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第17話

 エリシアは、俺の反応を見てクスクス笑うと説明を始めた。


「フェニックスはね、炎に包まれている間は常に回復し続けるのよ。それでも、倒すことは可能よ。ただ……不死鳥と呼ばれている通り、中々死なないのが厄介なのよね」


 なるほどな──と納得した瞬間だった。背後から凄まじい熱気を感じ取り、慌てて飛び退いた。

 直後──炎の怪鳥『フェニックス』が再び襲ってきたのだ。


「生き返りやがったか! ……へっ、丁度良い。今度は──」

「おいお前ら! 命が惜しければとっとと逃げるんだな!」

「ん?」


 不意に何者かの声が聞こえてきた気がしたのだが──気のせいだろうか? いや、間違いなく聞こえたはずだ……。

 しかし、そんなことはお構い無しにフェニックスが俺たち目掛けて襲いかかってくる。仕方なく応戦することにしたのだが──その時、俺の背後から何者かの気配を感じた。


(まさか……俺たち以外の冒険者か……?)


 そう思いながら振り返ると──そこには大きな鎌を持った少女がいた。


(あれは……)


 少女は、闇の底から生まれたかのような、漆黒に身を包んだ存在。彼女の装いは、死神のような妖艶さと厳粛さを併せ持っていた。

 その身に纏った衣装は、漆黒のシルクで縫われ、その光沢はまるで星座の闇夜に匹敵するだろう。襟元から裾にかけて、ゆったりとしたフードが垂れ下がり、その中に彼女の顔が隠れていた。衣服は細かい紋様が刻まれたエボニーの生地で仕立てられており、それが微かな青白い輝きを放っている。その模様は、遠くの星座を連想させ、まるで宇宙そのものがその身に宿ったかのようだ。

 そして、彼女の手には、冷たく鋭い光を放つ大鎌が握られていた。大鎌の柄は漆黒の金属でできており、その刃は月明かりをも凌駕する鋭さを感じさせる。鎌の刃は細かい装飾で飾られ、その美しさは死をも妖艶に映し出すかのようだ。

 少女の髪は長く、まるで真夜中の闇そのもののように漆黒で、風になびかせれば、星座のような光の点々が煌めいているかのように見えた。瞳は深淵のように暗く、そこには生と死、過去と未来、全ての謎が秘められているかのようだった。

 漆黒の衣装に身を包み、大鎌を手に闇の中を歩む者であり、その存在はまるで宇宙の秘密を知る者のように、神秘的で不可解なもの。

 ──死神のような衣装に身を包み、死神のような大鎌を持つ少女。それが彼女だった。


「……何者だ、お前」


 少女はそんな俺の問いかけを無視して背を向けると、フェニックスに向かって鎌を構えた。そして──目にも止まらぬ速さで斬りかかる。

 次の瞬間には、フェニックスは一瞬にして切り刻まれていた。


「おお……!」


 俺は思わず感嘆の声を上げた。


「……ふぅ」


 少女は、一息吐くとこちらを振り返ってこう言った。


「怪我は無いか? 少年」


 そう言って微笑む少女の表情は、幼い外見ながらもどこか大人びていて、それでいて見た目相応に可愛らしいものだった。


「あ、ああ……大丈夫だ。助けてくれたのか? なら、ありがとう……」


 俺がそう返事すると彼女は再び微笑んだ後、フェニックスの方に向き直ると、再び鎌を構えた。


「あとは任せろ」


 そう言って少女は、懐から小瓶を取り出すと、封を割った。

 すると、バラバラになったフェニックスの残骸が、小瓶の口の中に吸い込まれていった。


「何ぃぃ!?」


 俺が驚愕していると、少女は自慢げに答えた。


「これは私の持つ魔道具だ。特別な魔法が込められた小瓶でね……フェニックスのような不死の生き物を封じるのにうってつけなんだ」

「へぇ……そんな便利なものがあるんだな。あ、俺はアルファだ。こっちはエリシア。よろしくな」


 俺が自己紹介をすると、少女もそれに応えてくれた。


「私はイリス。見ての通りの死神さ。……でもまあ、今はしがないただの冒険者だけどね」


 そう言って彼女は微笑んだ。

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