初出勤
目が覚めたとき、俺は
「……血のように黒くて赤い絨毯に寝てた」
王城の広間はこんな黒かったか?
ぼんやりと視線を上げると、ありえないサイズの玉座
そしてその上に――
「んっ 子供? 角あるから魔物?」
黒い制服――私立小学校の冬服みたいなのを着た女の子
頭には角があり、見た目は10歳くらいだろうか
似合わないサイズの玉座にドヤ顔でふんぞり返っている
「子供ではない 第3代魔王 マオ=デ=スケジュール様だ」
隣にいた魔人が答えた
さっき俺を誘拐したやつだ
「魔王様 このキンニク=ノウキンめがお連れしました 伝承にある【シフト】持ちです」
キンニクなのに態度はまさかの執事系だ
筋肉と丁寧語のミスマッチに脳がバグりそう
「んむ 良くやった やはりキンニクは全てを解決するな」
玉座のロリ魔王がドヤ顔でうなずく
目線が再びコチラと合う
「して、シフトを作れし者よ 我が城へようこそ」
「えっ……まぁどうも」
ようこそ というか連れ去られたんだが……
困惑している俺を見て、魔王がずいっと身を乗り出してきた
その目はキラキラ 、幼い年なりの興味津々という感じで尋ねる
「伝承にあるシフトがどんな物かは知らん とりあえず不満を無くし世界が平和になると聞いておる」
『だいぶ盛られてませんか、それ……?』
「初代魔王軍にシフト管理があった頃は今とは違ったと言い伝えられておる」
「というわけで汝 今日から魔王軍の勤務管理将軍じゃ」
「えっ? 俺さっきまで王国のただの雑務係ですけど」
「心配ない 使えなければ消すまでじゃ」
――
こうして雑務係だった俺は
シフト管理将軍としてシブラック職場を立て直す羽目になった
知らない伝承と――
まずは自分の命のために