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【完結】お兄様の恋路を本気で応援するつもりだったんです。。。  作者: 月にひにけに


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4/11

4.お泊まりですかそうですか!

「本日は泊まられていくんですかっ!?」


「遅くなっちゃったしねぇ」


「お前なんでそんな無駄に嬉しそうなんだよ……」


 あははーと笑顔のレオ様に、皆が預かり知らぬ所でパァッと顔を輝かせるリーゼ。そして明らかに不信そうに顔を歪めるアッシュ。


「ほほほ、ゆっくりしていきなさーい」


「いつも美味しいお茶菓子を恐縮です。本当にいつ見ても2人の母とは思えないくらいお美しくて、会う度に驚きます」


「あらやだ、またお菓子を買っておくわねぇ」


「いえいえ、本当にお構いなく。本日も気を遣ってお誘い下さりありがとうございます」


「………………」


 無駄に上機嫌なロッテ伯爵夫人と、流れるように会話をするレオ。その様子を物言いたげな顔で見つめるアッシュとリーゼにロッテ伯爵。


 そんな中でニコニコと慣れた様子で笑顔を振り撒くレオ。お決まりの光景には屋敷の者たちも慣れたものだった。


「本当にレオちゃんはいつ見ても男前ねぇ。アッシュもリーゼもせっかくこんなに可愛く産んであげたんだから、レオちゃんみたいにもう少ししっかりしてくれると安心なんだけどーー」


「こいつらと一緒にすんじゃねぇ」


「いやいや、私は結構まともだと思います」


「お前本気で言ってるなら結構ヤバいからな?」


 片頬を押さえながら明らかに浮かれている母親に苦言を呈するアッシュとリーゼの小競り合いに苦笑して、レオは口を開く。


「ご心配には及びませんよ伯爵夫人。アッシュは多分、家族に安心し切ってこういう態度をあえて取っているだけですから。外では数多の令嬢たちの心を攫って同性からの人気も高く、僕から見ても惚れ惚れするような頼りがいのある優しい男です」


「あらまぁ!!」


「ふんっ」


 明らかにお世辞が含まれているレオの言葉に瞳を輝かせるロッテ伯爵夫人と、不機嫌そうな空気を醸し出しながらも満更ではない顔をして照れるアッシュをリーゼは横目で盗み見る。


ーーさすがレオ様だわ!! アッシュお兄様の扱いどころかお母様の扱いも相変わらずお手のものね!!


 心からその手腕に敬服しながらも、照れるアッシュにニコニコ笑顔のレオのツーショットが、リーゼの心をソワソワとさせる。


ーー本日は朝から一日中一緒にいたと言いますのに、一緒にいればいるほどお側にいたくなるのですね!! ええ、わかりますよ、わかりますとも!! そのお気持ち!!


 お二人の仲睦まじいお姿はまだまだ供給不足ですわぁ!! なんてムフムフと場違いに1人にやけるリーゼ。


 そしてその様子を横目で眺めるレオ。を眺めるロッテ伯爵。


「あんなに小さかったリーゼ令嬢も、最近はすっかりと美しく聡明なレディになって。……ずっと妹みたいに思っていたのに、僕もついドキドキとしてしまうことが増えて困っています」


「えっ!?」


「まぁっ!?」


「おいっ!」


 ニコニコとした優しい笑顔で、少しだけ前屈みに顔を覗き込んでくるレオにぴくりと身体を強張らせたリーゼは思わず後退る。


「あらあらあらぁ、レオちゃんなら願ったり叶ったりよぉ!! ぜひぜひもらってやって頂戴!!」


「お母様っ!?」


「母さん! おい、レオもいい加減にしろ!!」


 にわかに盛り上がるロッテ家で、唯一と静かだったロッテ伯爵はおもむろに口を開いた。


「ーーカーネル伯爵令息、息子と娘がいつも世話になっており感謝する。……して、約束は覚えているな?」


 ぴたりと張り詰めた空気が流れる中、レオはニコリとした笑顔を浮かべて、どことなく張り詰めた空気を纏ってその姿勢を正した。


「もちろんです、ロッテ伯爵。お約束はひと時として忘れてはおりません」


 真っ直ぐにロッテ伯爵を見据えて言葉を発するレオの言葉は、アッシュに対する真っ直ぐな想いを伝えるかのような錯覚をリーゼに抱かせ、その頬を赤く染め上げる。


「約束?」


「約束ってなんだ?」


 しかして何の話をしているのか思い当たらない2人は小首を傾げて顔を見合わせる。


「お前たちは知らんでいい。料理が冷める。早く席につきなさい」


 レオの回答に1人うむうむと頷いたロッテ伯爵は、ブーブーと文句を垂れるアッシュとリーゼを歯牙にもかけず、自身の顎髭を扱きながら背を向けた。


「あの人は心配性だから、何か言われたりしてもあまり重く受け止めなくてもいいのよ。どうぞこれからも子どもたちをよろしくね」


「とんでもありません。それは僕のセリフですよ」


 ギャァギャァと未だにうるさい2人とロッテ伯爵を眺めて、ロッテ伯爵夫人は仕様がないんだからとため息を吐いてレオに微笑みかける。


 それを受けてニコリと笑顔を返すレオをじっと見上げ、ロッテ伯爵夫人はポツリと呟いた。


「本当にいい男ねぇ……」


「お母様!?」


「母さん!?」


「いやね、冗談よ」


「しみじみ言うんじゃねぇよ!!」


「ははは……」


 賑やかなロッテ伯爵家に囲まれて、レオは困ったように苦笑した。

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