第16話
炎の怪鳥は、燃え盛る翼を広げ、咆哮するその姿に思わず俺は圧倒される。
「コイツは……大物の予感がするな……っ!!」
本能的に強者の出現を察知した俺は、咄嗟にバックステップを踏むと──攻撃に転じるべく駆け出した。
が──次の瞬間には凄まじい衝撃と共に吹き飛ばされてしまう……。
「ぐっ!?」
地面を転がりながらも何とか受け身を取り体勢を立て直そうとするも──次の瞬間には喉元を鷲掴みにされ宙に持ち上げられていた。
「うぉおぉぉ!?」
凄まじい力で首を絞められ、常人なら呼吸ができなくなっていたことだろう。抵抗を試みるが、炎の怪鳥は払い除けるのが難しく、時間をかける毎に俺の体は宙に浮かんでいった。
「くっそおぉ……! 熱いんだよ、バカ鳥!」
俺は炎の怪鳥に悪態を吐くと──この状況を打破するために考えを巡らせた。そして──一つの結論に至る。
その瞬間、俺は迷わずに炎の鳥の中に突っ込んでいった。
「うおぉぉぉぉ!」
燃え盛る炎の中に飛び込んでいくと、そのあまりの熱に思わず顔を顰めるだが、それでも俺は前へと進むことを止めなかった。
そして──ついに炎の怪鳥の体表に触れるところまで到達した。そのまま思いっきり蹴りを放つ。
ドゴッという鈍い音が響くと共に、炎の怪鳥が俺を掴んでいた手を離す。重力に従って地面に落下していく中、俺は体勢を立て直して着地すると──素早く後ろに飛び退いた。
直後、俺が立っていた場所に灼熱のブレスが放たれていた。炎の怪鳥の攻撃だ──もう少し回避が遅れていたら丸焼きになっているところだった。
エリシアの元に戻ろうとするも、炎の怪鳥は俺を逃さないと言わんばかりに襲い掛かってくる。俺は咄嗟に魔法を行使して攻撃するも、威力が減衰してしまい決定打にならない。おそらく、魔法耐性が相当高いのだろう。
「チッ……ならばっ!」
俺は再び駆け出し──今度は真正面から炎の怪鳥に突っ込んだ。そして拳を振り上げると──渾身の力を込めて殴り飛ばす。
「うおぉおぉぉ!!」
俺の一撃を受けた炎の怪鳥は奇声を上げながら吹っ飛んでいくと壁に激突した。そのまま地面に落下していき──動かなくなった。
「ふぅ……何とかなったようだな……」
俺がホッと胸を撫で下ろしていると、エリシアが駆け寄ってきた。
「アルファ! 大丈夫!?」
彼女は心配そうな表情で俺の顔を覗き込んでくる。俺はそんな彼女に向かって笑いかけた。
「あぁ。この通りピンピンしてるよ。心配してくれてありがとな」
「……あ、その、無事なら良かったわ」
エリシアは頬を赤らめて恥ずかしそうな表情を見せた。
そんな彼女は可愛らしくてつい抱きしめたくなってしまうが、今は我慢しておくことにしよう。
「それにしても……割と強かったな、コイツ。こんな魔物まで現れるんだな、このダンジョン」
「これは不死鳥『フェニックス』ね。神話や伝説で語り継がれる希少種よ。私も野良で遭遇するのは初めて」
「おっ、じゃあ結構レアなのか? 高く売れるかなぁ」
「昔、とある大富豪がペットにしているのを見たことがあるわ。最も、そのフェニックスは小脇に抱えられるくらいのサイズしかなかったけど。あと、フェニックスの血液は、飲むと寿命が延びるという迷信があって……」
「なるほど。……因みに、猫モドキは幾らで売れるんだ?」
「『ケットシー』のこと? ケットシーは、毛皮を買い取ってくれるはずよ。ただ、群れを成して襲ってくる厄介な魔物なのに、素材としての価値は低いの。肉も食用にならないくらい不味いって話」
なんだ、そうなのか。沢山狩ったし、そこそこ稼げたと思ったのに。
まあいい。今回は、この希少種フェニックスを狩ったって事で良しとしよう。
「ペットにしてる奴もいるなら、生捕りにしたほいが良かったかな? 今更言うのもなんだけど……」
「それなら心配ないわ。フェニックスは不死の存在──高い再生能力があるから、すぐに蘇生するから」
「──えっ?」
俺は思わず間抜けな声を上げてしまった。




