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【完結】お兄様の恋路を本気で応援するつもりだったんです。。。  作者: 月にひにけに


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6/11

6.お風呂上がりは2割増!

「レオ様!! こっ、これは違うんです!! ただの兄弟愛でして!!」


「うん。……うん? うん、2人の仲が良いのはわかってるよ?」


 いつもの笑顔ながら一瞬怪訝そうな疑問符を挟んだレオは、借り出されたシルクの夜着を身に纏うとほかほかと満足げにその美しい金髪を揺らして室内へと踏み入れた。


「お先にお湯をありがとう。……で、何を面白そうなことしてるんだい?」


 にこにこと良い香りを漂わせて近づいてくるレオの言葉に、リーゼとアッシュは束の間見つめ合うと、こくりとどちらからともなく頷いて互いに平静を装いだす。


「な、何でもないんです!! 少し暑くて取り乱してしまって!!」


「ほ、ホントにこいつはお子さまだからよ!?」


「うん、2人とも全然説明になってないかな?」


「「えっ!?」」


 至極真っ当なレオの突っ込みに全く同じ反応をする挙動不審な兄妹に、ついにレオが堪えきれなくなって吹き出した。


「ははっ! 少し見ない間に2人していったいどうしたの。とりあえずアッシュは早くお湯を貰っておいでよ、後が詰まってるでしょ。リーゼちゃんはまだ寝ないようなら、せっかくだしもう少し僕とココで話さない?」


 そう言ってゆっくりとベッドに腰掛けているリーゼの右隣に座ると、隙だらけの湯上がり姿で微笑むレオの色香に、不覚にもリーゼの胸がドキリと鳴る。


「もっ、もちろんです!!」


「お、おう、じゃぁ俺は身体を流して来るからな! まぁゆっくりしてろよ! あ、でも変なこと考えるんじゃねぇぞ!?」


「はいはい」


「心配しなくても大丈夫ですよ、お兄様」


 調子が戻りきらないのか、しどろもどろになりながらも必死な表情でビシリと釘を刺すアッシュに、レオとリーゼは苦笑する。


ーーレオ様はお兄様にゾッコンなのに、お2人を応援する私を警戒せずにはいられないなんて可愛いんだからぁ。もう、そんな所が誘い受けなんですよっ!! きゃー!!


 なんて心の中でリーゼが考えていることなど知ってか知らずか、アッシュはバタバタと慌ただしく部屋を出ていった。一方で部屋に取り残された年頃の男女の間には、束の間奇妙な沈黙が降りる。


 あれ、レオ様と2人の時ってこんな感じだったかしら? なんて、邪な妄想をしていた手前若干の居心地悪さを感じるリーゼ。


 頭の中がバレている訳がないとは思いつつ、そろりと横に腰掛けるレオを見上げれば、翠の瞳とばちっと音が鳴りそうな程に目が合って固まった。


「どうかした?」


 見れば見るほどに美しい容姿を彩る翠の瞳は優しく笑んで、普段はきちっとまとめている金髪は緩く乱れてこぼれ落ちる。


 男性にしては白い肌はまるで陶器のようにツルツルで、レオが無意識に垂れ流す色気の濃度に間近で当てられてクラクラした。


「あ、あっ! そう言えば、レオ様のお姉様はお元気ですか!? 嫁ぎ先が大変だとお伺いしたような……っ」


「あぁ、姉さんね。最初は何かと大変だったみたいだけど、最近はうまくやれてるらしいよ」


「それは良かったです……っ!! お姉様はお優しいですから、大丈夫だろうとは思っていたんですが、お話しを聞いて心配していたんです……っ!」


 レオから更に歳が離れているため、レオに比べれば遊ぶ頻度は少なかったけれど、幼いながら遊んでもらった記憶はよく覚えている。


 レオに似て賢くて美しく優しい、リーゼにとって理想のお姉さんの象徴のような人だった。


「嫁ぎ先の先輩夫人と趣味が合って仲良くなれたらしいよ? ……なんでも、最近流行ってる女性向け娯楽? で日々盛り上がってるんだってーー」


「ぶふっ!!」


 けろっとしながら説明をしてくれるレオの会話内容に、リーゼは顔を背けて吹き出した。


「リーゼちゃんも知ってる?」


「いっ、いえ、あのっ、さっ、さすが博識なお姉様ですわっ!! 流行の最先端をよくご存知なんですねっ!?」


 別の意味でドキドキとしながら、リーゼはこちらを注意深く覗き込んでいる気がするレオから視線を泳がせる。


 とてもではないが目を合わせることは出来そうになかった。


「……アッシュとリーゼちゃんて、綺麗な銀髪も、吸い込まれそうな碧眼も、表情や反応まで、よく似てるよね」


「そ、そうですか? アッシュお兄様が聞いたらきっとまたブーブー言いますよ! あんなのと一緒にするなー! って」


 あははと苦笑混じりに返せば、中々感じさせぬ雰囲気を醸し出したレオが左手をベッドについて、スッと右手を伸ばす。必然と、2人の距離感が近くなった。


「うん、よく似てるよ」


 スイと長い銀の髪束をその指先に攫われて、髪先に口付けを落とされたリーゼはふふと笑んだレオにボワっと赤面した。


 こんな甘いマスクで囁かれたら、あの素直でないアッシュでもそりゃぁ陥落しそうだと再認識する。


「2人共を知ってるからさ、あ、多分こんな顔するんだろうなって、思う時がある」


「そ、それはーー……」


ーー今こうしている間も私を通してアッシュお兄様のことを思い返しているってことですかっ!?


 きゅぅんと途端に高鳴る胸に目を輝かせるリーゼを、何事かを考える様子でありながら何かを達観したかのような面持ちで無言で見下ろすレオ。


 向き合う両者の表情はどことなくちぐはぐな空気を醸すが、それどころではないリーゼはそんなことには気づかない。


「ーーまぁ、他が目に入らないようならもうそれでいいよ」


 くしゃりと前髪を掻き上げて、はぁと謎のため息を溢すレオに、リーゼはキョトンとしてその顔を見る。


「自信を持って下さいませ、レオ様! レオ様以外に入り込む心の隙間なんてありませんよ!!」


 だってあの素直でないアッシュお兄様が、ベタ惚れでないレオ様にあんなことやそんなことを許す訳がありませんから!! つまり許されている時点で確かな愛なんです!!


 ずずいっとその勢いのままに身体を寄せて、必死な表情で力説するリーゼ。


 その圧に押された様子のレオは、少し驚いた顔をした後に、ふはっと困ったような顔で息を吐き出した。


「君たち兄妹には、敵わないな」


 そう言って優しく微笑むと、頭をそっと撫でられる。


 昔を思い出して、何だか気恥ずかしくて、くすぐったくて、リーゼは視線を泳がせた。


「ーーもう少しだけ、待ってて。……あと、もう少しだから」


 どきりとした胸の内に見ないふりをして、その翠の瞳を見返したその時ーー。


「キサマら人の部屋のベッドで何しとるんじゃアホーーっ!!!!」


 そんな魅惑の空気を打ち破って勢いよく扉を開け放ったのは、つい今し方出て行ったばかりの鬼の形相のアッシュだった。


 全身ずぶ濡れ。なんなら泡までついていないかと疑わしい状態で、明らかに慌てて戻って来たことが伺える半裸状態。


 一目散に走って来たのか、その息はひどく荒れている。そんな聞き迫る形相とは打って変わって、【ベッド】と言う単語への声量が見事に配慮されているのは流石の一言だった。


「お、お兄様、なぜそんな格好に……っ!?」


 アワアワとレオから最大限に距離を取りながら、リーゼは浮気現場を見られたさながらの勢いで真っ青に慌てふためいた。


「あれあれ、戻ってくるの早くない?」


 悪びれもなくにっこりと笑顔を向けるレオを、肩でハァハァと息をするアッシュはギロリと睨む。


「ベッドに座ってたお前らを思い出して、ゆっくりなんてできるわけないだろうがっ!!!」


 目を釣り上げて怒鳴るアッシュに、リーゼは真っ青になったままガタガタと自らの口を押さえたーー。





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