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第4話

(side:異世界人)


 真人王国は、長年に及ぶ熾烈な争い続けている魔族達に対抗するため、優れた能力を持った人間を作り出す技術を研究していた。

 この研究は多岐に渡り、長い歳月を経て幾つかの成功例が生み出されている。

 そして近年、異世界から人間を召喚するという手法が、ようやく形となったのだ

 異世界から人間を召喚するには多くの犠牲が必要であり、その成功率は限りなく低かった。

 だが、召喚に成功した者は何れも素晴らしい能力を持ち合わせており、特に『Sランク』と呼ばれる存在は魔王討伐の切り札として各国の期待を一身に集めていた。

 それから、莫大な予算を投入して研究に取り組んだ結果、召喚の成功率は飛躍的に上がっていった。

 つい数日前には、一度に多数の異世界人の召喚に成功。彼らは、『日本』という国の『クラスメイト』だったらしい。

 彼らもまた、魔王討伐のための訓練を受ける事になるのだが、そのうちの数名が、とある任務を任されたのだ。

 人造魔族・魔人アルファの討伐である。


「──で、俺たちが駆り出されるって訳だ」

「はぁ……だりーな」

「別にいいじゃん。タダで飯食える上に、給料まで貰えるんだぜ?」


 異世界人の一人・山田は、やる気無さそうに呟く。対して、もう一人の少年・鈴木は楽しげに笑っていた。

 そんな二人の様子を見て、リーダー格の男・加藤は呆れたように言う。


「お前らなあ……相手の魔人っていうのはかなり強い奴って話なんだぞ? もっと真剣になったらどうだ?」

「んだよ、加藤。ビビってんのか?」

「いや、そういう訳じゃねえが……」


 鈴木の問いに、加藤は言葉を詰まらせる。

 鈴木は、王都の噴水広場にあるベンチに寝そべりながら喋る。


「へーきへーき! 俺ら、メチャクチャ強い能力をゲットしたんだしさ。俺、早くこの力を使いたくて仕方ねーんだ!」

「そうそう。オレの能力は無敵だからな。魔人なんてサッサと片付けて、俺は寝たい」


 鈴木が自信に満ちた表情で答える。山田も自分の能力に疑いを持っていない様子だ。

 すると、他の異世界人達も同様に口を開いた。彼らも、魔人討伐の任を請け負った同じグループの仲間である。


「ま、確かにそうだな」

「そうそう! 僕たちなら魔王だって倒せる!」

「皆の言う通りよ! ──あ、そうだ。どうせなら誰が一番早く魔人を倒せたか勝負しましょうよ!」

「いいねえ! それ面白そう!」

「負けた奴はジュース奢りな!」


 異世界人達は、口々にそんな話をしていた。その様子を見て加藤が頭を抱える。


(はぁ……こいつら、マジで大丈夫かよ)


 それから加藤は、噴水広場の時計台を見て呟く。


「──そう言えば、赤坂と瀬良はまだ戻らないのか?」

「ん。待ち合わせの時間は過ぎてるのにな。瀬良はともかく、几帳面な赤坂が遅いのはちょっと変だな」

「もしかして、もう魔人と戦ってたりして!」

「ハッ、そりゃねーだろ」

(……本当にそうであってくれたら楽なんだがな)


 加藤は心の中で呟いた。


「……ん?」


 ふと、噴水広場に妙な気配が現れたのを感じ取ったが、それが誰の気配なのか全く分からなかった。しかし、それでもこの気配は明らかに異質だった。どす黒く粘性を帯びたような、ドロドロとしたオーラ。それは、決して人のものとは思えなかった。


「何か妙な気配がする……皆、一旦この場を離れよう──」


 加藤は仲間に呼びかけようとして──言葉を失った。

 いつの間にか、そこには見慣れぬ人物が佇んでいたのだ。

 彼の身長は約190cmと大柄。その体躯は鍛え上げられ、筋肉が皮膚の下で蠢いているように見えた。皮膚は石のように硬そうな質感を持っており、奇妙な紋様が刻まれ、緑色の光が微かに脈打っている。

 容姿こそ人間に近い印象を受けるが、彼の顔には鋭い特徴があり、髪は闇で染め上げたような漆黒で、目は炎のような赤で輝いていた。口元には鋭い歯が並んでおり、笑顔が怖ろしい印象を与える。

 服装は鮮やかな赤と黒の組み合わせで、豪華なデザインが施されていた。印象的なのは、彼の肩から地面まで垂れ下がる赤と黒のマントだ。マントの裾は装飾的な黒い縁取りが施されていた。赤い生地は真紅のように鮮やかで、夜の闇に浮かび上がるかのように輝いている。マントの胸元には宝石が取り付けられ、怪しげな輝きが放たれていた。


「……な……んだ……」


 しかし、加藤が驚愕したのは彼のその容姿ではなかった。

 彼の全身から放たれる圧倒的な存在感と、周囲に立ち込める濃密な魔力に気圧されていたのでもない。


「あ……ああ……」


 加藤の喉からは、絞り出すような情けない声しか出てこなかった。

 何故なら、目の前に突如として現れた彼が──。


 ──仲間の赤坂と瀬良の死体を、無造作に掴んでいたからだ。

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