち、店主と商人たちを睨みつけた。その手には、先ほどガルドが回収した不正の帳簿が握られている。その背後には、ガルドがすでに数人の男たちを無力化し、無言で立ちはだかっていた。彼の周囲には、木製の破片や倒れた男たちが散らばっており、その破壊力を物語っていた。


「くっ…小娘が!叩き出せ!全員叩き出してしまえ!」


店主が叫ぶと、男たちが一斉に襲いかかってくる。


「はぁ…本当に、どこへ行ってもご乱心な連中ばかりですね。殿下、彼らに教えて差し上げましょう。王族の旅を邪魔すると、どうなるかを。」


リアナはため息をつくと、構えた男たちの懐に飛び込んだ。流れるような体術と、的確な急所への打撃で、次々と男たちを無力化していく。彼女の動きは一切の無駄がなく、流れる水のようだった。男たちは、自分がどうして倒れたのかすら理解できないまま、地面に崩れ落ちていく。その表情は、まさにリアナの**顔芸**に匹敵するほどの驚愕に満ちていた。


セレネは優雅に舞うように男たちの間をすり抜け、彼らの足元に小さな精霊の光を放った。光に驚いた男たちが足をもつれさせて転倒する。さらに、セレネと心を通わせた森の小動物たちが、男たちの頭上を飛び回り、的確に糞を落として視界を遮るという、なんとも言えないコミカルな攻撃も加わった。


「うわっ!なんだこれ!鳥が俺を狙ってやがる!?」


「目が、目がぁ!誰か助けてくれ!」


男たちが混乱に陥る中、ガルドは黙々と、しかし容赦なく残りの男たちを薙ぎ払っていく。彼の拳と足技は、まるで嵐のようだった。一撃で地面にめり込む者、吹き飛ばされて小屋の壁に激突する者。男たちは抵抗する間もなく、次々と地面に倒れ伏していく。その威力は、まさに**過剰な破壊**。温室の壁にも、いくつもの大きな穴が開いていく。


最後に残った店主が、恐怖に顔を引きつらせながら逃げ出そうとした。だが、彼の前にサクラが立つ。彼女は真剣な眼差しで、その男を見上げた。


「あのね、おじさん。果物ってね、太陽の恵みと大地の力で、ゆっくり美味しくなるものなんだよ。それを無理やり育てたり、変なものを混ぜたりしたら、全然美味しくないし、みんなを騙すことになっちゃうってことだよね!こんな嘘の幸せ、許せない!」


男は呆然とサクラを見つめる。その時、サクラは懐から小さな、可愛らしい装飾が施されたコンパクトを取り出した。それは、国王である父が旅の安全を願って持たせてくれた、王家の紋章が刻まれた特別な品だった。普段は中におやつを入れているのだが、今はその存在を悪人に見せつける時だと、なぜか直感したのだ。


サクラはコンパクトをゆっくりと開き、そこに輝く王家の紋章を、肥満体の男に突きつけた。


「そしてね、私の父上も言ってたんだ!困っている人を助けるのは、王族の務めだって!この紋章が、その証拠ってことだよね!これを見ても、まだ自分のしたことが悪いことじゃないって言うの!?」


男の顔から血の気が引いた。王家の紋章。それが示す意味を、彼は知っていた。彼の背後に控えていた商人たちも、顔色を失い、恐怖に震え上がった。


**「このお腹が、悪事を許さないってことだよね! デザートは別腹、悪人も別格、ってね!」**


その言葉を合図にするかのように、ガルドが男の背後に立ち、「フン。」と、今にも地面にめり込みそうな勢いで拳を振り上げた。男は王家の紋章と、眼前に迫るガルドの拳に恐怖で顔を引きつらせ、そのまま泡を吹いて気絶し、地面に倒れ込んだ。残っていた商人たちも、その光景に震え上がり、次々と両手を上げて降伏した。


騒動が収まると、駆けつけてきた村人たちが、まだ酩酊から覚めないながらも、口々に感謝の言葉を述べた。彼らは皆、あの「幸せの果実」に依存し、労働力を搾取されていたことに、薄々気づき始めていたのだという。


「殿下、これが、この果物屋の帳簿です。」


リアナが、店主が逃げ出す際に落としていった分厚い帳簿をサクラに差し出した。そこには、果実の強制成長に必要な魔導具と薬物の購入記録、そして村人から不当に巻き上げた金銭の記録がびっしりと記されていた。


「うーん、これ、なんかすごく数字がいっぱい並んでて、全然美味しくないってことだよね!」


サクラは帳簿をパラパラとめくると、興味なさそうに首を傾げた。その横で、ポヨが「ポヨ!」と先ほど舐めた怪しげな液体が入っていた瓶をくわえてきた。瓶のラベルには、小さな文字で『強力幻覚剤』と書かれている。


「殿下、これをご覧ください!やはり、この果実には幻覚作用のある薬物が混入されていたのですね!これでは、村人たちは永遠に偽りの幸福の中で生きていくことに…!」


リアナが憤慨しながら叫んだ。


「へー、幻覚剤って、なんか怖い響きだね!でも、全然美味しくなさそうな甘さってことだよね!っていうか、この匂い…そうか!前世で見た、テレビで出てきた、麻薬みたいな匂いに似てるってことだよね!これを果物に入れるなんて…!」


サクラはそう言いながらも、その瓶をじっと見つめ、何かを確信したように顔を上げた。彼女の頭の中で、前世で見たテレビ番組の映像と、目の前の状況が繋がり始める。彼女の脳内は常に食べ物でいっぱいだが、その中に紛れて、時折、**幸運な洞察力**が閃くのだ。


「殿下、何かに気づかれましたか?」


リアナが問いかけると、サクラは大きく頷いた。


「うん!あのね、本当の果実はね、太陽の光をいっぱい浴びて、大地の栄養をたっぷり吸って育つんだよ!だから、この村には、きっと、美味しい果実が自然に育つ場所があるはずだよ!だって、この村の匂い、ただの幻覚剤じゃないもん!」


その言葉に、村人たちは驚き、希望の光を宿した目でサクラを見つめた。彼らはこの地で長年暮らしているが、この果物屋の果実が唯一無二だと信じ込まされ、自分たちの村の本当の豊かさを忘れていたのだ。しかし、王女の言葉、そして何よりその純粋な眼差しが、彼らに新たな希望を与えた。


「フン。」


ガルドが頷き、村の裏手の森を指差した。セレネもまた、精霊たちの声に耳を傾けていた。


「殿下のおっしゃる通りです。この土地の精霊たちが、奥の方から豊かな大地の息吹を感じると告げています。偽りの温室の奥に、本物の果樹園があるようです。」


セレネが優雅に告げると、村人たちの間に歓声が沸き起こった。サクラの**幸運**と、仲間たちのそれぞれの能力が、再び一つになった瞬間だった。


一行は村人たちと共に森の奥へと進み、セレネが示した場所をガルドが切り開いた。彼の怪力によって、鬱蒼とした森の中に、見事な果樹園が姿を現した。そこには、太陽の光を浴びて自然に熟した、瑞々しい果実がたわわに実っていた。その果実は、控えめながらも上品な甘さを持ち、心が安らぐような香りを放っていた。


村人たちは歓喜し、次々と新しい果樹園の果実を口にし、その自然な甘さと香りに感動の声を上げた。偽りの楽園に囚われていた彼らに、ようやく真の幸福が訪れたのだ。そして、彼らの瞳からは、うつろな光が消え、はっきりとした輝きが戻っていた。


サクラは、自然の恵みが詰まった果実を眺めながら、にこにこと笑った。その顔は、満面の笑みで美味しい料理を頬張る時と全く同じだった。


「んー!やっぱり、本物の果実は、体がポカポカして、心が洗われる味がするってことだよね!これなら、黄門様もきっと喜んでくれるよ!お肌もツルツルになるし、また美味しいものがたくさん食べられる元気が出てくる!」


その言葉に、リアナはまたもや深いため息をつくのだった。この旅は、まだまだ始まったばかりだ。そして、彼女の胃の苦労も、きっと終わらない。


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### 読者の皆様へご報告とおねがい


この度は、「迷子王女は今日も行く! ~お腹と世直しは別腹ってことだよね!~」第六話をお読みいただき、誠にありがとうございます!


この物語は、水戸黄門を愛する転生王女サクラと、彼女に振り回されつつも支える個性豊かな仲間たちの、のほほん痛快な世直しコメディです。


**毎日1話更新**を目標に、皆様に笑顔と少しの癒しをお届けできるよう頑張ります!


もし少しでも「面白いな」と感じていただけたら、ぜひ**お気に入り登録**をしていただけると、今後の執筆の大きな励みになります。


そして、皆様からの**応援コメント**は、作者にとって何よりの喜びです!どんな些細な感想でも大歓迎ですので、ぜひお気軽にお寄せください。ただし、批判コメントは作者の心が折れてしまうかもしれないので、**少な目でお願いしたい**です…!


それでは、次回もお楽しみに!


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